2016年、横浜DeNAベイスターズの監督に就任したアレックス・ラミレス監督。初年度に初のCS出場となる3位に導くと、その後は3位、4位、そして今シーズンは2位。もちろんリーグ優勝、日本一を目指すという目標を思えば物足りなく感じるかもしれないが、万年Bクラスだったことを思えば、立派な成績といえるだろう。このラミレス監督を球団に招聘したのは、当時社長だった池田氏だ。「せっかく球団初のホームでのCSに水をさしたくないのですが……でもさすがに。ファンや野球人からみると不思議に思えるようですしね」と質問に回答してくれた。
「当初は新人監督でどのくらいの力量があるかは未知数でしたが、人気だけでなく、野球の理論がしっかりしているという印象でした。今年は優勝できるかもと思っていましたが、惜しくも2位。でも同じCS出場でも、2位と3位では大きく違います。2位になるとファーストステージをホームのハマスタで行うことができる。慣れた球場でファンも多く集まって選手の士気があがるのはもちろん、入場料収入などを手にすることができるのでビジネス的にも大きい。ラミレス監督は、それを初めて成し遂げたのですから、本来なら2位が確定した時点で続投を要請すべきと考える方も多い。でもまだそういった報道がないということは、球団として迷いや何らかの思惑でもあるのでしょうね」
選手起用や試合中の作戦など、奇策を用いることが多いラミレス監督の采配に批判の声があるのも事実。だが、プロ野球は結果の世界。前年4位を2位に上げ、来シーズンはいよいよ優勝も見えてきたというチームの監督が続投しないというのは考えづらい。野球界や野球人の間でも異例のこととして物議を醸しているようだ。なぜこのような事態になっているのだろうか?
「もはや球団とは関係ないのですが、あまりにファンの方からなぜか私にSNSなどで多数の質問がくるのです。たとえば、来年は横浜スタジアムでオリンピックの野球の試合も開催されるなど、これまで以上に横浜の野球熱が盛り上がることが予想されます。その年に、チームの生え抜きでファンも多い“番長”三浦大輔コーチを監督として迎え、さらにベイスターズの人気を上昇させようとしているのでしょうか、とか。今年から投手コーチになったのも、次期監督への準備として捉えることができるのは当然ですし、もしBクラスだったとしたらすんなり三浦監督が誕生していたと思っているファンの方も多い。ただラミレス監督は結果を出したわけですから、そんな球団側のよこしまな思惑はいったん忘れて、早めに来シーズンの続投要請をするべきと考えるのが野球界の常識だと私は思います。そうしないと野球人、まして、2位にしてくれた監督に失礼ですし、2位になってもダメなのかと、ではどうすればいいんだ、と野球人からフロントや球団の体質を疑問視されてしまうのではないでしょうか」
それにしても不思議なのは、こういったベイスターズの監督をめぐる話題がスポーツ紙などでもまったく書かれていないこと。関係者なら誰もが気になっていると思うのだが……。
「恐らく球団、フロントや経営陣としては今そこについて触れられたくない。そういった空気や情報統制の圧力をマスコミが察して、この話題から逃げているのではないでしょうか。2位の監督が来シーズンいるかどうかもわからないという、明らかにまともじゃないことが起きているわけですから、もっとそこを記事にすべきではないでしょうか。忖度ばかりしていては、チームのためにもひいては野球界のためにもならないと思います。マスコミやメディアと、スポーツの経営やフロントサイドとは切磋琢磨し合う、よい緊張関係にあるべきです。情報統制、言われたくないことを言わせないような圧力がまかり通る状況では、日本のスポーツ界が正しく発展しませんし、おかしくなります。言われたくないなら、やらなければいいのです。言論の自由がなくなってしまいます」
いよいよ始まるポストシーズン。このままだとベイスターズの選手たちも来シーズンの監督が誰かもわからない中途半端な気持ちで戦わなければならなくなるかもしれない。
取材協力:文化放送
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文化放送「池田純 スポーツコロシアム!」(毎週火 20:40~20:50)
パーソナリティ:池田純
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球団史上初の2位でも なぜか発表されないラミレス監督の去就
両リーグの全日程が終了。順位も確定し、いよいよ日本一を目指すポストシーズンの季節がやってきた。4連覇を逃した広島カープの緒方監督や東京ヤクルトスワローズの小川監督が退任を発表、次期監督の名前も取り沙汰されているが、一向に続投発表が行われないのが、球団史上初の2位になった横浜DeNAベイスターズ。初代球団社長であり、スポーツビジネス改革実践家の池田純氏に、古巣球団の来期監督をめぐる動きの遅さについて直撃してみた。
(C)共同通信