2017年に打率.323でセ・リーグ首位打者に輝いた宮崎。巧みな右打ちに象徴される打撃技術の高さは折り紙付きだ。かつて同僚だった後藤武敏氏(現楽天打撃コーチ)は「小さな落合博満」の意味を込めて、宮崎を「コチアイ」と命名したほど。“神主打法”と飛ばれた独特のフォームから歴代9位(4000打数以降)の通算打率.311(2371安打)を記録した落合氏と、同じく特徴のある打撃フォームから安打を量産する宮崎は、確かに雰囲気的にも通じるものがある。

 その落合氏は、5月30日に更新した自身のYouTubeチャンネル「落合博満のオレ流チャンネル」で宮崎に言及している。宮崎の良さについて「打席で真っすぐ立っている」「バットを多少ヒッチ(上下させる動作)させながらバットが上から出てきていて、ボールを見る時に猫背になっていない。だから腰がクルっと回る」と解説。「ベース盤に肩が乗っていないのがいい。彼には彼なりの理想のフォームがあると思うけど、極端に悪くなる要素は今のところ見当たらない」とし、2度目の首位打者や30本塁打以上をマークする可能性も口にするなど、その技術の高さに太鼓判を押す。

 とはいえ、打率4割の達成は簡単なことではない。これまでも数多の名打者が挑戦し、届かなかった偉業だ。これまでのNPBのシーズン最高打率は1986年のランディ・バース(阪神)が記録した.389。続くのが2000年のイチロー(オリックス)で.387。右打者では2008年の内川聖一(横浜)が.378の最高打率をマークしている。

 過去最も4割打者に迫った選手といえるのは1989年のウォーレン・クロマティ(巨人)だ。開幕から4割を維持し、6月25日に.396となったが、8月上旬に再び4割に乗せて8月20日の出場96試合目まで4割を維持した。既にこの時点で規定打席(同年は403)にも到達しており、ここで休んでいれば4割打者として歴史に名を刻んでいたはずだった。しかし、チームの優勝に向けて出場を続け、最終的に.378でシーズンをフィニッシュ。首位打者、MVPに輝いた一方で、夢の4割打者誕生は幻となった。

 近年で惜しかったのは2017年の近藤健介(当時日本ハム)だろう。開幕から出場50試合目の6月6日まで打率.407をマークしていたが、ここで右太ももを痛めて離脱。9月28日まで復帰できず、最終的に.413(167打数69安打)の高打率をマークしながら規定打席に満たなかった。ただ、200打席以上に立って、打率4割以上で終えたただ一人の選手であり、出塁率は.567と1974年の王貞治が残したプロ野球記録の.532を上回る数字を残すなど、堂々たる成績といえる。

 米大リーグでは、近代野球とされる1900年以降で8人(13度)の4割打者が誕生している。ただ、最も直近でも1941年のテッド・ウィリアムズ(レッドソックス、.406)で、その他はほぼ1920年代以前と、投手をはじめ野球全体のレベルが上がる中で長らく達成者は出ていない。また、NPBの2軍でも1961年の上条皇裕(大毎、.424)、1991年の鈴木健(西武、.401)のイースタン・リーグでの2例しかない。

 宮崎はチームが50試合を終えた時点で1試合平均1.30本ペースで安打を放っている。残り93試合全てに出場すると、シーズン181安打の計算となり、452打数以下なら打率を4割に乗せることができる。452打数を下回るには1試合の平均打数を3.20以下に抑える必要があり、安打だけでなく四球をどれだけコンスタントに選べるかも4割達成のカギを握る要素といえそうだ。2021年のオフに6年総額12億円という大型契約を結び、“生涯横浜”を誓った宮崎。プロ11年目の今季は3、4月に自身初となる月間MVPに輝くなど、34歳となった今も進化を止めない打撃職人に、偉業達成の期待が高まる。


VictorySportsNews編集部