もちろん現実は異なり、昨年は悪夢の大失速でシリーズが始まる前に終戦。アジア王者まで駆け上がった2012年以来、もう10年も日本一から遠ざかっている。

とにもかくにもの大目標達成のため、お花畑な希望的憶測はおいといて、ジャイアンツファンとして今シーズンのジャイアンツに期待することをしたためてみた。

●期待すること その1~菅野だけに頼らない先発ローテの柱の出現

菅野がいるから、がいつまでも続かないと教えられた昨シーズン。シーズン最終盤こそ意地を見せてくれたものの32歳のエース・菅野智之に代わる、もしくは並ぶ柱の出現に期待したい。後半尻すぼみに終わった戸郷翔征、髙橋優貴の成長はもちろん、いい時は安心してみていられるメルセデス、マイコラス二世として期待の新外国人・アンドリースに加え、ブルペンに回っている畠世周や中川皓太、昨シーズンは10先発に終わった今村信貴も含めて期待。


●期待すること その2~山崎、堀田ら若手ピッチャーの台頭

戸郷、髙橋以外で昨シーズンの1軍戦力となったのは、大江竜聖くらいだった若手ピッチャー。2020年シーズンと顔ぶれはほぼ同じで、新戦力の突き上げがなかった。2021年ドラフト加入組の大勢、山田龍聖、赤星優志に、2020年ドラ1&ドラ2の平内龍太、山崎伊織、高卒3~4年目の直江大輔、横川凱、堀田賢慎あたりから、最低でも2人、できればそれ以上のメンツが台頭してくれないと、チーム防御率がリーグ4位の投手陣はさらに厳しくなる。


●期待すること その3~岡本を守る5・6番の存在

2年連続2冠王の岡本和真のあとを打つ、5・6番が確立できなかったこの2年。現状は新外国人のポランコ&打点王3度の中田翔が予想されるが、この2人がウォーカーやウィーラー、中島宏之、北村拓己、大城卓三、香月一也らになってももちろん構わない。とにかくここが定まれば、得点力は大きく上がるはずなので、主砲を守る2人が定まることに期待したい。


●期待すること その4~“サカマルオカ”につなぐ切り込み隊長の出現

当初予定した梶谷隆幸の故障離脱もあり、松原聖弥が最も多く務めた昨シーズンの切り込み隊長役。ただ出塁率は.333、盗塁数15(失敗7)と物足りず、15試合でトップバッターを担った吉川尚輝も出塁率.313、盗塁数7(失敗0)と大きく不足。2人の成長やケガから復帰する梶谷も含め、高い出塁率と盗塁数を兼ね備えた1番バッターの出現に期待したい。


●期待すること その5~結局定まらないセカンド問題の決着

2020年シーズンで規定打席に達した吉川が納まったかと思えた二塁レギュラーの座。しかし吉川がそのポテンシャルを発揮し切れず、まだ結論は出ていない。対左ピッチャーに強さを見せた廣岡大志、13打席のみながら打率.385の湯浅大、セカンドもそつなくこなす北村、ファームで3割を記録する平間隼人もいる。ショートを狙っている中山礼都の二塁争い参戦も含め、新レギュラーが確立されるのか注目したい。


●期待すること その6~強い正捕手の登場

昨シーズンは95試合でスタメンマスクをかぶった大城に、全試合任せられる正捕手に成長してほしい。ライバルの小林誠司は2年連続の打率1割未満に終わり、台頭が待たれる岸田行倫もいまだつぼみのまま。ともにリーグ1位の盗塁阻止率.447、守備率.999に輝き、野球データ専門会社「DELTA」が発表した守備力のみを評価するアワードでは、捕手部門総合1位となった大城に、ヤクルト日本一の立役者・中村悠平を超える存在になってもらいたい。


●期待すること その7~スペシャリストの覚醒

昨シーズンはチーム盗塁数が65個と、リーグトップで114個のタイガースの半分程度だったジャイアンツ。かつての鈴木尚広さんのような足のスペシャリストの覚醒に期待したい。増田大輝が2020年シーズン前半の輝きを取り戻すか、もうあとがない重信慎之介や、湯浅、平間らの台頭、もしくは育成1位入団の鈴木大和の下剋上にも注目。亀井義行(現コーチ)に代わる代打の切り札、ここぞの場面で代打バントができる存在もいてほしい。


●期待すること その8~次の主力を担う若手野手の第一歩

ジャイアンツファンが大きな期待を寄せていた山下航汰がまさかの退団となったが、2002年生まれの2人の19歳に期待したい。山下と同じく高卒1年目のファームで打率3割を記録した中山、圧倒的なスケール感でゴジラ2世の期待がかかる秋広優人の2人には、二遊間に何かあった時のバックアッパー、長打が打てる左の代打として、なんとか開幕ベンチ入りを果たして、飛躍への第一歩を刻んでほしい。


●期待すること その9~ベンチが一体となった不屈の集団

2022年シーズンのチームスローガンは「不屈~GIANTS EVOLUTION~」。V逸に終わった昨シーズンの悔しさをバネに、困難に負けない心で戦うチームとなることに期待したい。10連敗を食らった昨シーズンの終盤は、目を充血させっぱなしだった原辰徳監督以下、画面に映るベンチのムードは最悪に見えた。元木大介ヘッド兼オフェンスチーフコーチ、阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチらがけん引する不屈の集団になってほしい。


●期待すること その10~10年ぶりの日本一奪還

なんといっても、これ。リーグ優勝は2019・2020年とあったが、悪夢の日本シリーズ4タテで最悪の記憶に書き換えられた。やはり最後に勝ってシーズンを終わらせないと、のちに気持ちよく振り返ることができない。3勝2敗で迎えた第6戦で、阿部のタイムリーで勝ち越し、マシソンから山口鉄也(現投手コーチ)のリレーで振り切った2012年の日本シリーズ。もうだいぶ薄れてきたあの歓喜の記憶を10年ぶりに更新し、くっきり鮮明なものに書き換えたい。



結果、期待することの1~9が1つも叶わなくても、10だけ叶えばOK。ではあるものの、今シーズンは今後5年の分水嶺な気もしていて、歯車が狂った場合、向こう数年間苦難の時代が続く気も。ジャイアンツファンとして、今後もハッピーに野球観戦するために、10プラス1~9の半分くらいは達成してほしいものです。


越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。