攻撃力ではソフトバンクの総合力の高さが際立つ

 まず、3チームを攻撃面から探る。

表:今季のパ・リーグ打撃成績

 得点数はソフトバンクが圧倒的で、リーグトップの打率、同2位の本塁打数と総じて高い数値をマークしている。柳田が同6位の打率.275、同3位の24本塁打。打率4位に.296で今宮が入るなど、圧倒的な数字の選手はいないものの、多くが水準以上の成績を残しており、攻撃面の総合力の高さでは頭一つ出た存在といえる。

 対して優勝したオリックスは得点数が4位、本塁打数は最下位と、表面的なデータでは攻撃面で特筆すべき要素がないように見える。しかし、セイバーメトリクスの指標では印象が少し変わってくる。平均的な打者が同じ打席に立った場合、どれだけ得点を増やしたかを表す指標wRAAはソフトバンクが55.6でリーグトップながら、オリックスも同3位の23.0と悪くない数字をマークしている。

 個別に見ると、吉田正が54.4でリーグトップ(規定打席以上)。中川圭が10位の12.6。特に、吉田正はリーグに2人しか3割打者がいない投高打低のシーズンにリーグ2位の打率.335をたたき出し、同2位の88打点、同4位の21本塁打を記録するなど、能力の高さを遺憾なく発揮している。この4番打者の存在が、やや迫力に欠ける打線を引き上げていることは間違いない。

 西武はチーム打率が最下位、得点数も5位。2018、19年の連覇を果たした時のチームは、ともに防御率がリーグワーストで、それを圧倒的な打撃力でカバーしていたが、3年を経て180度異なるカラーになっているところが興味深い。wRAAはリーグ5位の-35.5。最後までAクラスを争った楽天はリーグ2位の38.2と大きく離されており、もう「獅子おどし打線」と呼ばれた時の面影はない。

 その中で孤軍奮闘したのが山川だ。wRAAは吉田正に次ぐ2位の46.0。チーム本塁打数はリーグトップの118だが、うち41本を1人でたたき出している。逆に言えば、打撃不振に苦しみ打率.215に終わった外崎、序盤の骨折もあり打率.251、8本塁打にとどまった森らが低迷する中、山川さえ抑えれば、という状況にあるのも事実だ。

投手力の西武・・・だが、オリックスの二枚看板は強力

 続いて、3チームの投手成績を見てみる。

表:今季のパ・リーグ投手成績

 ここで目立つのは西武。先述の通り、近年のイメージである「打撃の西武」から一転した数字を残している。昨季はリーグワーストの3.94だった防御率は劇的に改善。失点は589から153も減らしている。

 高橋光がリーグ4位の防御率2.20を記録するなど先発陣も奮闘しているが、やはり目立つのは救援陣の頑張り。救援防御率2.31はオリックスの2.96、ソフトバンクの2.72を大きく上回り、平良と水上が35ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手のタイトルを同時に獲得した。2人はそれぞれ防御率1.56、1.77と圧倒的な数字を残しており、リーグ2位の31セーブを挙げた抑えの増田を加えた勝利の方程式の盤石ぶりが、攻撃面で大きくリードされた楽天を逆転し、CS進出にこぎつけた最大の要因といえる。

 対して、オリックス、ソフトバンクは絶対的エースを軸とした先発投手の力がチームを支えている。オリックスはエース・山本が昨季に続いて最多勝、最優秀防御率、勝率第1位、奪三振の投手主要4冠を独占。2年連続の4冠は史上初の快挙で、WHIP(1イニング当たりに何人の走者を出したか表す指標)でも日本ハム・加藤に次ぐリーグ2位の0.93をマークした。一方のソフトバンクは防御率1.94で同2位、11勝が同3位の千賀がチームを牽引した。

 さらに、オリックスの強みとなるのが、もう一人エース級の成績を残している投手がいる点だ。宮城は防御率こそ3.16と投高打低のシーズンとしてはやや不満の残るものとなったが、11勝は千賀と並ぶ3位。WHIPは4位の1.13。セイバーメトリクスで投手にとって最も重要な指標の一つとされるK/BB(奪三振数÷与四球数)は5位の千賀(3.18)を超える3位の4.23と安定感が際立つ。事実、オリックスの先発防御率は2.77で、2.99の西武、3.28のソフトバンクを大きく上回っている。

日程もリーグVのオリックスが有利

 ファーストステージで千賀や高橋光といったエースを投入せざるを得ない2チームに対し、山本、宮城を初戦、第2戦に起用できるオリックスが日本シリーズ進出に向けて優位に立っているのは間違いないところ。特に西武は攻撃面に不安を抱えるだけに、突出した先発投手を擁する2チームとの差は大きいといえるだろう。

 それぞれ長所が異なり、激戦が予想されるセ・リーグに対して、レギュラーシーズンの混戦ぶりとは対照的に、戦力面の差が比較的明確なパ・リーグのCS進出3チーム。指標で大きく上回る楽天に西武が勝ったように、短期の勝負では“番狂わせ”が起こる可能性はもちろんあるが、やはりリーグを連破したオリックスがデータ的にも、戦力的にも、そして日程面でも優勢だ。


VictorySportsNews編集部