この決断と同時にJGTOは4月24日付で「ツアーメンバーの皆さんへ」と題した文書を青木功会長から全選手に送った。

「世界規模で今もなお拡大し続けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、私たち一人ひとりの生活にかつて体験したことのないような影響を与えています。選手のみなさんにもトーナメントの休止をはじめ、多大な影響を及ぼしていることと思いますが、この制約の多い環境でも、それぞれ工夫して練習やトレーニングを継続しながら、いつ試合が始まってもいいように準備をして頑張っていると聞き、とても心強く思っています」

選手たちの厳しい状況をねぎらう文面から始まる3000字あまりのメッセージは、JGTO がこの難局を乗り切るため、しっかりと情報を共有して意思の疎通を図りたいという思いがうかがえる。

■メッセージで伝えたことは

まず、6月までのトーナメントが中止あるいは延期になったことについて、Abema TVツアー(チャレンジツアー)は可能な限り年内に延期する方向で主催者と交渉しているものの、 レギュラーツアーは8 月後半以降に空いている週がなく、年内開催は困難な状況で6月の試合も中止または来年に延期という決定をせざるを得なかったと説明。

次に今後のトーナメント再開に向けて、どういう条件の元であればツアーが再開できるか、2020年度のツアーを成立させるとしたらどういう前提となるのかが議論の中で大きな問題となっていると伝えている。
その条件として、海外在住の選手も含め、資格のある選手が問題なく参戦できる環境が必要で、一部の選手だけが出られる状態でトーナメントを行うことはできれば避けたいとしている。

一方で、世界中の国が次々に新型コロナウイルスの被害に遭っていく今の流れを見ると、いつになれば海外渡航も含めて状況が改善するのかまったく読めず、主催者がトーナメントを開催できる状況になれば、出られる選手だけでも出てもらって活躍する場を提供したいという思いもあると吐露している。

さらに、これだけ多くのトーナメントが中止になっている状況で、2020年度の成績を通常の年と同じように考え、賞金王やシード選手などを決めてしまってよいかどうか、「おそらく全員の選手が賛成する結論を出すことは難しいかもしれない」としながらも、海外ツアーのやり方なども参考にしながら、一か月くらいの間で何らかの回答を出すつもりだと綴っている。

そして、先が読めない難しい状況が続く中でも、多くのスポーツ選手やアーティストがSNSなどを通じて感染拡大防止を呼びかけるメッセージの発信を積極的に行っているように、ゴルフのトッププロも人の心や行動に影響を与えることができるので、この機会にファンの皆さんにたくさんのメッセージを送ってほしいと呼びかけている。

■難局をともに乗り切るために

男子ツアーはこのところ女子ツアーに比べて人気が低迷している。特に2019年は「AIG全英女子オープン」で海外メジャー制覇の快挙を成し遂げた女子ツアーの渋野日向子にゴルフの話題を独占された。2020年は人気挽回の年にしたいところだったが、出鼻をくじかれる形になってしまった。

ただ、男子ツアーも女子ツアーも試合が開催できない中、両者の対応には違いも見られる。女子ツアーは開幕時期と新型コロナウイルスの感染拡大がちょうど重なってしまったため、対応がかなりバタバタした。3月5日~3月8日に開催予定だった「ダイキンオーキッドレディス」は2月19日時点では無観客開催を決定したが、2月28日に開催が中止となった。
その後も開催中止の決定が直前になったり、中止の決定が1試合ずつの発表だったりしたことで、選手たちから「どうやって対処したらいいかわからない」という声が多く聞かれた。

ツアープロは開幕前から転戦スケジュールをだいたい決めており、飛行機や新幹線などの交通手段や現地に着いてからのレンタカー、ホテルや旅館などの宿泊先をまとめて予約している。その予約をキャンセルするタイミングが難しかったようだ。

一方、男子ツアーは女子ツアーよりも開幕時期が1カ月以上遅かったこともあり、中止や延期の決定が迅速だった。PGAツアーが3月13日にプレーヤーズ選手権の2日目以降の競技を中止し、その後の中止・延期の発表も数試合ずつまとめて行っていたことが参考になったかもしれない。
また、女子ツアーの選手からは「大会の中止決定が業務連絡のように次々と届くのが不安で仕方がない」という声も聞かれる中、男子ツアーは手紙を送ることで選手の不安を少しでも和らげたいという意図が感じられる。

新型コロナウイルスの世界的流行というこれまでに経験したことのない事態にどうやって対応するのが正しいのか、その答えはなかなか見えないが、密閉・密集・密接を避ける生活を続けていると、人はとにかく不安な気持ちになりやすい。

感染症という目に見えない敵が相手なので、どうしても目に見える仮想敵を作りたくなるし、不安をぶつけたくなってしまう。
スポーツ選手と競技団体は本来、同じ目的に向かって力を合わせるべきだが、互いの行動が制限される状況では意見の食い違いも生じやすい。事態が収束したときに人気を高めるためにも、今は不要の衝突を避けて十分な意思疎通を図るのが最善策と言えそうだ。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。