「CRAFT SAKE WEEK」のオーガナイザーである中田氏は、日本全国47都道府県を巡る中で日本酒・農業・工芸 を中心に数多くの生産者のもとを訪ね、日本が誇る文化や技術の素晴らしさに出会ってきた。その中で400以上の酒蔵を訪問し、日本酒の奥深さと可能性を強く感じたことから16年に「CRAFT SAKE WEEK」をスタート。 延べ60 万人以上の来場者を集める日本最大級の日本酒イベントへと育てた。

 まずは、その歴史から振り返る。

 16年の第1回は2月5〜14日の10日間、今回と同じ東京・六本木ヒルズアリーナで開催された。福島、秋田、宮城など地域別や焼酎蔵など日替わりのテーマに沿った100の酒蔵が出店し、酒器とコインのスターターセットを購入してさまざまな日本酒との出会いを楽しめるスタイルは、現在も踏襲されている。同時に中田氏が太鼓判を押す予約困難な名店などのオリジナルメニューとのペアリングが楽しめる形も、参加5店舗とまだ少数ながら実現。初回から7万6000人の来場者を記録し、大きな話題を呼んだ。

 翌17年は3月の博多を経て、4月に六本木ヒルズアリーナで開催。レストランの出店数が倍の10店舗となり、前年の盛り上がりもあって実に11万人が来場した。18年は5日間で5万人を集めた3月の仙台に始まり、3度目となった六本木ヒルズアリーナでは過去最長の11日間に110蔵の酒蔵、15店舗のレストランが集結する過去最大の規模に発展。来場者数はさらに増え、12万人にも及んだ。そして、前回開催となった19年は4月19〜29日の11日間で行われ、来場者はついに20万人の大台に突入。さらなる進化が期待された中で、この一大イベントもコロナ禍で一時中断を余儀なくされた。

 昨年9月にFMラジオ局J-WAVEのイベントで3日間限定の“スピンオフ版”が実現し、久々に「CRAFT SAKE WEEK」の名前がメディアやSNSなどで取り上げられたが、イベントの開催制限も緩和され、いよいよ23年を迎えて本格的に再始動。今回は六本木ヒルズアリーナで10日間にわたって開催され、光栄菊(佐賀)や花巴(奈良)など初出店を含む100の酒蔵、世界 中の美食家を虜にするフレンチ「L'Effervescence(レフェルヴェソンス)」 など15店舗のレストランが参加する。

 この「CRAFT SAKE WEEK」が大きな支持を集める上で、見逃せないのがインバウンド需要も喚起してきた日本文化の発信拠点としての意義だ。今回の開催期間中にあたる4月25日は六本木ヒルズ開業20周年の記念日。大切な節目の日に行われるイベントとして、この「CRAFT SAKE WEEK」の開催を、六本木ヒルズを管理運営する森ビル側も希望してきたという。

 六本木ヒルズが掲げてきたコンセプトは「文化都心」。美術館や映画館などの存在からも明らかなように、文化の発信拠点としての位置付けを重視する姿勢は、この日本酒イベントとの親和性が非常に高く、森ビル株式会社タウンマネジメント事業部六本木ヒルズ運営グループ課長の村岡真哉氏は「20年の間、数々のクオリティの高いイベントで多くの方々に楽しんで頂いてきた六本木ヒルズにおいて、今、1年の中でそのクオリティの高さの象徴となるイベントのひとつ。賑わいを取り戻した都市の中で、中田英寿さんが選び抜いた日本が誇る『お酒』と『料理』を心ゆくまでご堪能頂きたいと思います」と話す。

 そして、何より「CRAFT SAKE WEEK」への共感を生んできたのがオーガーナイザーとして運営を統括する中田氏の行動力であり実行力だ。当初はネットなどの情報も限られる中で、聞き取り、訪問から始める足を使った地道なリサーチを続け、こだわりの生産者や専門家との関係性を構築。「中田?そういうのは受け付けていない」などと、なかなか受け付けてもらえないこともあったが、多くの時間をかけて学ぶ姿勢により快く受け入れられるようになるなどの例もあった。

 たとえば、最高峰の銘柄として知られる「十四代」を醸す高木酒造は、めったに取材許可が出ない酒蔵だが、その味に惚れ込み、何度も蔵を訪れることで蔵の十五代目である高木顕統氏との信頼関係を構築。「CRAFT SAKE WEEK」にも初回から参加し、今回も30日の最終日「チーム十四代の日」に出店を予定している。

