ちょうど4年ぶりの対決は、互いに世界トップレベルの技量を持つ者同士が戦術をぶつけ合い、序盤からカネロが優勢だった。ゴロフキンは終盤にカネロがやや落ちたところで挽回するも勝ちには届かず。採点は意外な小差ながら115-113が2人に116-112の3-0判定でカネロが勝利した。もっと早く仕掛ければ…とゴロフキンをもどかしく思う向きがあったが、40歳のベテランは戦況を読みつつギリギリの勝負をしていただろう。

 公式ジャッジのスコアよりも明白に差をつけてカネロが勝った、というのが大方の見方だ。そしてこれで“トリロジー(三部作)”と銘打たれた両雄の対決シリーズも完結した、と。カネロ-ゴロフキンは第3戦にして初めて議論の余地のない勝敗が出たのだ―。

過去のクロスファイト

 過去の2試合は、2017年9月の第1戦が引き分け、翌年9月の第2戦がカネロの判定勝ち。とはいえ第1戦はゴロフキンの勝ちという意見は根強く、第2戦にしても際どい2-0判定で、いずれもクロスファイトだった。採点を巡る因縁がある上に、ハイレベルな激闘が期待できるカードなのだから、そのつど「もう一度やれ」と声があがるのである。

 古今東西、同じ相手と2度3度と戦うのには、いくつかの理由がある。ひとつに、初戦の決着がもめた場合。これは遺恨が残ってやむにやまれぬケースでもあるが、何度やっても面白いと分かっているカードならプロモーターにとっても大歓迎なのである。

 最近の例では、ヘビー級のタイソン・フューリー(イギリス)とデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)のシリーズ。2018年12月の初戦ドローに始まり、2020年2月の再戦、その翌年10月の再々戦(ともにフューリーのKO勝ち)と、どの試合もどちらか(あるいは両方)が倒れるエキサイティングな中身だった。

具現化するアメリカン・ドリーム

 フューリー対ワイルダーは、PPVの売り上げこそ初戦の引き分けを受けた第2戦がピークだったものの、第3戦は両者合わせて5度もダウンのスペクタクルな激闘となり、モハメド・アリ対ジョー・フレージャー、リディック・ボウ対イベンダー・ホリフィールドなどヘビー級のシリーズファイト史に堂々刻み込まれた。

 またその少し前なら、マニー・パッキャオ(フィリピン)対フアン・マヌエル・マルケス(メキシコ)はともに階級を上げながら4度も対戦した(パッキャオの2勝1敗1分)。パッキャオといえば、マルケスのほかマルコ・アントニオ・バレラ(2度対戦)、エリク・モラレス(3度対戦)のメキシカン・ヒーローと激闘を繰り返し、スパニッシュのファンを巻き込んで米国でスターの座に上っていったアメリカン・ドリームの具現者。マルケス最終戦では少なくとも2600万ドルも稼ぐまでになっていた。

 さらにさかのぼって、いまも「史上最高のボクサー」と崇められるシュガー・レイ・ロビンソン(アメリカ)が映画『レイジング・ブル』のモデルとなったジェイク・ラモッタ(アメリカ)と6度もグローブを交えたという記録もある。ただでさえ試合を数多くこなした昔ならではの例ともいえるが、ラモッタは1度しか勝てなかった。それでも唯一の白星(両者の2度目の対戦)がロビンソンの驚異的連勝をストップする価値あるものだった。その因縁がのちになって再戦、再々戦、そのまた……の重要なエッセンスになったのだ。

2人の今後

 因縁にしろ、必ずファンを満足させるマッチアップにしろ、必然性があって実現するのがシリーズファイト。カネロとゴロフキンの超大物による3試合はボクシング史上最も熾烈で、最も人気を呼んだライバル対決の1つとして記憶されるだろう。さすがに「4度目」はなさそうだが、勝ったカネロはもちろん、敗れたゴロフキンもまだ退場はしない。引退に追い込まれるほどのダメージをカネロから受けたわけではなく、潔く敗戦を受け入れると同時に抜け目なく現役続行をアピールし、早くもミドル級次期防衛戦の話題が出ている。


VictorySportsNews編集部