2020年から話題となっていたワンポイントピッチャー禁止の新ルールだが、2021年からの採用となるようだ。このルールが採用になると、リリーフピッチャーは最低3人と対戦するか、イニングを終了させなくてはいけなくなる。これまで「左殺し」、「○○キラー」と呼ばれるワンポイントピッチャーは日本球界にも存在したし、ポストシーズンなど、ここ一番の勝負時には、メジャーリーグでも多用される戦術だ。“一人一殺”のワンポイントピッチャーは、野球ならではの楽しみのひとつともいえるのだが、なぜ禁止されることになったのだろうか。

「新ルールの目的は、試合時間の短縮です。メジャーリーグは、ワールドワイドに広がるテレビ放映は調子がいいのですが、スタジアムの動員はどんどん減少しています。その主な原因は試合時間が長いこと。最近の若者は、長時間拘束されることを嫌う傾向があります。エンターテインメントが多様化するなかで、投手交代にかかる時間を削ることで時短につながると考えているのでしょう」

今シーズンの日本のプロ野球界の全試合の平均は3時間21分。4時間を超えることも珍しくない。試合時間がほぼ決まっているサッカーなどと比べ、終了時間が見えないのも観客にとってはネックになりうる。

「野球の試合で実際にボールが動いている時間は、正味5分程度と言われています。そのほかの“本質的”ではない時間、バッターが打席を外したりする時間や、ピッチャーの交代時の投球練習をなくせば、時間を大きく削れる可能性はあります。投球練習までには、なかなか手を出しにくいので、まずは一番効率的な、ワンポイントピッチャーから禁止にしたということではないでしょうか」

過去にはコリジョンルールや申告敬遠など、MLBで採用されたルールが1〜2年後に日本でも採用されてきた。このワンポイント禁止のルールも追随することになるのだろうか?

「そうなる可能性が高いと思います。時短は日本でも大きな課題のひとつ。もちろんバッターのルーティンや戦術的な駆け引きを観るのも楽しみのひとつだという意見はあると思いますし、ワンポイントで“食っている”中継ぎピッチャーもいますから選手からの反発もあるでしょう。でも野球界も時代にあわせた変化が必要。いまは日本のプロ野球は観客動員が好調ですが、それもいつ落ちるかわからない。特に若者は“待てない”時代になってしまった。スポーツエンターテインメントの牽引役として、できることはやっていくべきだと思います」

コリジョンルールの採用は、西武ライオンズの森友哉選手など、体の小さなキャッチャーが活躍するきっかけになった。申告敬遠も新たな戦術として定着しつつある。ルールが変わることで、新たな楽しみが増える可能性もあるのだ。ワンポイント禁止が野球界にどんな変化をもたらすのか。まずはMLBの動向を見守りたい。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部