 よくある名前を貸しただけ・・・というような形とは一線を画すイベントであるところも、来場者からの信頼を集める大きな要因だ。中田氏が実際に訪れ、味わった酒蔵から出店蔵を厳選。それはレストランも同じで、世界各国で食べ歩いた中田氏が太鼓判を押す名店のみが出店し、ここでしか味わえない一流シェフによる日本酒に合うメニューが展開される。

 先述した「L’Effervescence」やジャンルの垣根を超えた新日本料理を展開する「La BOMBANCE(ラ・ボンバンス)」、イタリア・パルマで修行を積んだ1日6席限定の予約困難なイタリアン「PELLEGRINO(ペレグリーノ)」などイベント出店自体が希少なレストランが揃うのも、中田氏の行動力、それに起因する信頼があればこそだ。「L’Effervescence」の生江史伸(なまえ・しのぶ)シェフは「中田さんと料理の話や日本酒とのペアリングの可能性などを会話をする中で、一つのことを極めることを仕事とする元アスリートと話しているとは思えない、広範な知見や力強い実行力を感じ、いつも驚かされています」と証言。「CRAFT SAKE WEEKの主役である日本酒は、ワイン同等あるいはそれ以上に温度管理にこだわり、フレンチにも合うことなど、まだ知られていない魅力がたくさん残されているので、本イベントを通してそれらを感じて頂ければと思っています」と多くの人に新たな“発見”をもたらす機会になることを期待する。

 来場者への姿勢にも、中田氏のこだわりが見える。「CRAFT SAKE WEEK」では、蔵元が自ら日本酒を振る舞う形をスタート時から重視。参加者は日本酒の選び方や楽しみ方を直接聞くことができるほか、酒蔵のこだわりや特徴の違いなどを知ることで、日本が誇る“SAKE文化”に触れ、日本酒の魅力を再発見できる仕掛けとなっている。

 会場のインスタレーションにも、日本文化が色濃く表れる。これまでも日本の著名な建築家らが担当し、日本の文化を意識したデザインを取り入れてきたが、今回は「弘前れんが倉庫美術館」「帝国ホテル新本館(36 年完成予定)」をはじめ数多くの作品を手掛ける建築家、田根剛氏が登板。「枡」を約 3000 個使用し、柔らかな木の表情と光が演出する豊饒な空間をつくり上げている。

(C)Atelier Tsuyoshi Tane Architects

 また、中田氏がクリエイティブディレクターを務め、世界に誇れる“日本のほんもの”のモノづくりを発信するプロジェクト「NIHONMONO(にほんもの)」の店舗「NIHONMONO STORE」の出店も決定した。同店舗では、酒に続いて世界で注目を集め始め輸出量も増えている「日本茶」にフォーカス。茶師の最高栄誉とされる農林水産大臣賞を7度受賞し、パリで開催される日本茶コンテスト「Japanese Tea Selection Paris」においても数々の受賞実績のある茶工房比留間園(埼玉県)など、全国から厳選された生産者のお茶をラインアップする。

 中田氏がプロデュースする新・日本茶ブランド「HANAAHU TEA(ハナアウ ティー)」もイベントでお披露目される予定。全国の茶農家を訪ねる中で、日本茶の価値を見直すことが必要だと考えた中田氏が“食事に合う食中茶”をコンセプトに開発したもので、日本のお茶文化に改めてスポットを当てる取り組みとなりそうだ。

 コロナ禍を経て、いよいよ再スタートを果たす「CRAFT SAKE WEEK」。4年ぶりの開催となる今回は、さらにこだわりが詰まったイベントとなり、過去最大級の盛り上がりに包まれそうだ。

オーガナイザー を務める元サッカー日本代表の中田英寿氏

「CRAFT SAKE WEEK 2023 at ROPPONGI HILLS」開催概要

日時:2023年4月21日(金)〜30日(日)/各日12:00〜21:00 (L.O. 20:30)
場所:六本木ヒルズアリーナ(東京都港区六本木6丁目9-1)
参加蔵数:各日10蔵計100蔵
レストラン数:15店
料金:スターターセット3600円(オリジナル酒器グラス+飲食用コイン11枚)
事前販売:PassMarket
主催:株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY
特別協力:六本木ヒルズ

事前販売:PassMarket公式ウェブサイト公式アプリ:Sakenomy

VictorySportsNews編集部