沖縄の野球好きの間で、昨年春あたりから噂になっていることがある。「沖縄をフランチャンズにした新しいプロ野球のチームができる」。NPBに13チーム目のプロ野球チームが誕生すると思いきや、そういう話ではないらしい。
「沖縄を本拠地とした新チームを作ろうと考えているのは、台湾のプロ野球リーグ(中華職業棒球大聯盟・CPBL)です。CPBLには現在4チームが所属しているのですが、ここに新たに沖縄とオーストラリアの2チームを設立して6チームにするという構想があり、すでに関係者による現地視察なども行われ、台湾メディアでニュースになっています」(台湾事情に詳しいジャーナリスト)

台湾のプロ野球リーグは、1989年にスタートしたが、度重なる八百長問題などで近年は人気が低迷。その人気復活の起爆剤として考えられたのが、海外2チームの設立だった。
「CPBL全体のレベルは、日本の2軍くらい。台湾では野球の人気が高く、子どもたちも多くプレーをしていますので、たまに突出した選手も出てきます。もし沖縄にCPBLの球団ができるとなると、NPBで活躍できなかった選手の受け皿にもなる。特に沖縄出身のプロ野球選手などにとっては、いいニュースだと思います」(同前)

沖縄新球団の話は瞬く間に日本のプロ野球関係者にも伝わったが、「実現の可能性は限りなくゼロに近い」として、大きな話題にはなっていない。
「CPBLから関係者を通して、NPBにも相談があったとか。ただNPBとしては、現段階ではあくまで静観。沖縄は野球やサッカーのキャンプ地として人気で、シーズンオフには日本や韓国のプロチームが訪れます。そのためそれなりにスポーツ関連の施設は充実していて、むしろ足りないくらい。NPBのチームとしては新球団ができて、キャンプ地を失うことになったらたまったものではありませんから、大歓迎とはいかないでしょうね。沖縄では野球の人気が高く、キャンプ中は多くの観光客が訪れ、キャンプ地めぐりを楽しみにしている沖縄の方々もたくさんいます。でもオープン戦や公式戦を行っても、チケットの売れ行きはあまりよくない。毎年キャンプ期間に無料で練習試合などを見ているからじゃないかと言われています」(スポーツ紙記者)

キャンプ地、興行面など難問山積の新球団だが、さらに深刻な問題もある。
「スポーツとナショナリズムは切っても切れない。NPBでは外国資本の企業がチームを持つことも禁止しています。領土問題や米軍基地問題を抱える沖縄に外国籍のチームができるとなると、政治的にセンシティブなところに触れる可能性が大きい。NPBとしては、このまま話がなくなるのがいちばんいいと思っているんじゃないでしょうか」(沖縄のテレビ局関係者)

北海道日本ハムファイターズや東北楽天ゴールデンイーグルスなどの例を見ると、プロチームの存在は地域を活性化し、人々に元気を与える。不景気にあえぐ沖縄にもそんなチームが生まれればいいのだが、今回の計画はこのまま立ち消えになってしまうのだろうか?


VictorySportsNews編集部