■期待できる五輪代表。一方懸念も

「今回のAFC U-23選手権タイ2020は海外組が1人だけでした(スコットランドのハート・オブ・ミドロシアンFCに所属する食野亮太郎選手のみ選出)。今は23歳以下でも世界のクラブで活躍している選手が多いので、本大会では堂安律選手(PSVアイントホーフェン)や久保建英選手(RCDマヨルカ)といった選手たちが当然、呼ばれるでしょうから、今までになく期待できる五輪代表になると思いますよ」

ただ、一方ではこんな不安も口にする。

「今までの五輪代表は国内組が多かったですが、今は世界のクラブで活躍している選手が多いので、招集期間が短い中でのチーム作りというのが難しくなっているのは確かですね」

U-23日本代表は今後、国際親善試合で3月27日にU-23南アフリカ代表、3月30日にU-23コートジボワール代表と対戦。その後、5月17日~5月19日に福島県のJヴィレッジでトレーニングキャンプ、6月1日~6月15日にフランスへ海外遠征、7月6日~7月17日に兵庫県でトレーニングキャンプを行い、7月23日のグループステージ初戦に臨むことになる。

「まだメンバーが決まっていませんし、この間のAFC U-23選手権タイ2020を見ても、恐らく半分は海外組が入ってくるチームになると思うので、18名の中に選ばれるのはとても難しいと思います。当落選ギリギリの選手たちは、とにかくチームでアピールしなきゃいけないですし、一試合一試合が勝負になってきます。2月からJリーグが開幕しますが、自分自身が五輪に出ることを見据えながらチームでプレーしてほしいですし、そういうモチベーションを最後まで保ってほしいですね」

■オーバーエイジ枠をどう活かすか

また、本大会では24歳以上の選手を3名まで使えるオーバーエイジ枠がある。オーバーエイジの選手は必要になるだろうと前園氏は語る。

「五輪のような大舞台になると、逆境に立たされる試合、苦しい時間は必ずありますから、そういうときに経験値のある選手たちが必要だと思いますし、彼らの経験が生きるはずです。具体的に言うと、前線と、中盤と、最終ラインに1人ずつ入ると安定すると思います」

「前線であれば、ワールドカップの経験もある大迫勇也選手が入ることで攻撃の部分では起点になるので、若い選手たちが躍動できると思います。中盤にドンと構えてほしいのは、柴崎岳選手のようなパスを動かせる選手。そして最終ラインに吉田麻也選手あたりがいれば、タテのラインが安定しますから、若い選手たちがのびのびとプレーできて、チームが落ち着くんじゃないかなという感じがします」

「こういう選手たちが招集できるかどうかわからないですけど、僕の希望としては、オーバーエイジ枠を使って選手が来てくれると、五輪代表チームがワンランクアップするのかなと思います」

実際に五輪に出た経験がある前園氏は、東京五輪代表チームに対してどんなエールを送るだろうか。

「サッカーの場合は開会式の前から試合が始まりますし、選手村に入るわけではないので、他の競技の選手と交流するような機会はまったくありません。そういった意味では普段のサッカーの世界大会とそんなに変わらないと思うのですが、他の競技をテレビで目にすることが多いので、日本の選手がメダルを取ったりするとそれが自分たちのモチベーションになっていました。そういうつながりというのは五輪ならではですよね」

「しかも今回は自国開催ですから、大きな後押しがあるのは間違いないですし、期待してもらっていいと思います」

「また、サッカーに関して言えば、五輪は23歳以下という年齢制限はありますが、今は23歳以下でもA代表でレギュラーを張っている選手が世界にもたくさんいますし、オーバーエイジ枠もありますから、ワールドカップとそこまで変わらないレベルの高さになっているんじゃないかと思います」

「五輪で活躍すると、そこから世界への扉が開けていく場所でもあるので、プレワールドカップのような位置づけになっているんじゃないかと思っているんですね」

「僕自身も五輪代表に選ばれていなかったら、世界というのはほど遠い存在だったので、五輪は世界につながることを実感させてくれた大会でした。こういう機会はなかなかないと思いますので、自分の年齢が当てはまる選手は絶対に代表に選ばれるんだという気持ちでやってほしいですね」

選手たちが切磋琢磨して個々の能力をレベルアップし、さらにチームとしてうまく融合することができれば、1968年メキシコ五輪の銅メダルという成績を上回る結果を手にすることができるかもしれない。

アトランタ五輪 日本代表キャプテン前園真聖氏が語る“五輪”の思い出

7月24日の東京五輪開会式に先駆け、7月22日に女子のグループステージ、7月23日に男子のグループステージが始まるサッカー競技。男子は7大会連続11回目の出場、女子は2大会ぶり5回目の出場となるが、男子の5回目の出場は28年もの月日がかかったことを覚えているだろうか。

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保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。