グリーン車からバス移動に―― 海外で培うハングリー精神

――今季は初の海外移籍となった2人ですが、今季を振り返ってみてください。

安西 ざっと1年が経ちました。2人でよく話していることなのですが、海外のリーグはJリーグとはサッカーの種類が全く違います。日本で良い選手がこっちで活躍できるかというと、それは違う。こっちのサッカーに順応することが大事と、よく話しています。僕は7月にこっちに来て開幕から順調で、クラブでも試合に出られて日本代表での活動もさせてもらっていました。しかし、今年2月に監督が代わってからは、試合に絡めなくなることが多くなりました。なので、難しいシーズンになりましたが最初のほうはうまくいっていたので、良いことも悪いことも半々くらいかなって思っています。

鈴木 今季の1年は、いろいろとサッカーで考えるタイミングがありました。ふたを開けてみると、5大リーグとは違ってベルギーリーグはどこまでいっても結果でしか見られない。今シーズンを振り返ってみて、改めて重要だなって思ったのが結果でしたね。これまでの鹿島アントラーズにいた自分だったら、なるべく時間を作って攻撃の始まりになりたいとか、自分がいることによってチームをうまく回したいというような思いでプレーしていました。だけど極端な話ですが、自分のなかでそういった起点となるようなプレーよりも、こっちに来てからは「まずは点を取りたい」という気持ちが強くなり、それが大事だと思っています。チームとして勝つということも大事ですけど、それにプラスして得点という数字で見られますし、その得点が勝利につながります。こっちは結果でしか認めてくれません。それは知っていましたけど、改めて思っていた以上に結果が大事だなって感じましたね。

――プレー以外の環境に適応するのに、苦労はしませんでしたか?

鈴木 僕は移籍が初めてで、食事は苦労しましたね。やっぱり主食が米でははないですし、こっちは油を使った料理が多い。ちょっと離れたところで日本食のお店があるとかって、こっちのことを知るまでの時間が必要で慣れるまでに時間は掛かりましたね。

安西 僕は権田(修一)選手もいましたからね。ポルトガルは気候も暖かくポルティモンの街は海が近くにあって、環境面では問題なく過ごせています。食事の面では日本食というものが全くないのですが、ポルトガルの料理はすごく美味しいので、そこまで問題にはなっていませんね。

鈴木 問題ないんじゃないか(笑)。

安西 でも、日本食は食べたいだろ(笑)。

――自炊はしなかったのですか?

安西 優磨はしていたでしょ?

鈴木 数えられる程度しかしてない。シント=トロイデンVVにいる日本人選手は仲が良いのでリフティングのゲームなどをして、負けた人が自炊してみんなに振る舞うというのが流行っているんですよ。だから、一人ではあんまり自炊してないですよ。

安西 僕は全くしないですが、権田さんの家でよくご馳走になっています。優磨がベルギーで自炊を始めたと聞いたときは、さすがに本気でびびって僕もやらないとまずいなって思ったんですけど、やっぱりダメでしたね(笑)。

鈴木 安西のところは、クラブから朝昼晩の食事が出るんですよ。だから、自炊する必要はないんですけど、僕らは朝と昼しか出ないので夜はどうしてもしなければならないんです。

安西 確かに、そうだね。

鈴木 こっちは大変ですよ。サッカーではない部分での戦いも多いですからね。

安西 確かに、それはあるね。

――シント=トロイデンVVは日本企業のDMMが経営しているので、日本人選手にとってもっと良い環境が用意されているのかと思っていました。

鈴木 そんなことないですよ。むしろ、いろいろな意味で這い上がってやろうと思える環境かもしれないですね。恵まれているわけでもありません。こっちよりもJリーグのほうが恵まれていますね。やっぱり日本はすごいですよ。こっちのように活躍してステップアップしなければならないと言われているリーグでは、すべてに対して良い意味でハングリー精神が出てきます。

安西 Jリーグでは鹿島という日本を代表するようなチームにいました。優磨ともよく話していることなんですけど、ポルティモネンセやシント=トロイデンVVは海外のなかではステップアップに利用するようなチームだと思います。Jリーグのときは、飛行機や新幹線での移動が主でした。ポルトガルにも新幹線はありますが、主要な交通手段がバス移動なんです。ポルティモンはポルトガルの端にあるので、アウェイの試合ではだいたい7時間くらいのバス移動になります。日本ではグリーン車とかでの移動が当たり前だったんですけど、バスで7時間なんてプロになってから初めての経験でした。そういったところで、こっちに来てからハングリー精神が鍛えられました。チームメートを見ていても練習から「今日しかない」って感じで挑んでいるので、僕自身もハングリーになれていると思います。

※オンライン取材時のキャプチャ画像

「0からの戦い」となった海外移籍

――海外移籍をしてみて、日本で得た経験は生きていますか?

鈴木 海外で活躍した日本人選手たちが、よく「早く海外に出たほうが良い」って言うじゃないですか。僕も安西もそうですけど、ある程度Jリーグで実績を積んでこっちに来ました。ですが、こっちの選手は日本での実績を知りません。どうせ知られていないなら、できるだけ若くして来るのは良いことだと思いましたね。僕らは24歳と25歳で、選手としての時間がそれほどないというのもあります。シント=トロイデンVVにせよ、ポルティモネンセにせよ、長くいるクラブではないというは、みんなもわかっていること。それに対して、得点できない、途中で代えられる、スタメンで出られないってなると、何のために行ったんだという思いが非常に強くのしかかってきます。日本で多くを学んで移籍しましたが、それを生かすというよりまた違ったものを学んでいるという感じですね。

――1からのスタートというイメージですか?

