―経営者になって5年間が経ちますが、どんな手応えを感じていますか?

「思った以上に大変だなというのが、正直な感想です。一般的に起業する方は、会社勤めの経験があると思うのですが、僕の場合まったくの未経験。だから会社というものがどういうふうに成り立っているのかということすらよくわからなかったんです。利益やコストをどう計算するのか、社員の労働管理をどうすればいいのか、コミュニケーションはどんな形式がいちばん効率的なのか。そういうひとつひとつを人に教えてもらい、試行錯誤しながらやってきました。5年経ってようやく理想の組織の半分くらいができたという感覚です」

―いろいろな苦労があったと思いますが、なかでもいちばん大変だったのは?

「やっぱりコミュニケーションですね。人が増えれば増えるほど難しくなる。5年やってわかったのは、仕事上のミスは、ほとんどコミュニケーションの欠如から発生するということ。個人のミスはそれほど多くないし、あったとしても大したことはないんです。でもコミュニケーション不足でうまれたミスは、大きな問題になりがち。それぞれの考え方、動き方がきちんとシェアされていれば、時間のロスもないし、ミスも減る。サッカーチームと同じです。しっかりとコミュニケーションがとれていて、みんなの意思が統一されていれば、細かい指示を出さなくても勝利につながる。理想は、経営者である自分がなにもしなくても動く組織を作ることです」

―コロナ禍の状況では、コミュニケーションも難しいのではないでしょうか。

「リアルなコミュニケーションは、どうしても減ります。それは社員だけでなく、取引先である日本酒の蔵元や工芸作家との関係も同じです。そのぶんをどうやってITで補えるか。今はそこを考えて、情報共有システムを構築しているところです。“なんとなく”、個人の思い込みや勘で物事を進めるのではなく、情報を共有した上で効率的に進める。特に僕が付き合いのある業界は、ITへの取り組みが遅れている。そこを改善することでより大きなビジネスチャンスにつながると信じています」

―情報を得て、正しく分析し、動くことが重要になりますね。

「その通りです。今はどんなスポーツでも対戦チームの情報を細かく分析してゲームプランを決めるじゃないですか。自分たちだけで一生懸命練習していても、相手にどんな選手がいて、どんな戦い方をしてくるかを知らなければ、勝つ確率は低くなる。今回、情報銀行サービス『Dprime』のアンバサダーになったのも、そういったデータをより多く得ることがやりたいことをやるための近道だと考えたからです。企業としては精度の高いデータでビジネスを考えやすくなるし、個人はデータを自分で選んだ企業に提供することで、メリットを獲得できる。新しいチャレンジだし、大きな可能性を感じました」

―中田さんの場合、データよりも自分自身のアイデアを信じるのではないかと思っていました。

「もちろんなにかを始めるときにはアイデアが必要です。でもそのアイデアが生まれるのもデータがあるから。データを見てアイデアが生まれるし、そのアイデアをデータが補強してくれる。アイデアだけで物事を進めることはありません」

―コロナ禍を経て、時代はどのように変わっていくと思いますか?

「このコロナ禍で起きていること、たとえばリモートワークにしても、リアルからオンラインへの移行にしても、ある程度予想されていました。それがコロナによって、5年10年早まった。だから驚きはありません。ただこれまで以上にスピーディな対応が求められる。でもそのなかで僕が大切にしたいのは、ITが進めば進むほど、リアルを求める気持ちも強くなるということ。オンラインでのコミュニケーション、オンラインでの体験は、決してリアルとイコールではない。だからこそリアルの体験の価値がより高まっていくと思っています。やっぱり美味しい酒は呑まなきゃわからないし、旅のよろこびは、その地に立つことでしか生まれない。オンラインに本物の感動、本物のしあわせはない。便利で楽だからといって、それだけで満足は得られない。ITを駆使して色々なことを効率化できたら、それでうまれた時間をリアルに使う。みんながそういうふうに考える時代は、すぐそこまで来ていると考えています」


 状況を的確にとらえ、最短距離を全速力で走り続ける。フィールドが変わっても中田のそんな姿勢は変わることがない。常に挑戦し続ける彼からは、やはり目を離すことができない。

【動画】「Dprime」スペシャル対談-情報銀行サービスとは-

VictorySportsNews編集部