名選手=名監督ではないというのは、よくいわれることだ。選手としての才能と監督としての才能が別物だというのは当たり前だが、日本のスポーツ界では、名選手が引退後に監督となり、さらにはその競技を束ねる組織のトップに立つというのも珍しくない。

「今年はラグビーのワールドカップがありますし、来年はオリンピック。いま日本のスポーツ界は大きな変化を求められているし、そうしなければ民意がついてこない時代にきていると思います。有名選手がトップに立つことで、注目度が高まったり、スポンサーを集めやすくなったりというメリットは当然あります。しかしガバナンスやコンプライアンスなどの常識が変化している時代に、その“業界”だけで生きてきた人材が“業界内の常識”や“しがらみ”を慮って物事を判断していけば、組織はどんどん世間と社会通念から離れていくことになります。
 競技は選手のがんばりや活躍によって、ブーム的に盛り上がることがありますが、組織や組織運営に不信感があると、結局文化として根付かない。華やかな競技や選手を支える、リーダーと組織と組織運営に対しての深い信頼感を形成しないといけない時代なのです。社会はそれを本気で成し遂げようとしているリーダーなのか、組織なのかを、じっと見ている。多くの人はそれが本物であるかそうでないかを肌で感じているんです。リーダーとしての資質を兼ね備えた名選手もたくさんいるとは思いますが、どうしても業界の慣習、しがらみにしばられてしまう。ほとんどは保身のために大義や民意を蔑ろにしてしまっていることに気づかないことも多いと思います。思い切った改革には相当な決断が必要であり、軋轢が待ち受けているんです」

池田氏が考える「いまの時代に必要なリーダー」とは?

「これまでは管理型、調整型のリーダーがトップに立つことが多かったと思います。組織を仕切っている人がリーダーを任命するわけですから、コントロールを可能にし、しがらみが前提となる。組織が順調なときはそういう人材がいいときもあるかもしれない。でもいま求められるのは、従来の常識を覆し、組織を思い切って改革できるパイオニア型、イノベーション型のリーダー。アメリカのシリコンバレーでも停滞を打破するときにそういったリーダー像の移行がドラスティックに起こったと言われています。企業や業界が躍進するときはいつもそういったリーダーが生まれるのが必然で、それが起きないと実はどんどん停滞する。『少しづつよくなることを是』と無理やり許容させられて、実は民意や世界から取り残される。先日、世界最強のスポーツ大学といわれるスタンフォード大学の先生と話していたらそんなことを教えていただきました。
 さらには別の先生は、UNIVASが考えている日本の大学スポーツ改革を明治維新にたとえていました。『明治の志士達は 日本を変えるんだと新しい制度を作った。 維新の後も10年くらいは世は乱れていた。皆んなバラバラ、方向性なし。西郷隆盛は鹿児島に帰るし、江藤新八は反乱を起こして、大久保利道は暗殺されて……。UNIVASも本来は最初はそんなものだと思います。ビジネスもいきなりうまく行くとは思いません。 明治維新後と同じでエゴや嫉妬が渦巻いている。でも30年後、50年後のために誰か本物のリーダーが、しがらみとは関係なく、社会が本気だと感じる組織と組織運営で大学スポーツを変えていかなければならないんじゃないでしょうか』。私もまったく同感です。大学スポーツに限らず、大相撲もプロ野球も高校野球も、すべてのスポーツが過渡期に来ている。少しずつ変えようとしても無理がある。新しいタイプのリーダーがどんどん出てきて、一気に変えていかないと日本のスポーツ界は良くなっていかないのではないでしょうか。『少しづつよくなっていくことをそれでいいんだと、『日本はそういう社会だから』、と押し付け、30年後50年後に評価される思い切った改革ができない社会では、世界と戦える未来はつくれない、後世に対して実はものすごく無責任なのではないでしょうか」

摩擦を恐れることなく、突き進んでいく。2019年、スポーツ界に求められるのは、明治の志士のようなパワフルで若く、しがらみと無縁な力強いリーダーなのだ。


[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>

取材協力:文化放送

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