PGAツアーは例年、この時期にアジアでのスケジュールを組んできた。昨年はマレーシアのクアラルンプールで「CIMBクラシック」を開催した後、韓国の済州島で「THE CJカップ@ナインブリッジズ」を開催。そして中国・上海での「WGC-HSBCチャンピオンズ」という流れだった。今年はマレーシアの試合がなくなり「ZOZO CHAMPIONSHIP」が新設され、韓国-日本-中国という順番になった。

これにともなって、出場選手の顔ぶれもメジャー大会さながらの豪華メンバーとなった。今年の「マスターズ」で久々のメジャー優勝を果たしたタイガー・ウッズを皮切りに、2018-2019シーズン年間王者のローリー・マキロイ、2016-2017シーズン年間王者のジャスティン・トーマス、2014-2015シーズン年間王者のジョーダン・スピースと、PGAツアーの主役と言える選手たちが名を連ねている。

日本ツアーの最高賞金額が総額2億円、優勝4000万円であるのに対して、「ZOZO CHAMPIONSHIP」は総額975万ドル(約11億円)、優勝175万ドル(約2億円)。1試合あたりの規模は約5倍だ。ただし、日本の賞金ランキングに反映される金額は、バランスを取って50パーセントの加算率となっている。

このところ日本国内のゴルフの話題は、8月の「AIG全英女子オープン」で日本人女子選手として42年ぶりに海外メジャー制覇を果たした渋野日向子一色と言っても過言ではなかった。9月の「デサントレディース東海クラシック」でも、最終日に8打差を逆転して話題をかっさらったが、10月の第4週は男子ゴルフの「ZOZO CHAMPIONSHIP」の話題で持ち切りになるのは間違いないだろう。

もしタイガー・ウッズが「ZOZO CHAMPIONSHIP」で勝利を挙げると、サム・スニードが持つPGAツアー最多勝利記録82勝に並ぶ。日本のメディアだけでなく、世界中のメディアが注目するゴルフトーナメントと言っても、決して大げさな表現ではない。

そしてタイガー・ウッズは過去に日本で素晴らしいプレーを繰り広げてきた。2001年11月に太平洋クラブ御殿場コース(静岡県)で開催された「WGC EMCワールドカップ」では、デビッド・デュバルとのコンビで優勝争いを演じた。最終日の18番パー5でグリーンサイドからチップインイーグルを決め、プレーオフ進出を果たしたシーンは日本のゴルフファンの脳裏に焼きついている。

2004年11月の「ダンロップフェニックス」では通算16アンダーで2位に8打差をつける圧勝。翌年の「ダンロップフェニックス」でも、プレーオフ4ホール目で横尾要を下し、大会連覇を達成している。

今回の「ZOZO CHAMPIONSHIP」は、2006年11月以来となる13年ぶりの日本での試合出場となるが、当時のパワフルなゴルフとはひと味違う、円熟味を増したプレーを見せてくれるはずだ。予選カットなしの4日間72ホールで、出場選手78名のみというフィールドなので、最終日まで優勝の可能性を残す試合運びをしてくるだろう。

また、「ZOZO CHAMPIONSHIP」の開催に合わせて、PGAツアーと12年間の長期にわたるライブ配信やオンデマンドを世界中に提供する契約を結んでいるディスカバリーが、動画配信サービス「GOLFTV」(ゴルフティーヴィー)の日本語版サービスを本格始動する。

「GOLFTV」は大会直前の10月21日(月)にアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブで、タイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、ジェイソン・デイ、松山英樹の4人が戦うスペシャルマッチ「The Challenge: Japan Skins」(ザ・チャレンジ:ジャパンスキンズ)を開催。世界にライブ配信を行う。解説は丸山茂樹氏、ラウンドリポーターは宮里藍氏と今田竜二氏が務める。

このイベントに象徴されるように、「ZOZO CHAMPIONSHIP」で世界の強豪選手たちを迎え撃つ日本人選手の筆頭は、PGAツアーを主戦場としている松山英樹だろう。2013-2014シーズンから本格参戦を果たし、2014年6月の「メモリアル・トーナメント」で初優勝。2016年2月の「ウェイスト・マネジメント・フェニックス・オープン」で2勝目を挙げ、2016-2017シーズンは3勝を積み上げた。それ以来、勝利からは遠ざかっているが、PGAツアー5勝の実績は飛び抜けている。

大会の注目度の高さを決定づけるように、松山とコラボレーションを開始したスポンサーも現れた、求人検索のIndeed(インディード)が10月1日から2年3ヶ月間のスポンサー契約を締結したと発表した。同社は、世界No.1求人検索エンジンとして、今後松山の挑戦をサポートしていくようだ。
世界No.1企業からのサポートを受け「ZOZO CHAMPIONSHIP」で2年ぶりの勝利を挙げ、念願の海外メジャー制覇に向けて勢いを取り戻してほしい。

国内組で期待を集めるのは、2016-2017シーズンまでPGAツアーに参戦していた石川遼。PGAツアーでは145試合に出場し、最高成績は2位が2回と、優勝には手が届かなかった。

しかし今回は、日本で戦えるという地の利がある上に、今季は日本ツアーで2勝を挙げ、調子を取り戻している。絶好のチャンスを生かして、PGAツアーへの挑戦権を再び手にしたいところだ。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。