鈴木 どちらかというと、そうですね。日本で培ったものをこっちでそのまま伸ばすというよりは、0からの戦いになりました。シント=トロイデンVVもポルティモネンセも、日本人に優しいクラブと言われているなかでこのように感じています。次に移籍したら、もっと強く感じるんだろうって覚悟していますよ。

安西 本当に的を射ている話だね。あんまり共感はしたくないけど、本気でそうだなって話を聞いて思いました。

鈴木 海外で厳しい状況になる選手とかいるじゃないですか。たとえば今だと、ニューカッスルで武藤(嘉紀)選手が出ていないとか、でも僕らはそういうレベルではないんですよ。武藤選手は出られなかったら次に行くクラブは、(実績のある)ドイツに環境を変えられるんです。僕らの場合は日本人に優しいと言われるクラブに来ていて、ここでの競走に勝てなかったらどこに行ってもダメで次のクラブに行っても勝てるわけがないんですよ。その焦りで、ときどきすごくネガティブになります。僕らは守られていると思います。

安西 うん、わかる。そうそう。

――海外に出て、改めて日本に対して思うことはありますか?

鈴木 サッカーを抜きにして言えば……やっぱり日本は素晴らしいですね(笑)。

安西 それは間違いないわ(笑)。

鈴木 たとえば、外食のときに日本人の礼儀正しさを感じますね。こっちは対等か、それ以上で接客してきます。あと、日本人は時間にきっちりしていますし、仕事に対して真面目ですね。こっちの人は、仕事より自分の時間を優先したいと思う人が多いような気がします。でも、ちゃんと想像どおりですね。そのように聞いていたので、そこだけは想像どおりに進んでいますますね。

安西 こっちの人たちは、時間にすごくルーズなんですよ。10時に集合だったら、「10時にいれば良いんでしょ」という感覚なんですよね。5分前行動とかは全くなくて「グラウンドに10時集合ね」と言ったら、ロッカールームに10時に来て動き出せば良いという感覚。最初は本気で腹が立ちましたね。なんで時間どおりに来ないだろうって思っていたんですけど、権田さんからもアドバイスをもらいました。そういう細かいストレスを溜めていったら海外で生活できなくなるから、僕も海外に合わせてルーズにするようにしました。

鈴木 Jリーグでも、海外でプレーした経験のある選手は器が大きい。そういうことに慣れているから、ちょっとしたことで動じないんですよ。日本はちょっとしたことでも騒ぐ傾向がありますが、海外を経験している選手は大したことないと言います。今はそれが実感できていますね。

※オンライン取材時のキャプチャ画像

コロナ禍で苦しむ子どもたちにサッカーボールを贈りたい

 安西幸輝と鈴木優磨が参加する「PasYou」では、ファンやサポーターから届いたリクエストに応じて参加アスリートがひとりひとりに向けたビデオメッセージを個別に送るサービスを展開しています。
 「ファンやサポーターにプレーを見せる以外で何かできることはないだろうか」という共通の課題を感じていた2人は、新型コロナウイルス感染拡大によって苦しんでいる状況のなかで「元気にしたい、笑顔を届けたい」と思い、「PasYou」のサービスを通したプロジェクトを立ち上げました。以前のようにサッカーをできなくなってしまった地元の子どもたちに、「PasYou」のサービスで得た利益を還元してサッカーボールをプレゼントするという。
 千葉県銚子市で生まれた鈴木優磨は、「地元はもともと静かな街でしたが、年々と人が減っているように感じています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響で店を閉めなくてはいけなかったりと、厳しい状態にあると聞きました。全国でも厳しい状況にあることは理解していますが、まずは地元を少しでも活気づけたいと考えています」と、地元への愛を語っている。
 また安西幸輝は、「小学生の頃の経験はすごく大切で、初めてサッカーを好きになる期間だと思います。その期間に外で友だちと遊んだり、練習したりできないのはつらい。それが影響して、サッカーから離れて欲しくないなと思っています」と、コロナ禍による子どもたちへの影響を懸念している。
 そんな2人が「今できること」を考えて実行するのが、今回の「PasYou」を使ったサッカーボールのプレゼント企画。2人の思いに賛同する人は、「PasYou」を使って個別のメッセージをリクエストしてみてください。

安西幸輝×鈴木優磨「こんなにも何もできなくなるのかという無力感」コロナ禍に直面した2人の思い

安西幸輝と鈴木優磨は飛躍を誓って、昨年に鹿島から海外クラブへ移籍。海外生活1年目で、新型コロナウイルスが世界的に流行する未曾有の事態に巻き込まれる。プレーできない日々が続いた2人が改めて感じた日本へ思いを語る。(構成=川原宏樹)

VICTORY ALL SPORTS NEWS

PasYouで2人に「あなただけ」のビデオレターをリクエスト出来ます!

PasYou(パスユー )|『あなただけ』に贈るビデオメッセージ

誕生日やお祝いごとのメッセージ、お子さんや友人を鼓舞したり、励ましたりするメッセージ、自分への応援メッセージなどが届く!

PasYou(パスユー )|『あなただけ』に贈るビデオメッセージ
VictorySportsNews編集部

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