19日付サンケイスポーツが大きく報じたこのニュースから見えるのが、スポーツビジネスにIT企業の進出という一つの大きな“うねり”が起こっているという事実だ。「XFLAG」は、他にもサッカーJ1・FC東京とバスケットボールB1・千葉ジェッツふなばしを支援するなど、スポーツとのかかわりを深めている。FC東京とは今季から「マーケティングパートナーシップ」契約を結び、ユニホームの胸スポンサーとなるとともに、ファン拡大などを目的としたマーケティング活動全般のサポートを行うことも決まっている。

スマホ向けフリーマーケットアプリを運営するメルカリは、J1鹿島アントラーズと契約。左右の鎖骨部分に「mercari」のロゴを入れている。スマートフォン向けゲームなどを開発するサイゲームスはJ1サガン鳥栖のスポンサーを務めてきた(今年1月末で契約終了)。昨年10月にはインターネット広告事業やメディア事業を展開するサイバーエージェントがJ2町田ゼルビアを買収するという大きな動きもあった。野球界でも、衣料通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの前澤友作社長がプロ野球進出の意向をツイッターで表明し、大きな注目を集めた。

IT企業にとって、スポーツ業界の何がそんなに魅力なのか。ある関係者は「急成長を遂げ、多額の利益を計上する好調なIT企業にとって、税金として収めるより広告宣伝費として支出する方が効率的。しかも、スポーツへの協賛なら知名度を一気に押し上げ、信用も得られる。スポーツチームの協賛や買収は“魔法の杖”のようなものと言う人もいます」と説明する。IT企業の多くは工場や在庫を抱える必要がなく、総じて利益率が高い特長がある。つまり、スポーツ関連事業に投資する“余力”が生まれやすい側面もある。

今や日本を代表するIT企業として高い認知度を誇るディー・エヌ・エー(DeNA)の成功は、その好例といえる。

2011年12月にTBSホールディングスから球団の経営権を取得し、横浜DeNAベイスターズが誕生。池田純初代球団社長のもと、これまでになかったような盛大な開幕セレモニーの実施や球団オリジナルビールの開発などに取り組み、熱心な野球ファン以外も楽しめる非日常空間の創出でライト層の獲得に成功した。約110万人だった年間観客動員数は200万人を超えるまでに増え、24億円ほどあった赤字も5年間で黒字に転換。スポーツ事業は、今や親会社の経営を支える一つの柱といえるまでに成長した。

これらの成功により、企業の知名度は全国区となり、今や大学生の就職先として上位人気にランキングされるほど。まさに球団経営によって大きな社会的信用を得た形だ。古くはロッテが製菓会社、日本ハムが食肉会社として日本で認知されるようになったきっかけとして球団経営が挙げられることも多い。

一方で、IT企業にとって、スポーツと本業の親和性が高いことも見逃せない。ヤクルトをサポートすることになった「XFLAG」の関係者は、今回のスポンサー活動について「企画しているのはヤクルトのブランド価値向上、観客増です。神宮球場がさらに盛り上がればと思っています」と狙いを説明する。

FC東京では昨年7月27日に行われた長崎戦で冠試合「XFLAG Day」を開催。世界累計利用者4900万人超を誇るスマホゲーム「モンスターストライク」のユーザー1万人を試合に無料招待し、スタジアム横の広場で「夏祭り」をテーマにしたイベントを開催するなどして、フライデーナイトJリーグ(金曜夜開催の試合)で過去最高の2万3063人の動員を記録した。

千葉ジェッツではコートに映像を映し出すプロジェクションマッピング技術による試合演出や、「XFLAG」の公式You Tubeチャンネルでのライブ配信などを実施。昨季の年間動員でBリーグトップの15万5895人(30試合)を記録したチームの集客を強力にサポートしている。

このようにゲーム、コンテンツを企画運営するIT企業とスポーツの相性が良いのは確か。一方で、一つのコンテンツ・ゲームのヒットで業績が大きく左右される業界でもあるだけに、DeNAの成功などを受け、その技術力、マーケティング力を生かせる次なる事業として、長い歴史を持つエンターテインメントの一大コンテンツとしてスポーツが経営者の目に魅力的に映るのは自然な流れでもある。
今回「XFLAG」と契約を結ぶことになったヤクルトだが、実数発表になった2005年以降で最多の192万7822人を昨季記録するなど観客動員は順調に推移している。ただ、東京のど真ん中という最高の立地を考えれば、まだまだファン拡大の余地を残しているのも事実だ。同じ東京・渋谷区に本拠を置く「XFLAG」とヤクルトの“タッグ”が、どのような好影響をもたらすのか。その動向が注目される。


VictorySportsNews編集部