ただ、これらの募集は新型コロナウイルスの感染拡大による退会者の増加に起因しているというわけではなさそうだ。同社の会員募集中ゴルフ場一覧を見ると、100コース近いゴルフ場がラインナップされている。ゴルフ場運営大手のアコーディア・ゴルフも100コース以上で会員募集を行っている。

なぜこれほどまで多くのゴルフ場が会員募集を行っているのか。その理由は会員の高齢化が進んでおり、若いゴルファーにどんどん入会してもらわないと、近い将来、ゴルフ場の経営が成り立たなくなるからだ。

ゴルフ場関係者によると、今やほとんどのゴルフ場で会員の平均年齢は60歳を優に超えており、70歳以上のゴルフ場も少なくないという。その世代がまだ元気にゴルフをしているから何とか経営が成り立っているが、1947年~1949年生まれの団塊の世代が75歳を超えてくる2022年~2024年にはいよいよ本格的なゴルフ人口の減少が始まると見られている。

女子プロゴルフの世界では1998年度生まれの黄金世代や2000年度生まれのプラチナ世代が人気を牽引しているが、1947年~1949年生まれが1学年260万人以上いるのに対し、1998年~2000年生まれは1学年およそ120万人。人数がまったく違う。それ以前に、プロの世界で若手の活躍が目立っているだけで、同世代のアマチュアゴルファーが増えているわけではない。

ただ、昨年8月に渋野日向子がAIG全英女子オープンでメジャー制覇の快挙を達成してから、若い世代がゴルフに目を向け始めている兆候はある。新型コロナウイルスの流行により、屋内スポーツや団体スポーツがなかなか再開できない状況もゴルフにとって追い風になっている。

しかしながら、ゴルフは昔ほどお金がかからなくなったというものの、今でも1ラウンド18ホールをプレーするのに平日で5000円~1万円、土日だと1万2000円~2万円ほどのプレー代がかかる。また、多くのゴルフ場は電車では行けない場所にあるので、車で行く必要がある。そう考えると、若い世代には敷居の高いスポーツである。

一方で、つい最近まで日本の個人金融資産の6割以上を60歳以上が保有していると言われていたが、年功序列や終身雇用の見直し、副業の解禁などにより、若い世代が今までよりもお金を稼げる選択肢が格段に増えた気がする。ビジネスの世界でも、若者が大企業に入社して出世を目指すのではなく、新しいビジネスを生み出して起業するケースが目立つようになってきた。

また、今や大人気職業のユーチューバーも若者が人気を牽引しており、億単位の収入を得ている人もいるという。それと同時に、ゴルフを題材にしたYouTubeチャンネルが続々と開設されたことで、若者がゴルフに触れる機会は格段に増えている。

■ゴルフが上手くなるには

ただ、YouTubeチャンネルを見てゴルフを始めた人が、YouTubeチャンネルの教えでゴルフがうまくなるかというと、それだけでは上達は見込めないだろう。その理由はいくつかあるが、まずゴルフは見たとおりのスイングの動きができないから大勢の人が悩んでいること。そして練習で上手に打てるようになっても、ゴルフ場に行くと上手に打てなくなるのがゴルフの難しさであり面白さでもあるからだ。

ゴルフを始めようと思う人であれば、誰かしらのプロゴルファーのスイングを見たことがあり、そのスイングを参考にクラブを振り始める。ところが、そのスイングを動画で見ると、プロのスイングとはまったく似ても似つかない別の動きになっている。自分の歌声を録音して聞くと、別人が歌っているように感じるのと一緒の感覚かもしれない。

YouTubeチャンネルに出演しているアマチュアゴルファーの不格好なスイングが、日を追うごとにまともなスイングになっていくのは、その場で実際に体の動かし方などを教わっているからだ。それを見ているだけでは、うまくなった気になっても、実際にうまくなるわけではない。

さらに、体の動かし方がある程度わかるようになっても、ゴルフ場に行くとその動きができなくなる。池やバンカー、OB杭や林が目に入ると、途端におかしな動きになってしまうのがゴルフというスポーツなのである。

そう考えると、ゴルフの上達に最も近道なのは、YouTubeチャンネルを見ることでもなく、練習場で上手に打てるようになることでもなく、まずはゴルフ場でのプレーを体験し、そこで上手にプレーでするためには何が必要かを自分で考えることである。

ゴルフが上手な人に話を聞くと、ゴルフ場の会員になってから一気に上達したというケースがけっこう多い。それは会員になってラウンド回数が増え、経験値がアップしたことが上達の大きな要因だろうが、同じコースに何度も通うことで設計者の意図を理解し、同じホールでもピン位置によって攻め方が変わることを知り、ゴルフの本質が理解できるようになるという側面もありそうだ。

ゴルフを始めるのであれば、まず練習場に行ったりレッスンに通ったりして上手に打てるようになってからコースデビューというのが一般的な流れだが、止まっているボールを打つのが実際には非常に難しい。上手に打てるようにならないまま、コースデビューの前にやめてしまう人がたくさんいる。それであれば、初期投資としてゴルフ場の会員権を購入し、そこから必要な技術や経験を身につけていくというのも一つの方法だ。今は大衆コースであれば20万円~30万円程度で会員権が買える。

トーナメント会場だけでなく、通常営業のゴルフ場にも若い世代がたくさん訪れるようになれば、日本のゴルフが新しいステージに向かうような気がする。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。