今年特に盛り上がっていると言われているのが、1・2軍合同で沖縄・北谷町で行われている中日ドラゴンズのキャンプ。平日でも2,500人、休日になると5,500人の観客が集まり、選手たちの練習を見守っているという。
「ドラゴンズは新人の根尾昂選手や昨年復活を遂げた松坂大輔投手、与田剛新監督など、見どころの多い球団。グッズも1日で1,000万円以上売れたそうです。特に根尾選手の効果は大きいでしょうね。スーパールーキーが入ると、そのくらい一気に伸びることがあるんですよ」
池田氏が注目しているのは、沖縄におけるキャンプの経済効果。那覇市のりゅうぎん総合研究所によると、昨年のプロ野球キャンプの経済効果は122億8800万円。期間中ののべ約37万7000人で、そのうち県外からの観客が約8万4,000人。これらの数字は年々伸び続けていて、今年も過去最高だった昨年をさらに上回るといわれている。
「プロ野球ファンの間で、キャンプ地をめぐる沖縄観光が定着してきているんです。キャンプ期間は、ほとんど無料で練習や紅白戦を観ることができますし、ピッチャーが投球練習するブルペンを近くで観ることもできる。とにかく選手との距離が近いんです。選手たちは歩いて移動しながら練習をしていますから、スター選手にサインをもらったり、写真を撮れたりするチャンスもたくさんあります。おまけにゴルフをすれば、練習休みの選手がいることが多いし、沖縄で有名なステーキ店に行けば、そこでも選手に会える可能性が高い。いわば、この時期、プロ野球ファンにとっては、沖縄全体がディズニーランドみたいなもの。ミッキーマウスに会える可能性が高いんです。いま、マーケティングのキーワードに“体験”、“体験型”というものがありますが、2月の沖縄は、最高の体験型野球リゾートになっているんです」
そもそもなぜ多くの球団が沖縄でキャンプを行うようになったのだろうか? もちろん気候が温暖で、怪我を気にすることなく練習に打ち込めるということが大きな理由だが、それだけではない。
「プロは1月中に動ける体を作ってきていますから、キャンプのメインは練習よりも実戦。対戦相手の多い場所に行けば、それだけ実戦を積むことができるわけです。沖縄にはプロチームが練習できるだけの施設が多く、宿泊施設も充実している。県や自治体が懸命に誘致を行ったからこそ、2月の閑散期でも多くの観光客を呼び込むことに成功できたのでしょう」
プロの練習は、キャッチボールや素振りだけでも迫力満点。スターから無名選手まで、必死で練習に打ち込む様子を観るのは、それだけでワクワクするような体験だ。1度観たら、また来年もと思うファンも多いだろう。一方、今大問題になっているように、松坂投手への過剰接触などのファンと選手・球団とのトラブル、問題も顕在化しているのも事実だ。キャンプをめぐるさまざまな問題については、次回以降でも取り上げていきたい。
[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>
取材協力:文化放送
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キャンプ真っ盛り!2月の沖縄はプロ野球の“体験型野球リゾート”だ
2月1日にスタートしたプロ野球のキャンプ。今年は沖縄で6球団、宮崎で5球団がキャンプを実施。開幕を待てないファンが押し寄せ、大いに賑わっている。特に沖縄には、日本以外に韓国の球団やJリーグのチームも集まり、さながらキャンプの聖地と化している。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、スポーツビジネス改革実践家の池田純氏は、シーズンオフに盛り上がる沖縄の2月を「野球好きにとっては、ディズニーランドみたいなもの」だと語る。
(C)共同通信