そもそもボールパークとは何なのか? この概念を初めて日本に持ち込み、具体化した池田氏は、従来の球場とボールパークの違いをこう説明する。

「球場というのは、壁もしくはドーム、フェンスなどの内側で行われている“野球を楽しむための施設”。『野球をみせてやる』というそれだけで興行という商売が成り立った、上から目線の時代の施設の考え方。一方、ボールパークは、球場をコンクリの壁の外にまで開き、楽しむ概念を広げたもので、『野球をつまみ』にして非日常の雰囲気を随所で楽しんでもらうための施設。メジャーリーグではずっと前から取り入れられていた考え方です。メジャーの試合を見に行くと、球場の外で子供と遊ぶ人や、野球もみえない一角でビールを飲みながらテレビで他球場の試合を見ているようなファンでさえたくさんいます。一生懸命野球を応援しなくてもいいから、“イニング間はトイレタイム”ではなく、“イニング間もエンターテイメント”の時間としてパラダイムシフトしますし、ライトなファンや野球が好きではない人でも気軽に訪れることができる空間に変化する。ボールパークとは、野球を中心とした非日常の雰囲気を楽しむための空間に、大きく旧来とはパラダイムシフト、進化することができた根幹の言葉なのです」

かつて池田氏が社長をつとめ、ボールパーク化を進めた横浜DeNAベイスターズは、2018年シーズンに初めて観客動員が200万人を突破。これはDeNAが買収する以前の1.8倍という驚異的な伸び率だ。

「ベイスターズの場合、かつては最下位が定位置。試合の勝ち負けだけを楽しみにしていたら、ファンは離れる一方です。私が球団社長になった2012年当時はハマスタに閑古鳥が鳴いていました。そこで考えたのは、買っても負けても、スタジアムに行けば100%楽しいという雰囲気作りだったんです。従来のファン以外の女性や子ども、高齢者などを巻き込んでいくことを考えたら、球場をボールパークに変えていくというのは必然の流れだと思います。ただ少し心配なのは、このまま拡大路線でいいのかなということ。現在のメジャーの流れを見ていると、日本もそろそろ飽和状態なんじゃないかと感じています」

日本のプロ野球が過去最高の観客動員を更新し続けているこの2,3年、メジャーリーグは徐々に観客動員が減少している。池田氏は、「アメリカはスポーツ先進国であることは嫌が応にも認めなくてはならない。アメリカ、メジャーで起きたことは、数年後に日本のプロ野球でも起こる」と語り、今後の球場のあり方にひとつの提言を投げかける。

「ネットやテクノロジーでのスポーツ中継などが充実していけば、球場に足を運ばずとも雰囲気を楽しむことがどんどん進むようになります。そうなると当然、ファンの数は増えても観客動員数は下がる。同時にスポーツを含めエンターテイメントはより一層多様化が進む。スポーツ中継やプロスポーツのエンターテイメントが充実し、進化し続けているアメリカで起きているのは、この現象。だからメジャーでは、スタジアムをむしろ縮小するダウンサイジングが進んでいると考えるべきです。球場を大きくして席数を増やすのではなく、席数を減らしてでもシートを大きくして、快適な環境で野球を楽しめるようにしている。量から質への変化です。もちろんそのぶん価格は上がりますが、大前提としてどうしても球場で観戦したいという人がいなくなることはないので、ビジネスとしては成り立ちます。そして、マーケットを、例えばアジア全域にまで広げ、ネットなどでの視聴環境を拡大し、ファンや潜在的な来場需要を拡大して、実際にスタジアムの席を確保できることの価値を高めていくのです。日本は2020年を前にスポーツバブルのような状態になっています。各地で野球だけでなく、サッカーやバスケットボールなどの新しい施設を作るのがブームのようになっている。目先の2、3年はそれでもいいかもしれません。でも10年後のことを考えたら、もっと“質”と“席を確保できる価値”を重視したほうがいいように思います」

ただただ拡大するだけのボールパーク計画、スタジアム・アリーナ計画は、時代に逆行している。勢いのあるいまだからこそ、スポーツ界には“ポスト2020”を見据えたプランニングが必要な気がする。



[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>

取材協力:文化放送

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