例年以上に待ちに待った開幕戦、1点ビハインドの7回に放った逆転2ラン。キャプテン坂本ばりにひじを抜いて打った芸術的な一打に、ついに!と思った。

だがしかし、体調万全(と思われる)で試合に出てはいたものの、“ものが違う感”はどうにも発揮されない。

あまつさえ、打率2割前後をさまよっていた7月初旬には、指揮官より「本来の姿じゃない。あれなら“悪川”くん」と呼ばれる始末。

“仁志の呪い”とまで揶揄される、巨人のセカンド問題は、今年も解決されないのかと落胆した。

■固定できていない巨人のセカンド

ゴールデングラブ賞4度の名セカンド、仁志敏久氏がチームを去って以来、一向に固定できていないとされるこのポジション。

2008年には故・木村拓也氏が103試合に出場し、2011年には藤村大介現三軍内野守備走塁コーチが規定打席不足ながら盗塁王を獲得。

2014~2015年にはFAで獲得した片岡治大現二軍内野守備走塁コーチが2年連続で100試合以上、巨人のセカンドとして出場した。

そのほか、脇谷亮太氏(2019年からスカウト)も中井大介(現横浜DeNAベイスターズ)も、クルーズもマギーだって守った。

でも、ファンに“巨人のセカンドは?”と問えば、仁志氏であり、シノさん(首位打者2回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞4回の篠塚和典氏)であるというのが共通認識である。

思えば、昨シーズンもそうだった。

2018年シーズンの8月に骨折して戦列を離れたものの、7月は打つわ打つわの18試合連続安打、月間打率.386を記録。

待ちに待った男の降臨が期待される中、2019年シーズンは1番セカンドとして開幕戦から打ちまくる。

11試合で打率.390のロケットスタートを決め、中京学院大学の先輩である菊池涼介(広島東洋カープ)ばりの華麗な守備と合わせ、G党を熱狂させた。

がしかし、4月14日に腰痛で出場選手登録を抹消されると、いつ戻るのかファンをやきもきさせたまま、ついぞ一軍の舞台に戻ることなかった。

そんな本命不在の中、2塁の守備に就いたのが、若林(晃弘)、山本(泰寛)、田中(俊太)、増田(大輝)の93年組。

1993生まれの同学年である4人は、いずれも短期的にG党を喜ばせたものの、最終的には全員が打率.240以下で着地。

降ってわいたような大チャンスを誰一人として生かすことができなかった。

■G党が希望を抱く今シーズン

そして今シーズン。練習試合で活躍した湯浅大もファームへ合流、吉川が“悪川くん”になる中、意外な伏兵が台頭する。

昨年まで1軍公式戦はノーヒット、セカンドでの出場はゼロの2017年ドラフト4位の北村拓己である。

6月21日の阪神戦でプロ初安打初打点を記録。翌6月23日に1番セカンドとして起用されると、5試合にスタメン出場し、左キラーとして打率.323、7打点と、一気に浮上する。

昨シーズンのファームで出塁率.414でタイトルを獲得した男が、広角に打ち分ける粘り強いバッティングを一軍でも披露。

思えば、今年1月のスタッフ会議にて、原監督がレギュラー候補に名前をあげていた。この時はファースト候補としてだったが、それだけのものを監督に見せていたということだろう。

そして、某若手俳優と同じ名前(漢字は違う)を持つ、目力がハンパないイケメンの出現が刺激になったのか? 同じイケメン枠を争う背番号29がいよいよ目覚める。

7月24日のヤクルト戦から3試合連続ホームランを記録。ジャイアンツのセカンドが3戦連発を放ったのは、2001年の仁志氏以来、19年ぶりのことだという。

先に上げた藤村、片岡らのパイセンもそれなりの成績は残している。ただ、シノさん、仁志氏と比べてしまうファン目線。

その高いハードルを超えられるのは、「巨人軍の歴史に名を残す二塁手になれる」と監督に予言させた吉川だと、G党は大きな希望を抱いている。

93年組、北村にももちろん期待はしているが、今後5年、10年を任せられるんじゃないか、と思わせるのは吉川しかいない(と思う)。

だから、このままケガなく、ピカイチの実力を存分に発揮してほしい。

そうでないと、今シーズン中に国内FA権取得が濃厚なトリプルスリー3度のあの男に、球団の興味がいくのはまず間違いないのだから。


※データは7/27時点


越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。