2019年11月「大王製紙エリエールレディスオープン」のツアー4勝目から2021年10月「スタンレーレディスゴルフトーナメント」のツアー5勝目までの間に渋野にどんなことが起こったかというと、最初に直面したのは新型コロナウイルスの世界的流行によるゴルフツアーの中断だった。

タフなスケジュールとなった2020年

渋野は2020年のシーズン初戦を2月にタイで開催される米国女子ツアー「ホンダLPGAツアータイランド」で迎える予定だった。その翌週にはシンガポールで「HSBC女子チャンピオンズ」に参戦し、日本女子ツアーの開幕戦「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」に乗り込むスケジュールを組んでいた。

ところが新型コロナウイルスの感染拡大によりタイとシンガポールの2試合は中止になり、国内ツアーも3月の開幕戦から6月の「ニチレイレディス」まで16試合が中止となった。

2019年の「AIG全英女子オープン」で海外メジャー制覇の快挙を成し遂げた渋野は、2020年シーズンは海外メジャー全5試合に出場する資格を持っていた。4月の「ANAインスピレーション」(米国開催)、6月の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」(米国開催)と「全米女子オープン」(米国開催)、8月の「エビアン選手権」(フランス開催)と「AIG女子オープン(2020年から大会名称変更)」(スコットランド開催)のすべてに出場する予定だったが、米国開催の3試合は延期となり、「エビアン選手権」は中止になったため、スケジュールの大幅な変更を余儀なくされた。結果的に2020年の初戦は6月の「アース・モンダミンカップ」になったが、決勝ラウンド進出に1打及ばず予選落ちとなった。

その後、渋野は「AIG女子オープン」に出場するため8月に渡欧。前哨戦の「ASIスコットランド女子オープン」と翌週の「AIG女子オープン」に出場したが、2週連続で予選落ちを喫した。

スコットランドでの2戦を終えた後は、そのまま渡米して9月に延期された「ANAインスピレーション」と「キャンビア ポートランドクラシック」に出場。10月も米国に滞在し、「ショップライトLPGAクラシック by Acer」と「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の2連戦に挑んだ。上位に入ることはできなかったが、4戦連続で予選を通過した。

米国での4試合を終えた後、渋野は日本に一時帰国し、「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」から「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」まで5試合に出場。帰国初戦こそ予選落ちしたものの、2戦目以降はコンスタントに予選を通過し、「大王製紙エリエールレディスオープン」5位、「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」3位タイと2試合連続でトップ5フィニッシュを果たした。

そこから再渡米し、12月に延期となった「全米女子オープン」に出場。3日目終了時点で単独首位に立ち、海外メジャー2勝目の期待が高まったが、最終日はスコアを落として4位に終わった。

結局、2020年は国内6試合、海外7試合の計13試合に出場して未勝利に終わったが、参戦スケジュールを振り返ると勝てなかったのは仕方がないと感じるタフな1年だった。

一貫して続けたフィジカルトレーニング

2021年に入って渋野が周囲を驚かせたのは、アマチュア時代から師事してきた青木翔コーチとの契約解消と、スイングの大改造だった。前年と比べてトップが明らかにコンパクトになった。ただ、方向性は安定したものの飛距離が落ちていたため、一部のメディアから新しいスイングを疑問視する声も上がった。

渋野は開幕から4試合を13位タイ、57位タイ、11位タイ、15位タイという成績で終えると、3カ月に及ぶ海外遠征に出発。4月に米国で2試合に出場した後、4月下旬から5月上旬にかけてシンガポールとタイで連戦。その後は再渡米し、3試合を戦った。

7月に一時帰国し、日本で3試合に出場した後、8月は「AIG女子オープン」に出場するためスコットランドへ。そして9月第2週の「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」から再び日本ツアーに参戦し、5試合目で復活優勝をつかみ取った。

ここまでのスケジュールを見ても分かるように、渋野が日本の試合に出場したのは、2020年は6試合のみで、2021年の前半戦も7試合のみ。勝利を挙げたのは1年11カ月ぶりだったが、日本の試合だけでカウントすると19試合ぶりとなる。実はそんなに大きなブランクではなかったという見方もできる。

ただ、2020年から2021年にかけてスケジュールの大幅な変更を余儀なくされ、コーチとの契約を解消し、スイングも大きく変えた渋野が一貫して続けていたのが2020年から専属トレーナーになった斎藤大介氏とのフィジカルトレーニングだ。

海外ツアー参戦中もビデオ通話を利用してトレーニング指導を受け、新しいスイングをコントロールできる肉体を作り上げていった。筋肉を大きくするというよりも体のつながりを強化して最大出力を上げるトレーニングを積み重ねてきた結果、飛距離不足が心配されていた新スイングは以前に勝るとも劣らない長距離砲に進化し、強力な武器となった。

今後は国内最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」を欠場し、米国女子ツアーの最終予選会に出場することを表明している渋野。12月2~5日と9~12日の2週にわたって開催される予選会で上位に入ると2022年は米国を拠点に戦うことになる。飛距離と精度を兼ね備えたショットで、今シーズンの大谷翔平のように海の向こうで大暴れしてほしいところだ。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。