前哨戦のネーションズリーグ(VNL)は1次リーグを9勝3敗の3位で通過。決勝ラウンドの準々決勝はトルコを3―2で下すも、準決勝はブラジルに2―3、3位決定戦でもポーランドに1―3で敗れて2大会連続のメダルにはあと一歩届かなかった。ただ、フェルハト・アクバシュ新監督(39)の初陣で4強入りは大きな収穫。「悔しいけど、試合ごとに改善できた。全体的には満足している」と一定の手応えを感じた。

 1勝2敗で1次リーグ敗退に終わった2024年パリ五輪後は、前主将の古賀紗理那さんが引退した。新主将に就任した石川は「紗理那さんがエースとしてチームを引っ張ってくださって、そこで学ぶものは間違いなくたくさんあった。紗理那さんみたいにというよりは、自分らしくチームを引っ張っていければいい」。決して自分を着飾ることなく、チームメートと積極的にコミュニケーションをとりながら連携を図っている。

 VNLでは日本の得点時にベンチメンバーが多様なパフォーマンスを披露する姿が話題となった。石川自身もベンチ時は応援団長・岩沢実育(25=埼玉上尾)の指導を仰ぎながら喜びを表現していた。石川は「やっぱり楽しさは1つ大事なこと。自分が楽しくない時って本当にうまくいかないことだったりとか、成長しないなと思っているのでバレーボールを楽しみながら、やっぱり勝ちにこだわってやっていきたい」と狙いを語った。

 石川だけでなく、他選手もより良いチームづくりに努めている。VNLでベストセッター部門1位の関菜々巳(アルシーツィオ)は「真佑はしっかりチームをまとめているけど、真佑が思っていることだったりを私が感じ取って、やりたいことに対して『こうしたらいいんじゃない?』みたいなアドバイスをしたり、話を聞くことも自分の役割だと思っている」。年齢は関が石川の1個上。石川からは「ミーティングでどうしたらいいと思いますか?」とか「こうしようと思うんですけど、どうですか?」などと質問を受けることもあるという。

 新主将はチームメートのサポートを借りながら日々奮闘しているが、プレー面ではまだまだ改善の余地がある。VNLの決勝ラウンドでは強豪国の勝負強さを肌で実感。「勝負どころで勝ち切らないと上に行けない。自分たちが何もできなかったというよりは、あと少しのところの精度や自分たちのミスが増えてしまったところが多かった」と振り返った一方で、勝機はあるとの見方だ。「チーム全員で戦うのが日本の強みでもある。今のチームであれば本当に打てる選手がたくさんいるので、ちょっとしたことでも本当に変わってくると思う。プレーの質もだし、トータル的にもう一段上げていけたら」と展望を口にした。

 間近に迫る大一番に向けては、さまざまなフォーメーションを試行錯誤中。実戦練習ではチーム最年少の19歳・秋本美空(姫路)がオポジットとして起用される場面もあった。ドイツ1部の強豪・ドレスナーSCへのレンタル移籍が決まっている次世代エース候補は「VNLではメダルを取れなかったのでリベンジだと思っている。メダルを取りにいきたい」と闘志を燃やす。

 日本が世界選手権で表彰台に立ったのは10年大会が最後。秋本の母・愛さんらが代表メンバーとして活躍し、銅メダルに輝いた。18日に誕生日を迎えたばかりの秋本はサーブの強化に励んでおり「トスを高くして(助走)の最後の2歩の踏み込みを力強くすることを意識している」と貪欲にレベルアップを目指している。

 勝つために必要なことはなにか――。各選手が自ら考え、行動に移していけるのが今の日本。石川は「世界バレーで少しでもメダル獲得に近づくためにはもう一段階上げるのがVNLの課題。一人ひとりの意識も徐々に変わってきている」と手応えは十分だ。

 世界選手権は32チームが8組に分かれて、各組上位2チームが決勝ラウンドに進む。15年ぶりのメダルが懸かる日本の世界ランキングは5位(17日現在)。23日に同44位のカメルーンとの初戦に臨み、25日は同16位のウクライナ、27日には同9位で世界選手権の2連覇中のセルビアと相まみえる。石川は「相手は自分たちよりも(身長の)高いチームが多い。そこに対しての点数の取り方もそうだが、勝負どころで自分たちがどう攻めていけば相手が対応しづらくなってくるか。自分たちの攻撃の質、精度を高めていかないと、対応されてしまうこともVNLで経験している。そこのところの打開策を見つけながらやっていければ」と意気込みを示した。

 28年ロサンゼルス五輪を見据える上でも今大会は重要な一戦となる。石川は「この先に来年のアジア選手権などの大会につながっていければいいなと思っている。ここでしっかり今のチームでどれだけ戦えるか、通用するか。初めての選手も多いので、経験を積んでいく意味ではすごく大きい」。五輪に次ぐ権威ある大会で、さらなる飛躍のヒントをつかめるか。


中西崇太

著者プロフィール 中西崇太

1996年8月19日生まれ。愛知県出身。2019年に東京スポーツ新聞社へ入社し、同年7月より編集局運動二部に配属。五輪・パラリンピック担当として、夏季、冬季問わず各種目を幅広く担当。2021年東京五輪、2024年パリ五輪など、数々の国内、国際大会を取材。