球団初の交流戦優勝。快挙を成し遂げた最大の要因は、5月は防御率4.78と大きく数字を落として苦しんだ先発投手陣の奮闘ぶりだ。全11勝中9試合は先発投手がQS(クオリティースタート。先発で6回以上、自責点3以下)を達成しており、三浦大輔監督は「誰がというよりも、先発陣全体が多く試合をつくってくれて、いい投球ができていた。分かりやすかったですよね、先発が試合をつくることができれば勝ちにつながる試合が多かった」と評価した。

 特筆すべきは米大リーグ、ナ・リーグで2020年にサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)に輝いた超大物新外国人、トレバー・バウアー投手だ。5月3日の1軍初登板初勝利以降は、2試合連続大量失点でノックアウトされるなど苦しい投球が続いたが、日本の野球に順応してきた中で迎えた交流戦で大活躍。6月3日の西武戦(横浜)で8回3安打2失点、10奪三振の快投で丸1カ月ぶりの白星を挙げると、9日のオリックス戦(京セラ)は7回5安打2失点で9奪三振、そして中4日で先発した14日の日本ハム戦(横浜)では9回3安打1失点、12奪三振で来日初完投勝利を挙げるなど初の交流戦3戦3勝をマークした。防御率1.50はチームトップ、31奪三振は12球団トップで、3登板全てでHQS(ハイ・クオリティースタート。先発で7回以上、自責点2以下)を記録する圧巻の投球。投げ合った相手は西武・高橋光成、オリックス・山下舜平大、日本ハム・加藤貴之といずれもパ・リーグを代表する好投手だっただけに、チームへの貢献度は抜群だった。

 交流戦前は3登板続けて勝ち星から遠ざかっていたエースの今永昇太投手も、3登板で2勝0敗、防御率1.88をマーク。交流戦初戦の5月30日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で9回2失点、9奪三振で今季初完投勝利を挙げると、6月6日のソフトバンク戦(ペイペイドーム)は勝敗こそ付かなかったが地元の福岡で8回1安打1失点の快投を見せ、バウアーと同じく3登板全てでHQSを達成した。開幕から奮闘する東克樹投手、右肩の肉離れで出遅れていた大貫晋一投手も全2登板でQSを達成する安定した投球を見せ、ともに2連勝を飾った。

 もちろん、パ・リーグの好投手たちを相手に12球団2位の80得点を刻んだ打線も見事だった。同トップの27安打を放った4番の牧秀悟内野手は、打率.380、2本塁打、13打点をマーク。開幕からハイアベレージを維持した宮崎敏郎内野手も、途中に「右肋骨肋間筋の炎症」で欠場もありながら16試合に出場し打率.345、4本塁打、15打点と交流戦でも好成績を残した。6月18日のロッテ戦(横浜)では最速165キロ右腕の佐々木朗希投手から牧が同点打、勝ち越し三塁打を含む3安打を放てば、牧の勝ち越し打の直後に宮崎が佐々木朗にとって今季初被弾となる13号2ランを右翼ポール際へと放り込み、日本を代表する好投手を攻略してみせた一戦は、セ・リーグが誇る強力クリーンアップの力を強く印象付けた。

 交流戦首位タイで迎えた最終週。6月13日の日本ハム戦を前に、三浦監督はチーム全体にミーティングで「優勝を意識して戦おう」と呼びかけた。「これからシーズン後半を迎えて、もっともっとプレッシャーのかかる中で戦っていかないといけない。(優勝争いの)シチュエーションを設定できるいい機会なので、言わせてもらった」と、シーズン折り返し前の6月に意識的にプレッシャーをかけた。そこから最後の6試合を4勝2敗で目標の優勝をつかみ取り、指揮官は「全員が交流戦優勝するんだという意識を持って最後まで戦って、チームにとっては非常に大きな財産になった。この経験は絶対に生きてくる。生かさないといけない」と今後へ向けた大きな糧となることへの確信を口にした。

 「横浜頂戦」をチームスローガンに掲げた今季、まず一つ目の頂に立った。2021年のオリックス、昨年のヤクルトと交流戦王者が立て続けにそのままリーグ王者に輝いているデータも追い風に、いよいよ今度は1998年以来25年ぶりとなるリーグ優勝、日本一を掴みにいく。交流戦開始前の時点で6だった首位・阪神とのゲーム差も交流戦終了時に2.5まで縮まった。今季は手術明けの平良をはじめ石田、ガゼルマンらを中10日で登板させるなど先発投手が豊富で前半は例年以上に余裕を持ってローテーションを回しており、救援陣も国指定の難病からカムバックを果たした三嶋や森原らの台頭もあって伊勢、山崎をはじめ勝ちパターンの投手の登板数も抑えられている。昨季、快進撃を見せた得意の夏場に再び勝ち星を重ね、秋には悲願の頂点へ―。交流戦で得たプラス要素と確かな自信、そしてここまでの“余力”が、悲願達成への大きな後押しとなる。


VictorySportsNews編集部