・2021年11月-セレクトショップ運営大手の「ユナイテッドアローズ」がオリジナルのゴルフウェアを軸とした新レーベル「ユナイテッドアローズ ゴルフ」の展開を開始。

・2022年春-メンズゴルフアパレルを10年以上前から展開してきた「オークリー」が女子プロゴルファーの安田祐香とのアパレルに関するサポート契約を締結。今秋からウィメンズゴルフラインを立ち上げることを発表。

・2022年春-米国ニューヨークで2009年にブランドスタートした「サタデーズニューヨークシティ」が初のゴルフラインとなる「サタデーズゴルフ」を発売。

・2022年春夏-アパレル大手TSIホールディングスの主力ブランド「ナノ・ユニバース」からゴルフ初心者でも気軽に着ることができるゴルフウェアブランド「ビーツ・パー・ミニット」がデビュー。

・2022年春夏-女性に絶大な人気を誇るガールズファッションブランド「セシルマクビー」がゴルフライン「セシルマクビー グリーン」の発売を開始。


 また、著名人をアイコンにしたゴルフアパレルブランドを新設する動きも目立つ。

 オリエンタルラジオの藤森慎吾がプロデューサーを務めるゴルフウェアブランド「IRISHMAN(アイリッシュマン)」は、3月25日に公式サイトで春のゴルフウェアの定番アイテムであるポロシャツのメンズ/レディースを2パターンずつリリース。

 ファッションモデルとして活躍しながら商品プロデュースなども手がけるMAGGY(マギー)は、サスティナブルファッションブランド「WRINN(リン)」とコラボレーションしたゴルフウェアライン「MAGGY×WRINN GOLF」 を4月末からオフィシャルウェブサイト内で発売開始。

 なぜアパレルブランドの新規参入が相次いでいるかというと、新型コロナウイルスの流行によって屋外の開放的なフィールドで楽しめるゴルフが世界的なブームになっているからである。

 2020年下半期から若者の間でゴルフブームが起こり、2021年に勢いが加速した。2022年もコロナ禍が続く限りブームは続くだろうし、彼らがゴルフに定着すればコロナが収束しても人気は継続するはずだ。その動きを見越してアパレルブランドが続々とゴルフ市場に乗り込んでいる。

“ダサい”と考えられていたゴルフウェア。競技人気の加速とともに市場に変化が

 1990年代後半までアパレルブランドはゴルフに見向きもしなかった。競技人口の圧倒的多数が男性で、ポロシャツにスラックスといったトラディショナルなウェアでプレーするのが一般的であったため、ゴルフウェアはダサく、ゴルフウェアを作ることもダサイと彼らは考えていた。

 2011年に「ビームスゴルフ」をスタートさせたセレクトショップ運営大手「ビームス」創業者の設楽洋氏は以前こんなことを話していた。

「僕がゴルフを始めたとき着たいウェアがなかったから、ビームスでゴルフウェアを作ろうと提案したら、若い社員から猛反対されました。『ビームスはゴルフウェアなんて作る会社じゃないでしょ』と。でも、反対していた社員が年齢を重ねてゴルフを始めるようになり、『ゴルフウェアを作りましょう』という声が出てきて、ようやく『ビームスゴルフ』をスタートさせることができました」

 米国では1996年にタイガー・ウッズがセンセーショナルなデビューを果たし、ゴルフのイメージが変わり始めたが、そのときに主導権を握っていたのはスポーツブランドだった。

 ナイキはウッズと共同で新しいゴルフウェアを次々と開発し、ファッショナブルでスタイリッシュなイメージを作り上げていった。ただ、それはスポーツウェアとしてファッショナブルというだけの話であり、アパレルブランドの人たちがオシャレと認めたわけではなかった。

 しかし、そこからもゴルフは右肩上がりで発展を続けていく。米国での盛り上がりから数年後、日本でも2003年の宮里藍のアマチュア優勝をきっかけに女子ゴルフブームが起こり、2007年の石川遼のアマチュア優勝でゴルフ人気が加速した。

 2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災で一時期はゴルフ離れが起こったが、米国ではウッズに憧れてゴルフを始めた若い世代がツアーで台頭。2013年に実施したツアースケジュール改革(毎年1月に開幕していたシーズンを10月開幕→翌秋終了に変更)も成功し、優勝賞金と賞金総額がうなぎ上りに増えていった。

 そのころからゴルフ以外のスポーツで大きなシェアを持っていたブランドもゴルフを見過ごせなくなってきた。1920年創業のキャップメーカー「ニューエラ」は、2011年にゴルファーのためのスペシャルライン「ニューエラ ゴルフ」をスタートさせた。1906年創業のシューズメーカー「ニューバランス」も2016年にゴルフシューズ市場に参入。2017年にはアパレルやアクセサリーの発売を開始した。

 こういった動きを見て、アパレルブランドもゴルフ市場参入への挑戦を始めた。彼らはスポーツブランドのゴルフウェアを「機能性を重視してファッション性を犠牲にしている」と見ており、ファッション性を重視しながら機能性を付加するという今までと違ったアプローチで新しい商品を次々とゴルフ市場に投入した。

 その中にはゴルフのドレスコードにふさわしくないと批難されたアイテムもあったが、時代の変化や地球温暖化による気候の変化により、ドレスコードも以前と比べて寛容になっている。さらに若い世代がゴルフに新規参入したことで、ゴルフウェアもますます多様化していくだろう。

 ゴルフの競技人口は全人口の約7%と言われているので、新規参入組がゴルフアパレル市場で生き残るのは簡単なことではないが、ゴルファーにとってゴルフウェアの選択肢が増えるのはありがたいし、お気に入りのゴルフウェアが見つかればゴルフを長く続ける理由にもなる。

 20年前と比べてゴルフのイメージが大きく変わり、ゴルフをしなかった人やゴルフウェアを作らなかったブランドが次々と興味を示している今の状況はゴルフ業界にとって強力な追い風になりそうだ。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。