ダントツ

 今回の調査は、各種データを扱うカナダの会社「ビジュアル・キャピタリスト」によって実施され、ツイッター、インスタグラム、フェイスブック、ユーチューブなど主要ソーシャルメディアのフォロワー数を、今年4月時点で個人別に集計したものだ。ロナルドはインスタグラムで約2億7500万、フェイスブックは約1億4900万でともに1位だったほか、ツイッターが約9200万、ユーチューブは174万と驚異的な数字。合計5億1700万人に上った。

 2位はカナダ出身の歌手、ジャスティン・ビーバーで4億5500万。ロナルドは後続に6000万余りもの差をつけてダントツのトップだった。3位はアリアナ・グランデで4億2900万、4位がセレーナ・ゴメスの4億2500万、5位にテイラー・スウィフトの3億6100万と米人気歌手が続き、6位が俳優のドウェイン・ジョンソンで3億4200万となった。ちなみに、サッカーのリオネル・メッシ(アルゼンチン)は2億9800万で11位、元米大統領のバラク・オバマ氏が2億2100万で19位にランクインしている。

【参考】ソーシャルメディアのフォロワー数トップ5

1投稿9700万円

 知名度のある芸能関係のセレブたちを抑えたロナルド。サッカーは世界最大規模のスポーツとはいえ、ただ一人の5億人以上と突出している。歴代でも屈指のストライカーであるのは間違いない。その上でなぜロナルドが1位なのか。2016年欧州選手権優勝や欧州チャンピオンズリーグ制覇などファンを魅了してきたプレー以外でも、世界中で好印象が定着していることが挙げられる。

 ソーシャルメディア上では試合でのワンカットやトレーニング風景はもちろん、見事な腹筋に象徴される肉体美を惜しげもなく披露したり、家族とのほほえましい集合写真をアップしたり。昨年亡くなったサッカー界のレジェンド、ディエゴ・マラドーナさんとの2ショット写真をアップしたツイートでは55万6千件の「いいね」が集まった。また、スポンサーの商品を紹介するほか、自ら香水やアンダーウエアをプロデュースするなどファッションへの関心も高く、華麗な出で立ちで注目を浴び続けている。

 英国のマーケット調査では、ロナルドによるインスタグラムへの1投稿当たりの価値が88万9000ドル(約9700万円)と算出されており、ソーシャルメディア関連の利益も破格と推察される。2018年にスペインのレアル・マドリードからイタリア1部リーグ、セリエAのユベントスに4年契約で移った際の移籍金は、1億ユーロ(約134億円)だったが、ピッチ外での存在感も右肩上がりの様相を呈している。

ボイコット

 ソーシャルメディアは情報の速報性などメリットが多い半面、看過しがたいデメリットもある。例えば匿名性が高いゆえにコメントが過激になる傾向があり、攻撃的な言葉の投稿も少なくない。受け取った側が自殺に追い込まれるなど社会問題化している。スポーツ界も例外ではなく、海外では見逃せない動きがあった。

 サッカーで一時代を築いた元フランス代表のティエリ・アンリ氏が3月下旬、フェイスブックなど自身のソーシャルメディアのアカウントを閉鎖すると発表。各プラットフォームの運営側に対し、人種差別や誹謗中傷の投稿への厳しい対処を求めた。現役時代にスピードあふれるストライカーだったアンリ氏は1998年に自国でのワールドカップ制覇に貢献し、クラブではアーセナル(イングランド)などで活躍した。その傍らで人種差別的な言葉を受けて苦しんできたという。フェイスブックなどで計1500万のフォロワーを抱えていたが、米メディアに対し「ソーシャルメディアの中は決して安全な場所ではありません。私の行動が他の人たちの刺激になればうれしい」と説明した。

 これに呼応するような措置が、英国のスポーツ団体を中心に講じられた。イングランドのサッカー協会やプレミアリーグに加え、欧州サッカー連盟、国際テニス連盟などが4月30日から5月3日まで、ソーシャルメディアを一時的に休止すると公表。自動車のF1シリーズで7度の総合優勝を誇るルイス・ハミルトン(英国)もボイコットに賛同し「オンライン上かどうかに関係なく、この世に差別があってはならない」とツイートした。本来なら情報発信のために大事なツールとなるソーシャルメディア。一時的ではあれ、自分たちの手で断ち切る決断をした点に、問題の深刻さが表れている。

インフルエンサー

 ソーシャルメディアの特徴について、興味深い研究結果が津田大介氏の著した「情報戦争を生き抜く」に掲載されている。同書によると、2017年に公開された海外での実験により、ソーシャルメディアでシェアされて伝わる記事の信頼度は、そのニュースの発信元よりも、誰の手によってシェアされたのかという点を重視されていることが判明した。それゆえ、より多くのフォロワーが付いていると、ますます影響力が増していくことが予想される。

 ロナルドが愛される理由は、サッカーの練習や筋力トレーニング、食生活などさまざまな局面において長い年月をかけて努力を積み重ね、秀でたパフォーマンスや憧れられるキャラクターが浸透していることが根底にある。国境や言語の違いを超え、SNS上での世界一のインフルエンサーだ。そんな華やかな部分とは対照的に、ファンとのつながりを遮断してまで運営会社に抗議する一団も出現。スポーツとソーシャルメディアの在り方を考える上で、分断することなくより良い関係を築くためには、このタイミングを逃さずに実効的な対策を構築していくことが必要だ。

クリスティアノ・ロナルドのインスタグラムより
高村収

著者プロフィール 高村収

1973年生まれ。1996年から共同通信のスポーツ記者として、大相撲やゴルフ、五輪競技などを中心に取材。2015年にデスクとなり、より幅広くスポーツ報道に従事