2年目の中垣内ジャパン最大の変化、西田有志の存在

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全日本男子バレーは、ネーションズリーグ大阪大会の最終戦でフルセットの激闘を制し、リオ五輪銀メダルのイタリアに勝利した。実に11年ぶりの快挙である。

この試合の勝因と、今年度の全日本男子チームの歩みを振り返り、また11年前の勝利との比較をしてみたい。

2年目に突入した中垣内ジャパン。昨年は、国内でのゴールデンタイムに放映されたグランドチャンピオンズカップが全敗だったために、地上波放映のなかったそれまでのワールドリーググループ2準優勝、世界選手権アジア予選首位通過、アジア選手権優勝という好成績の印象がかき消された形となってしまった。

2018年からは、男子がワールドリーグ、女子がワールドグランプリという呼称だった毎年行われる賞金大会が、男女とも「ネーションズリーグ」として発展的に生まれ変わった。昇降格のないコアチーム12カ国(日本も含まれる)と、新設されるチャレンジリーグとの昇降格のあるチャレンジャーチーム4カ国のあわせて16カ国で行われる。16チーム総当たりの予選の後、6チームがファイナルラウンドに進み、決勝を争う。勝敗はワールドランキングに影響する。

第3週の日本ラウンドを迎えるまでに、オーストラリア、イラン、韓国に勝ち、フランス、アメリカ、ブラジルには星を落とした。そして日本ラウンドでランク上は下位のブルガリアにいいところなくストレート負けを喫し、続く前回の世界選手権覇者ポーランドにもセットを奪えないまま敗戦。今年度の全日本男子の日本国内での公式戦は、このネーションズリーグ日本ラウンドだけなのに、またしても「男子バレーは弱い」という印象を国内に残してしまうのか。そんな懸念を抱えつつ臨んだイタリア戦で、第1セットは終盤までリードしつつも最後に連続失点して先取される。

だが、ここから日本の反撃が始まった。日本ラウンドに入ってから不調で、売りであるチームメイトの李博とのコンビが合わなくなっていた藤井直伸から関田誠大にセッターを交代。終盤に入り18歳のスーパールーキー西田有志のサーブが爆発する。エースをとってイタリアがタイムアウトをとるも、タイムアウト明けにもまたエース。3本目もイタリアのサーブレシーブを崩してブレイク。そのまま2セットを25-21でとってイーブンに持ち込んだ。第3セットは再びイタリアに取り返されてあとがなくなったが、第4セットも終盤で西田のサーブで3連続ブレイクし、フルセットでイタリアを下した。

イタリアチームは日本ラウンドにはリオ五輪メンバーの主力であるイヴァン・ザイツェフとオスマニー・ユアントレーナが参加しなかった。だから、ミドルブロッカーの山内晶大が言うように「相手のメンバー的にどうかというのもある」というところはある。

しかし、それを言うなら日本も2015年の「NEXT4」でブレイクして以来、すっかり全日本の顔となったエース石川祐希は膝の故障でネーションズリーグには参加していない。北京五輪出場以来長らく全日本のオポジット(攻撃専門のセッター対角)を務めてきた清水邦広も、V・プレミアリーグのプレーオフで靭帯を損傷し長期のリハビリの最中だ。今の全日本は、今年度主将になった柳田将洋が中核となり、チームを牽引している。昨年のグラチャンでもやはりザイツェフとユアントレーナがいないイタリア相手に、日本は敗れている。このときも石川は故障で出場できなかったし、清水もいなかった。

変わった要素はなにか。それが昨季現役高校生Vリーガーとして日本バレー界を席巻した西田の存在感に尽きる。186cmとバレー界では小柄だが、抜群の跳躍力を持つサウスポー。中垣内祐一監督は、「西田を選んだ理由? 見ればわかるでしょう。アンダーカテゴリから順番にという道もあるが、早く世界を体験させたい」と期待を寄せていた。

日本の武器となりつつある「中央からの攻撃」

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ネーションズリーグでは、3日連戦して週ごとに世界中を駆け巡るハードなスケジュールのため、日本は第3週までは1日交代でほぼスタメンを入れ替えてしのいできた。しかし、第2戦のフランス戦で昨年レギュラーだった大竹壱青が決まらず、第1セットを落としたあと、第2セットを西田でスタートするとあっという間にセットを取った。ここから西田だけはほぼ全試合フル出場となる。

イタリア戦では両チーム最多の22得点をあげ、そのうち3得点がサービスエースだった。前日のポーランド戦でも、イタリア戦でも、終盤西田のサーブが回ってくると、万全に打たせないために、事前にタイムアウトをとられるようになった。それについて西田は「それだけ自分のサーブを警戒させたのは、チームのために仕事ができたということだと思っています」と胸を張った。中垣内監督によると、日本に帰国してすぐの練習中に「自分、サーブをつかめたと思います」と申告してきたらしい。しかし、日本ラウンド初戦のブルガリア戦では特に良いサーブが入るわけでもなかったので「つかめてないじゃないか」と苦笑いしていたが、第2戦のポーランド戦から「開眼した」(中垣内監督)。

そして、もう一つの勝因。それは昨年からこだわり、さらに磨きをかけてきた「真ん中からの攻撃」をしっかりと使ったこと。速攻とバックアタック。11年前の試合のノートを引っ張り出して驚いたのが、奇しくも11年前のイタリア戦も今回と同じ6月10日、フルセットでの勝利だった。当時のスターティングメンバーには、北京五輪主力の越川優、石島雄介、松本慶彦、セッターは朝長孝介。朝長は「試合の間中ずっとミドルの攻撃を中心に組み立てることに集中しました」と述べている。得点は直弘龍治(オポジット)が21、越川が19、石島が18、富松崇彰(ミドル)が13、松本(ミドル)が7だった。

今回のイタリア戦では、西田22、福澤達哉17、李博(ミドル)10、柳田将洋9、山内(ミドル)9。藤井はもともと所属チームの東レでもミドルを多用するスタイルで2016/17シーズンを勝ち抜いて、全日本に抜擢された。今年度は昨年主将を務めた深津英臣に代わって関田がネーションズリーグのセカンドセッターに入っている。関田もミドルの使い方に特長のある司令塔だ。どちらのセッターでもミドル中心の組み立てができる。ポーランドのヘイネン監督に「彼の問題点はポーランドのパスポートを持ってないこと」と言わしめたスーパールーキー西田の爆発と、真ん中からの攻撃という2つが組み合わさって、11年ぶりの勝利をあげることができた。

「今日の勝利は本当に大きかった。日本で勝てて良かったです」と振り返った西田。ネーションズリーグは現在ドイツラウンドに入り、来週の中国ラウンドで予選が終わる。ファイナルラウンドに進めるかどうかも気がかりだが、まずは選手のコンディションを優先しつつチームを固めていってもらいたいところだ。

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中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』