男子ツアーは今シーズン、「HEIWA・PGMチャンピオンシップ」が撤退。昨シーズンは「ISPSハンダマッチプレー選手権」も撤退している。このような状況に選手たちは不満を募らせている模様だ。

当初は3月13日に定時社員総会が開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染予防および拡散防止のため、3月25日に延期。この場で青木会長の続投に対して社員(参加する選手)の承認が得られるかどうかが注目されている。

■石川・松山が高めた男子ゴルフツアー人気

男子ツアーはこのところ人気が低迷しており、女子ツアーの人気に押されっぱなしだ。2019年8月には渋野日向子が「AIG全英女子オープン」で海外メジャー制覇を果たし、“しぶこフィーバー”で人気格差がさらに広がった。

男子ツアーと女子ツアーでなぜこれほどまで人気に差がついたかというと、ファンサービスやプロアマ参加者に対する選手の対応など、さまざまな理由が取り沙汰されているが、一つのきっかけになったのは石川遼と松山英樹がいずれも米国に渡り、PGAツアーを主戦場にしたことであったと感じる。

2007年5月に当時高校1年生だった石川が「マンシングウェアオープンKSBカップ」でアマチュア優勝を果たし、男子ツアーの人気は一気に高まった。

石川は2008年1月にプロ転向すると、同年10~11月の「マイナビABCチャンピオンシップ」でプロ初勝利。そして2009年には年間4勝を挙げ、高校3年生で史上最年少賞金王という偉業を達成した。この時期の男子ツアーは明らかに盛り上がっていた。

2010年も年間3勝を挙げた石川は、日本ツアーの中心選手として活躍しながら、PGAツアーへのスポット参戦も増やしていった。

そのころ、石川と同学年の松山は東北福祉大学に進学。2010年10月の「アジアアマチュア選手権」で優勝し、2011年4月の「マスターズ」出場権を獲得した。この大会でローアマチュアに輝き、スター街道を歩み始めた松山は、同年11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で石川以来のアマチュア優勝を達成し、人気に厚みを加えた。

松山は2013年4月にプロ転向し、大学4年生で年間4勝を挙げて賞金王。このときすでに、石川はPGAツアーを主戦場にしていたが、男子ツアー人気は継続していた。

だが、2014年に松山も米国に渡ると、雲行きが怪しくなってきた。2014年は小田孔明が賞金王、2015年は金庚泰が賞金王に輝いたが、盛り上がりに欠けるシーズンになった。

その一方で、男子ゴルフファンの眼差しは石川と松山が参戦しているPGAツアーに向けられるようになった。PGAツアーは当初から、一部の熱心なゴルフファンに注目されていたが、松山が参戦1年目の2014年6月に「ザ・メモリアルトーナメント」で初優勝を挙げてから人気がさらに高まった。

松山は2014-2015シーズンこそ未勝利に終わったが、2015-2016シーズン以降に大きな飛躍を遂げた。2016年2月の「ウェイスト・マネジメント・フェニックス・オープン」でPGAツアー2勝目を挙げると、2016-2017シーズンは年間3勝の快進撃。世界ランキング2位まで浮上し、PGAツアーの中心選手として確固たる地位を築いた。

これらの活躍を見ていたゴルフファンにとって、日本の男子ツアーが物足りなく感じるのは当然の流れだった。

■世界的には断然人気。国内ツアー活性化へつなげ

そんなゴルフファンの思いが顕著に現れたのが、2019年10月に日本で初開催されたPGAツアー「ZOZO CHAMPIONSHIP(ゾゾチャンピオンシップ」だった。日本の男子ツアーには見向きもしなかった人たちが、この試合のチケットは目の色を変えて入手し、悪天候による大幅なスケジュール変更があったにもかかわらず、初日1万8536人、4日目2万2678人もの大ギャラリーが集まった。

要するに、男子ツアーの人気が低迷しているのは日本だけの現象であって、世界的に見れば男子ツアーのほうが断然、人気があるのだ。

それならばPGAツアーの人気にあやかって国内ツアーの活性化を目指すべきだと思うが、JGTOは今年から「ZOZO CHAMPIONSHIP」を日本ツアーの賞金ランキング加算対象外にするなど、何だかちぐはぐだ。

むしろ「ZOZO CHAMPIONSHIP」の賞金を日本ツアーのランキングに全額加算し、賞金王になった選手が翌年のPGAツアーに出られるような仕組みを作る働きかけを行ったほうが、結果的に国内ツアーの活性化にもつながるのではないか。

仮に日本の賞金王がPGAツアーに出られるようになり、賞金ランキング2位~10位の選手がPGAツアーの下部ツアーに出られるような仕組みになれば、世界から見て日本ツアーの注目度がアップするだろうし、海外企業が日本のトーナメントをスポンサードする可能性だって出てくる。

男子ツアーの人気を回復するためには、会長が代わるかどうかといった内部的な変革ではなく、既存の価値観にとらわれずダイナミックに仕組みを変える必要があるかもしれない。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。