腸内環境から自律神経を整える定食が完成

―今回横田プロが監修した、「長生きみそ汁定食」はどのようなメニューなのでしょうか。

横田プロ「自律神経研究の権威である小林弘幸医師(順天堂大学医学部教授)が考案した、赤みそと白みそ、玉ねぎとりんご酢を組み合わせたみそで作る、『長生きみそ汁』がベースになっています。そこに、血糖値を急上昇させない炭水化物である玄米や、ぬか漬、納豆といった発酵食品、動物性たんぱく質にはじゃこやいわしなどの魚介類を合わせました」


 長生きみそ汁定食の昼食メニュー。じゃこと大根おろし、しいたけと里芋の煮物、納豆やぬか漬け、寝かせ玄米など、食物繊維が豊富で、消化に優しいラインナップ。

ー自律神経とゴルフのパフォーマンスにはどのような関係があるのでしょうか。

横田プロ「自律神経は、プレーの集中力に大きく影響します。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、シーソーのようにバランスを取っています。このバランスが崩れると、集中力の低下や、だるさにつながりやすく、ベストパフォーマンスを発揮しにくい状態になってしまうんです」

ー自律神経の安定を目的に考えられたメニューなんですね。

横田プロ「自律神経のコントロールには、腸内環境が深く関わっているということが最近の研究でもわかってきています。消化に悪いものや添加物が含まれるものを食べると、腸内環境が荒れ、自律神経のコンディションを下げてしまう。また、血糖値の上昇も、自律神経の働きを見出し、集中力を乱します。消化にやさしいこと、血糖値を急上昇させないこと、良質な脂質を含むたんぱく質がとれることがポイントです」

飛距離の秘訣はリラックス。データで証明

ー横田プロは「プロゴルファーにおける自律神経とパフォーマンスの関係」というテーマで修士論文を発表されています。このテーマに興味をもったきっかけはなんだったのでしょうか。

横田プロ「1997年の全日空オープン以来、ツアー優勝から遠ざかっていた頃、長生きみそ汁の考案者の小林弘幸医師に“自律神経を整えればもう一度優勝できるよ”と言われたんです。それから小林先生に指導してもらい、実際に2010年のキヤノンオープンで優勝できた。もっと勉強したいと思い、2011年から4年間研究を始めました」

ー研究過程では、松山英樹選手や石川遼選手の自律神経も計測したそうですが、結果を出すゴルファーにはどのような特徴がありましたか?

横田プロ「意外なようですが、結果を出す選手に共通しているのは、副交感神経を優位に使えていること。つまり、適度にリラックスした状態をつくりだすのが上手だということです。松山英樹選手、石川遼選手の二人はどちらも副交感神経の値が高かったのが印象的でした。

 交感神経が優位になりすぎると、末梢の血管が収縮し、脳への血流も弱くなります。動悸も起こり、集中力や判断力も鈍ってしまうんです」

―試合中は交感神経がよく働いている方がいいイメージがありましたか?

横田プロ「交感神経を、ここぞというときのために“温存する”という考え方がわかりやすいかもしれないですね。たとえば1日中スマホやパソコン画面を見ているような人は、交感神経がずっと働き続けてへとへとな状態です。その状態で急に集中力を高めようとしても、すぐには作用してくれないんです」

ーちゃんとリラックスできる選手が、一瞬の集中力を発揮できるということですね。

横田プロ「たとえば石川遼選手は、打順が回ってきて、キャディバッグを地面に置いた瞬間から交感神経がゆっくりと優位になっていきます。状況を見て、どのクラブで打つか、どう打つかを考えている間は交感神経が高い状態。その判断がついたくらいのタイミングで、交感神経がすっと下がり、今度は副交感神経が優位になっていくタイミングでクラブを振ります。ほどよく力が抜け、集中力の高まっている状態を自然と生み出していたんです。

 修士論文では57人のプロゴルファーから統計を取り、飛距離を出すには交感神経と副交感神経を足したトータルパワー、いわゆる自律神経が活発で元気な状態であることが大切。そしてスコアには両方のバランスが必要ということがわかりました」

できるゴルファーは腹6分目。前日の準備から勝負が決まる

ーゴルフのパフォーマンスアップのための、食事のアドバイスをいただけますか?

横田プロ「まずゴルフに行く前日の暴飲暴食は控えましょう。特に、暴食は絶対NG。体は消化するだけでかなりの体力を使うので、次の日は体が重くなってしまうはず。6分目くらいで箸を止めてください」

―朝はゴルフ場に向かうコンビニで済ますという人も多いと思いますが、どんなチョイスをしたらいいですか?

横田プロ「あまり消化に負担をかけないような、コールドプレスジュースがおすすめですね。白米のおにぎりは血糖値を上昇させてしまうので、食べ過ぎないように。一度にエネルギーを取ろうとするのではなく、コースを回りながらちょこちょこと栄養補給ができるとベストです。たとえば、エネルギーと一緒にたんぱく質も取れるようなナッツバーは、噛みごたえもあるので血流が促進されて集中力も増します。

 ちなみに、ゴルフ場に向かう道中ではあまり頭を使いすぎないことも大切です。交感神経が優位になってしまい、コースを回る前に疲れてしまいます。当日に考えることを極力減らすためにも、当日の持ち物や使うクラブは前日に準備し、バタバタと家を出ることのないようにしましょう」

―ゴルフテクニックの面でのアドバイスはありますか?

横田プロ「自分がしっくりくる方法を大切にすることです。一番やってはいけないことは、誰かのアドバイスに固執してしまうことです」


 自律神経を意識してからのプロ生活では、ゴルフ場での食事に悩むことも多かったという横田プロ。ゴルファーのパフォーマンスアップを食事でサポートしたいという思いが、鎌倉パブリックゴルフ場とのコラボレーションメニューにつながった。横田プロの知識を借りれば、ライバルを前日に食事に誘い、腹いっぱい食べさせるという“逆兵糧攻め”も可能。しかし、考えすぎもパフォーマンス低下につながるため、一打に集中するためのリラックス方法を見つける方が効果的かもしれない。

鎌倉パブリックゴルフ場
小田菜南子

著者プロフィール 小田菜南子