なんぼ負けてもオープン戦、前半連敗はぜんぜんオッケー!

 そうこうしているうちに開幕まではもう2週間とちょい。気づけばオープン戦まっただ中だ。キャンプ時点で下馬評抜群の阪神タイガースだったが、オープン戦ではまさかの大連敗。でも前半なら全然オッケー。11日(日)の読売戦に勝って、ここからは勝つお稽古もしつつ、いろいろ試したり、ふるいにかけたりして、勢いをつけていってほしい。

 いやしかし決まらんね、センターライン。金本知憲監督のなかではあらかた決まっているのかもしれないが、セカンドは安芸スタートだった上本博紀が混ぜっ返して、鳥谷敬との一騎打ち(現実的には「ツープラトン」)にまで持ち込んでいるし、あいかわらずキャッチャー、ショート、センターに君臨する「絶対的なレギュラー」は現れないまま。まあ、しゃあないね。

先発ローテ争いはカオス。生き残るのは誰か

 先発投手陣のローテーション争いも熱い。メッセンジャーは、肩のハリのためノースローが続き、開幕投手は大丈夫なのかと心配されたが、9日(金)に3回、41球を投げ、まずは一安心。秋山拓巳は10日(土)に5回を投げてかなりいい感じ。順調そのもの。

 金本監督が早々に「当確」を出したはずの能見篤史だが、4日(日)に3回を投げてから登板間隔が空いている。そこにどんな意味があるのかはわからないが、本人もベテランになって疲労が抜けにくくなったと言っているので、他に押される形で「中10日ローテ」、あるいは控えにまわるといった可能性はあるかもしれないね。

 今日13日(火)登板予定の藤浪晋太郎は、まだ「怖わごわ」な感じもあるが、復活してもらわないと困るので枠ゲットの予定。11日(日)に5回を投げた岩貞祐太と、7日(水)に5回を投げて好内容の小野泰己はまったく譲らず。で、昨年リリーフで大活躍した岩崎優も二軍教育リーグで先発登板を重ねていて、9日(金)に6回を投げる順調ぶり。さらに才木浩人は6日(火)に4回を投げ、二軍戦でさらに長い回に挑戦させるという報道もある。9日(金)にはリリーフで枠を争いかと思われる松田遼馬、谷川昌希がそれぞれ3回ずつを投げて「先発テスト」を行い、それぞれ上々の内容を見せた。

 だーっと名前と登板日をあげてみたが、今出た名前を「なんとなく」で整理すると、1メッセ・2秋山・3藤浪・4岩貞・5小野・6岩崎・7能見・8才木といて、そこへ、松田と谷川も控えると。そんな混沌とした先発ローテーション争いに、もうひとり、颯爽と登場してきた男がいる。髙橋遥人だ。

髙橋遥に漂う「井川のロマン」

 オープン戦は4日(日)のソフトバンク戦で2回をゼロ、11日(日)の読売戦で先発し、3回を1失点。とくに初甲子園となった読売戦は、「球は強いがノーコン」という前評判がウソのように、捕手坂本が構えたミットにズバズバ投げ込んだ。歩幅大きく沈み込み、下半身の粘りをうまく腕の振りにつなげて、スピンのきいた直球を投げ込む。高めはもちろんのこと、低めのストレートがよく伸びる。後ろが小さく、キレがよく、出どころが見にくい左腕というフォームは、静岡の先輩・岩崎に通じるものがある。

 読売戦で投げる髙橋遥をチラっと見て、かつてのエース井川慶と「空目」した。背番号29の左腕ではあるが、よく見ればそんなには似ていない。上背も井川(186センチ)ほど高くない(180センチ)し、太ももやら全体的な線はまだまったく細い。井川はそれほど沈まない投げ方だったし、細かい共通点はあまりない。

 それでも「井川っぽい」と思ったのは、リリースからフィニッシュにいたるまでのリズム感、躍動感。口では言ってないのだが「うりゃあああ」という勢いが、蹴り込む左脚に乗ってくる。その感じが、井川っぽい。そこがものすごく好き。

 あの頃、井川は鬱憤を晴らしてくれた。悔しさを溜め込みすぎて、卑屈な笑いしかできなくなっていた心を解放してくれた。ありとあらゆる負けパターンをくり返し、野球の楽しみを勝負以外に求めようとしていた自分を純粋に熱狂させてくれた。井川が蹴り込む左脚は、街をぶっ壊すゴジラのしっぽ。火を吐き、咆哮をあげ、常識を破壊する。暗黒を切り裂く井川慶は、ロマンだった。

 髙橋遥のしっぽ、もとい、左脚にもロマンの香りが漂う。しかし、まだ肩の筋力が足りないという。科学的に故障のリスクを感知して、対策できるというのなら素晴らしいこと。やがてそれを克服し、井川のように200イニングが当たり前のタフネス奪三振王になれ。


鳴尾浜トラオ