帰国後初戦となった「北海道meijiカップ」は、テレビ放送を担当したフジテレビが大会2日目の生放送を実施。次戦の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」では渋野が優勝争いに加わり、いずれも高視聴率を獲得したという。渋野の快挙を知り、初めて女子ゴルフのテレビ中継を見た人も多かっただろう。

そんな人たちから素朴な疑問として発せられたのが次のような声だ。「北海道meijiカップ」の際は、「なんで大会2日目だけ生放送なの? 最終日は生放送しないの?」。「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」の際は「なんで渋野が優勝争いしているのに生放送しないの?」。

その理由はフジテレビの番組表を見れば、すぐにわかる。フジテレビは毎週日曜の15時から16時に「みんなのKEIBA」があり、この時間帯を避ける形でしかゴルフのテレビ放送ができないのである。

では、女子ゴルフのテレビ放送は生放送できないのかというと、決してそんなことはない。日本女子プロゴルフ協会が主催する「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」(9月12日~9月15日)は、大会3日目と最終日がABCテレビ・テレビ朝日系列24局全国ネットで生放送。しかも、地上波の生放送が始まるまでの時間帯はCS放送チャンネル 「スカイA」で生放送を実施。さらに、4日間ともインターネットLIVE配信を予定している。

ここで改めて「北海道meijiカップ」と「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」の主催者を見てみると、前者の主催者は北海道文化放送株式会社、株式会社北海道新聞社、株式会社道新スポーツの3社で、明治グループは特別協賛。後者の主催者はNECグループで、フジテレビが後援という形になっている。日本女子プロゴルフ協会はいずれも公認という立ち位置だ。

試合を生放送するかどうかは、主催者の意向によるところが大きい。そして主催者がゴルフトーナメントを開催する大きな理由の一つは、実は試合前に仕事の取引先などを招いて行うプロアマ大会である。試合はおまけとまでは言わないが、プロアマ大会さえ無事に終われば主催者は大満足。試合が生放送されるか録画中継になるかはテレビ局任せという主催者が多いのが実情だ。

「北海道meijiカップ」はテレビ局が主催者に入っているので、視聴率が取れると見込んで臨時対応したが、「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」はプロアマ大会を重視しているので、生放送に対するこだわりは特になかったと思われる。

一方で、日本女子プロゴルフ協会は試合を生放送することに対して強い意欲を持っている。それは、自らが主催者である「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」の放送体制を見ても明らかだ。

そして生放送に対しての意欲は、ステップ・アップ・ツアーですでに発揮されている。ステップ・アップ・ツアーとはレギュラーツアーの出場資格を持たない選手および新人を対象に、試合経験を積ませることによる育成・レベルアップを目的として1991年から始まったトーナメントである。

こちらは20試合すべてが日本女子プロゴルフ協会の主催となっており、CS放送チャンネル「スカイA」とゴルフ専門サイト「スカイAゴルフLIVE」で生放送されている。

これは冷静に考えてみるとおかしな状況で、プロ野球にたとえるなら2軍の試合は全試合が生放送で見られるのに、1軍の試合の多くは生放送で見られないのである。

このようなねじれ状態を解消するため、日本女子プロゴルフ協会は2017年8月から各大会主催者と交渉を個別に開始し、2018年度は3回にわたって全大会の主催者と合同ミーティングを行ってきた。それ以降も各大会主催者と個別交渉を重ねてきたが、日本女子プロゴルフ協会が放映権を一括管理するという主張に対してテレビ局が猛反発している。

2018年末には日本テレビ系列の地方テレビ局が主催する3大会が中止になると発表した後に開催が決定したが、これは問題が解決したわけではなく先送りしただけの話で、2019年末に同様の問題が発生するのは目に見えている。

この問題はおそらく、日本女子プロゴルフ協会とテレビ局の交渉だけでは解決しないだろう。視聴者がどちらを支持するかが解決の糸口になってくるような気がする。

9月以降のテレビ放送は、生放送が比較的多くなる。前述の「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」に加え、日本ゴルフ協会主催の「日本女子オープンゴルフ選手権」(10月3日~10月6日)もNHKとBS1で生放送されるのが通例となっている。最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」(11月28日~12月1日)も日本女子プロゴルフ協会が主催なので、生放送が実施されるはずだ。

これらの生放送と、それ以外の録画放送を見比べたとき、視聴者がどちらを面白いと感じるか。渋野の活躍により、女子ゴルフのテレビ放送にさらなる注目が集まる中、今後のテレビ放送のあり方も大きな転換期を迎えるかもしれない。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。