「12会場ごとのチケットの販売状況を、(ラグビーワールドカップ組織委員会の)チケッティング部門、マーケティング部門、広報部門、地域支部とシェア。(各開催都市の)エリアに特化したチームを作り、状況に応じたプロモーションをおこなってきました」
こう語るのは、ラグビーワールドカップ2019組織委員会(組織委員会)のチケッティング・マーケティング局の大内悠資氏だ。
3月下旬の公式発表によると、すでに販売されているチケットのうち海外が占めるのは約3分の1。ボリュームゾーンはラグビー発祥の地たるイングランド、アイルランド、オーストラリアといったラグビー強豪国のファンだが、オランダ、ドイツなど大会に出場しない国でも興味が示されているという。さらに組織委員会が注目するのはアジアからの申し込みだ。今回はアジア初の大会とあり、アジア諸国からのニーズが前回以上に高まっているという。
国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦するサンウルブズは、日本のみならずシンガポール、香港でも公式戦を開催。準ホーム扱いでのアジア諸国でのゲームでは集客に苦しんだものの、競技普及の面で一定の効果は示したと言えそう。改めて、2020年限りでのリーグ除外決定は悔やまれる。
2002年のサッカーワールドカップ日韓大会と同様に、市井に競技の面白みを伝播しそうなラグビーワールドカップ日本大会。ここまでのチケット販売状況を鑑みたら、最近興味を持ち始めたファンがグラウンドに行けないようにも映ってしまう。
しかし実際は、まだまだ観戦のチャンスは多く残されている。何と5月18日に第3次一般販売という販売機会がスタート。ここでは、大会を運営するラグビーワールドカップリミテッドが追加でリリースするチケットを早いもの順で買える。
同31日には、チケットのリセールサービスのサイトも開設される。リセールサービスとは、すでにチケットを購入したものの事情があって試合を観に行けなくなったファンがチケットを再販する仕組みのこと。この枠組みで売られるチケットは定価で、売り上げの98パーセントが売り主の手元に入る(残り2パーセントは手数料)。
悪質な転売サイトを抑止する役割も期待されるリセールサービスは、志半ばで観戦を断念するファンと観戦実現に一縷の望みをかけるファンを繋ぐ架け橋となりうる。このリセールサービスが継続的に機能することで、チケット販売サイト上での人気カードの表示が「売り切れ」から「在庫あり」に切り替わる瞬間がありそうだ。
大会直前期の8月には第4次一般販売がスタートする。第3、4次でどれほどのチケットが日本へ戻されるのかは見えない部分が多い。そのため組織委員会にとっては大会直前期に膨大な量のチケット販売が課されそうだとも取れるし、国内のファンにとっては再びプレミアチケットの入手が叶いそうだとも取れる。大内氏は展望する。
「すべての会場で満員になるのを目標に掲げています。その目標は、非常に良い形で狙える進み方をしています。引き続き、全てのステークホルダーさんと一緒に準備をしていきます。例えば、各地域のローカルメディアの方々に向けた露出をより増やしていきます。チケット公式サイトにID登録し、すでに興味を持っていただけているファンの皆様にも引き続きプロモーションをおこなっていきます」
キャッチコピーで『一生に一度』と謳われる大会は、徐々に盛り上がりの下地を作りつつある。もっとも最大の検討課題は、大会後の競技文化の醸成である。
組織委員会は、ワールドカップ日本大会という祭りを盛り上げるタスクフォースだ。祭りが済んだ後の後片付けや日常の暮らしをよりよくする役割は、公益財団法人日本ラグビー協会に課せられる。常任理事会でほとんど諮られないままサンウルブズのスーパーラグビー除外が決まった状況下、今年6月に決まる新しい執行部がいかなるビジョンを示すか。日本代表戦の集客量以上に注視されたい。
チケット販売は好調も、日本ラグビー界に残る課題
ラグビーワールドカップ日本大会の開幕まであと4カ月強。街角には広告やマンホールが開催をアピールし、大会認知度は上昇傾向にある。チケットの売り上げも上々のようで、本稿執筆時点では販売予定枚数となる180万枚のうち130万枚以上が売れているとのこと。現在のチケット売り上げの背景や展望、チケット売り上げでは測れないラグビー界の解決課題をレビューする。
(C)Getty Images