女子ツアーは6月の「アース・モンダミンカップ」(6月25日~6月28日、千葉県・カメリアヒルズカントリークラブ)が今季初戦となり、8月の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」(8月14日~8月16日、長野県・軽井沢72ゴルフ北コース)が2戦目として開催された。
その後は先週末に開催された「ニトリレディスゴルフトーナメント」(8月27日~8月30日、北海道・小樽カントリー倶楽部)から「デサントレディース東海クラシック」(9月18日~9月20日、愛知県・新南愛知カントリークラブ美浜コース)まで4連戦が組まれており、これらの試合が無事に開催されればツアー再開の見通しがつきそうだ。
ただ、「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」と「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」の2試合はすでに中止が発表されており、残りの試合がすべて行われても37試合中14試合の開催にとどまる。そのため、女子ツアーは2020年シーズンと2021年シーズンを合わせて一つのシーズンとする開催方式に変更することを決定している。これは男子ツアーも同じだ。
試合数がこれだけ減ると、経済的にかなり厳しい状況に追い込まれる選手もいるだろう。試合が中止になった代わりに、賞金つきのチャリティーマッチを開催する流れもあるが、声がかかるのは知名度の高い選手が中心だ。知名度の低い選手は賞金を稼ぐ方法がない。
そもそもプロゴルファーは賞金をいくら稼げば黒字になるのだろうか。翌年の出場権を獲得できるシード権ということで言えば、男子が賞金ランキング65位、女子が賞金ランキング50位。シード権のボーダーラインの選手がいくら稼いでいるかというと、男子の2019年賞金ランキング65位が1256万4132円、女子の2019年賞金ランキング50位が2401万6500円だ。女子のシード選手のほうが2倍近く稼いでいる。もっとも、男子と女子でランキングの順位が違うので、公平を期すために男子の賞金ランキング50位を見ると、1708万8775円となっている。
■賞金以外の収支は
この金額だけを見ると、プロゴルファーはやっぱり稼げる職業だと思うかもしれないが、プロゴルファーは試合に出場すること自体にお金を払っていたり、練習ラウンドにもお金を払っていたりする。試合会場に行く交通費も、試合に出場するための宿泊代も、キャディを雇うのも基本的に自腹だ。1試合に出場するのにだいたい20~30万円の経費がかかるという。
一部の選手は航空会社のサポートを受けたり、自動車メーカーや自動車販売店、レンタカー会社やビジネスホテルチェーンのサポートを受けたりしているが、そういった待遇は露出が多い選手=賞金が稼げる選手に限られる。金があるところに金が集まるのはプロゴルフの世界も一般社会も同じかもしれない。
仮に1試合の経費が20万円だとすると、男子ツアーの昨シーズン全25試合に出場するのに500万円、女子ツアーの昨シーズン全39試合に出場するのに780万円の経費がかかる。実際には男女ツアーとも最終戦は賞金ランキング上位選手しか出場できないので、あくまでもたとえ話だが、男子ツアーで500万円以上稼いでいるのは賞金ランキング97位、女子ツアーで780万円以上稼いでいるのは賞金ランキング91位となる。
しかしながら、賞金以外のスポンサー収入を含めると、今は完全に“男低女高”だ。男子は一部の有名選手にしかスポンサーがつかないが、女子はプロテストに合格したり、ツアーの出場権をかけたクオリファイングトーナメント(QT)で上位に入ったりすると、それだけでスポンサーが集まる。
昨年の女子プロテストに合格し、QTランキング2位に入った安田祐香は、今年2月にNECと所属契約を締結。用具契約は住友ゴム工業、アパレル契約はルコックスポルティフ、この他にもコーセー、内宮運輸機工、小野東洋ゴルフ倶楽部などとスポンサー契約している。これだけの契約があれば極端な話、獲得賞金ゼロでも黒字になる。
一方、男子でそんなに景気のいい話は聞かない。そもそもプロテストの主催者(日本プロゴルフ協会)とツアーの出場権を管轄する組織(日本ゴルフツアー機構)が異なるし、その結果に注目しているスポンサーもそんなにいない。映画のタイトルではないが「男はつらいよ」というのが現状だ。
ただ、女子ツアーも恵まれた時代がずっと続いてきたわけではない。10年前(2009年)の賞金ランキング50位は1482万7500円、20年前(1999年)の賞金ランキング50位は1064万円だった。男子ツアーもここから若い選手たちの頑張りで、できるだけ多くの選手が賞金で黒字を出せるように盛り上げてほしいところだ。