アジア大会と世界選手権を控え34名を登録

V・プレミアリーグが終わった。来シーズンから新リーグ「V.LEAGUE」に移行することを考えれば、文字通り、一つの時代が幕を閉じたと言えよう。

ファイナルは至福の時間だった。2戦方式で行われ、2連勝したパナソニックパンサーズが栄冠に輝いた。層の厚さとチームの一体感が光った。だが、両者の間にそれほど大きな実力差があったとは思えない。紙一重で銀メダルを首から下げた豊田合成トレフェルサも、終始、素晴らしい戦いを披露した。

一つの戦いが終われば、新たな戦いが始まる。

ファイナルの翌日の3月19日、新体制となって2年目となる全日本チームの2018年度登録メンバーが発表された。

選ばれたのは34名。そのうち10名が初選出である。若い選手には、チャンスが広がった。今年はアジア大会(8月、インドネシア)、世界選手権(9月、イタリア・ブルガリア)と大きな大会が続くため、夏からはチームを分けて強化が進められることも明らかになった。

中でも世界選手権は、オリンピック、ワールドカップと並び「3大大会」に位置づけられている。ここに出場するAチームは、昨年のメンバーを中心に構成されることになりそうだ。

だが、忘れてはいけない。

昨年9月の「ワールドグランドチャンピオンズカップ2017(以下、グラチャン)」で惨敗したことを。アメリカ、フランス、イタリア、イラン、ブラジルと各大陸の上位チームに手も足も出なかったことを。

とりわけ課題として浮き彫りになったのがオポジットだ。

ケガで戦列から離れていた清水邦広(パナソニックパンサーズ)の代表復帰も期待された。しかし、2月のファイナル6で右ひざを負傷。チームから発表された診断結果は「右前十字靱帯損傷」、全治12カ月の大ケガだった。登録メンバーには入っているが、年内の復帰は絶望的と考えていい。いずれその力が必要になる日は来る。まずは手術、リハビリを経て、コンディションを100パーセントに戻すことが最優先だ。

清水邦広の負傷で混迷を極めるオポジット争い

では、誰がオポジットに入るのか。

昨年、出耒田敬(堺ブレイザーズ)とともにオポジットとして主力を張った大竹壱青(パナソニック)は、ドイツ・ブンデスリーガでの短期留学で経験を積んだ。この2人に絡んでくるのが西田有志(ジェイテクトSTINGS)だろう。今年1月、V・プレミアリーグに綺羅星の如く現れた。強烈なスパイクとサーブで、苦戦が続くチームを立て直した。高校を卒業したばかりの18歳。187cmとこのポジションでは小柄な部類に入るが、相手のブロックを見てスパイクを打ち分けるなどバレーボールIQは極めて高い。

柳田将洋(バレーボール・バイソンズ・ビュール)と石川祐希(タイワン・エクセレンス・ラティーナ)。海外を主戦場とする2人がチームの中心であることは論をまたない。

一方で、中垣内祐一監督は昨年のグラチャンで5戦全敗を喫したあと、「来季以降はメンタル的なアプローチも加えていきたい」と言っている。たしかに若いチームだった。14名のメンバーのうち、大会が始まった時点での最年長は深津英臣(パナソニック)の27歳で、最年少とは5歳半しか離れていなかった。

それが理由だろうか。層の厚いウイングスパイカーには、31歳の福澤達哉(パナソニック)、28歳の千々木駿介(堺)が代表復帰を果たしている。高松卓矢(豊田合成トレフェルサ)も名を連ねた。30歳。もはやベテランと呼ばれる年齢だが、その存在感は健在だ。ファイナルの緊張感に満ちたムードを作ったのは、紛れもなく福澤や高松らベテランだった。

ミドルブロッカーの傳田亮太(豊田合成)は初選出こそ2016年度だが、全日本ではそれほど多くの出番に恵まれてこなかった。V・プレミアリーグではシーズンを通して活躍しており、全日本でのブレイクが期待される一人だ。

さらに、チームを3位に導いた小野寺太志(JTサンダーズ)も忘れてはいけない。22歳。東海大学の4年生ながら、内定選手として年明けから出場機会が増えている。201cmと高さがあり、スパイクの決定力も高い。昨年の全日本では不慣れなウイングスパイカーで起用されることもあったが、今年は本職での活躍が期待される。

百花繚乱——。バレーボールの全日本にも新たな春がやってきた。

チームは4月上旬から始動する。

9月の世界選手権には24チームが出場し、6チーム4組で争われる1次ラウンドからスタートする。2次ラウンド、3次ラウンドを戦い、トーナメントで争われる決勝ラウンドに進めるのは4チームのみ。

日本の現実的な目標はどのあたりか。2014年の前回大会で同じアジアのイランは、3チーム2組で争われる3次ラウンドまで進みベスト6に入った。高い壁だ。しかし、現時点でここに到達することができなければ、2年後の東京オリンピックでメダルを獲得することなど夢物語だろう。

試練の2年目。本格的なメンバーの絞り込みは、いよいよ始まろうとしている。試されているのは選手か、それとも――。

オリンピックのコートに立てるのは、わずか12名である。

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岩本勝暁

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、バレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ大会から2016年リオデジャネイロ大会まで、夏季オリンピックを4大会連続で現地取材する。