J初の外資受け入れを決断したマリノス

日本では、Jリーグ規約により外国資本のクラブ経営権取得は禁じられている。以下、規約の一部を抜粋する。

【Jリーグ規約・抜粋】
第3章 Jクラブ
第12条(J1クラブの資格要件)
J1会員たるクラブ(以下「J1クラブ」という)は、以下の要件を具備するものでなければならない。(以下略)
 (1)(略)
 (2)日本法に基づき設立された、総株主の議決権の過半数を日本国籍を有する者か内国法人が保有する株式会社であることまたは社員たる地位の過半数を日本国籍を有する者か内国法人が保有する公益社団法人であること。


ただ、これは外国法人が設立した日本法人によるJクラブの保有を禁じるものではない。事実、Jリーグの村井満チェアマンは、過去に外国資本によるクラブ経営について「基本的にJリーグは外資規制をしようと思っていない。日本に法人をつくれば問題ない」と明言している。

この規約が、にわかに注目を浴びる“事件”が4年前に起こった。2014年5月、イングランドプレミアリーグ、マンチェスター・シティの持ち株会社である英シティ・フットボール・グループ(以下CFG)が横浜F・マリノス(以下横浜M)の株式を19.95%取得。いよいよ外資のJリーグ進出かと騒がれた。

横浜Mは、かつて広告料として親会社である日産自動車から年間10億円近くともいわれる“損失補填”を受けていた。しかし、2008年のリーマンショックで日産本体が赤字に転落したことでこれが停止され、“補填”を失った横浜Mは債務超過に陥った。クラブライセンス制度(2013年に導入。健全経営をクラブに求めるため3期連続の赤字や債務超過などがあった場合にJリーグのライセンスを剥奪する制度)により、2014年度の決算で債務超過を解消しなければJリーグからの撤退を余儀なくされるという危機的状況に直面したのだ。

そこで、国内の名門クラブが打ったのは、Jリーグ史上初となる外資受け入れという手段での経営改善策だった。CFGが横浜Mへの第三者割当増資を引き受ける形で、資本業務提携に至った。

さらに、日産はCFGの公式スポンサーになることを発表。マンチェスター・シティのほか、傘下に米メジャーリーグサッカーのニューヨーク・シティ、豪Aリーグのメルボルン・シティなど世界にネットワークを持つCFGを介して横浜Mに資金を提供する仕組みをつくり、世界的な広告効果を狙える環境を構築した。晴れて横浜Mは、日産からの10億円の損失補填も受け、2012年度に約16億7700万円まで膨らんだ債務超過を解消。Jリーグが発表した最新の2017年度の決算でも2500万円の純利益を計上と、依然として収益性は低いものの黒字経営を維持している。

外資の経営参入が盛んなプレミア

クラブ経営への外資の参入といえば、近年特に目立つのがイングランドプレミアリーグだ。2003年にロシアの石油王、ロマン・アブラモビッチ氏がチェルシーを1億4000万ポンド(約260億円=当時のレートで計算、以下同)で買収。ロンドンにありながら地味な印象だったチームを世界のトップに押し上げた。2005年には米実業家、マルコム・グレイザー氏がマンチェスター・ユナイテッドを7億9000万ポンド(約1460億円)で買収した。

そもそも、CFGの中核を担うマンチェスター・シティも、2008年にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビを統治する王族、シェイク・マンスール・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン氏の投資会社アブダビ・ユナイテッド・グループが2億1000万ポンド(約402億円)で買収し、世界を驚かせるような大型補強でライバルのマンチェスター・ユナイテッドに比肩するクラブに変貌を遂げたクラブだ。

会計事務所デロイト・トーマツが発表した2016-17年シーズンの世界のクラブ営業収益ランキングでは、プレミアリーグが上位20クラブ中10クラブを占めるほど大きな勢力となっている。トップのマンチェスター・ユナイテッドは6億7600万ユーロ(約917億円)という莫大な営業収益を誇る。2008-09年シーズンの営業収益が3億2700万ユーロ(約530億円)と半分程度だったことを考えると、さまざまな要因があるものの、外資の経営参入がリーグの活性化の一助となったのは間違いない。

Jには買収するだけの商品価値がない

その中で、CFGの特異な点は世界各国のサッカークラブを傘下に収めているところだ。マンチェスター・ユナイテッドを買収したグレイザー家がNFL(米プロフットボール)のタンパベイ・バッカニアーズを保有し、マイクロソフト社共同創業者のポール・アレン氏がメジャーリーグサッカーのシアトル・サウンダーズ、NFLのシアトル・シーホークス、NBA(米プロバスケットボール)のポートランド・トレイルブレイザーズを運営するなど、巨万の資産を持つ企業や個人が異なる競技のチームを同時に持つ例は多くある。しかし、CFGの場合、横浜Mが監督、コーチや外国人選手をそのネットワークで獲得したように、経営リソースだけでなく、チーム強化においても世界各国のリーグに傘下クラブを持つことで資源を有効活用している。

そんなCFGは、2015年に日本法人を設立。横浜M買収に動くかとも報じられたが、現時点で大きな動きはなく、いまだ少数株主の立ち位置を保っている。その理由として関係者が挙げるのが「Jリーグに、まだそれだけの商品価値がないから」というものだ。

日本のJ1・J2・J3全クラブの営業収益の合計は1106億円。トップの浦和レッズでも79億7100万円と、世界との差は大きいどころか拡大する傾向にある。一方で、スポーツ専門ストリーミングサービス「DAZN(ダゾーン)」がJリーグと10年2100億円の放映権契約を結び、世界にクラブの価値を発信するプラットフォームは整いつつある。外資の参入にはもちろん賛否両論あるが、少なくとも外資の“標的”になるだけの魅力を獲得し、発信していくことが、Jリーグのさらなる発展には不可欠といえそうだ。

VictorySportsNews編集部

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