「スポGOMI」とは、面倒なごみ拾いにスポーツのエッセンスを加えることで、どこか堅苦しいイメージのあった社会奉仕活動としてのごみ拾いを「競技」に変換するという日本発祥のソーシャルスポーツ。チームで力を合わせて競いあう楽しさや勝利の達成感(そして、負けたときの悔しさ)を味わえるようにすることで、ごみ拾いに対するイメージ、価値観をガラリと一変させ、環境問題について一歩踏み込んで考えられるようにすることを目指している。すでに立ち上げから15年が経過しており、日本全国、さまざまな地域で「スポGOMI」の大会が開催されるまでになった。

 かねてより環境問題にさまざまな角度から取り組んできたアパレル大手のユニクロはこの「スポGOMI」の理念に共感し、2021年11月から継続的に店舗周辺で大会を開催。

 今回、この取り組みに花井祐介氏が参加したのは、ユニクロと花井氏が同社グラフィックTシャツブランド「UT」で、環境への身近なアクションを一押しする「ONE STEP FORWARD」というテーマでコラボした縁から。逗子に住まい、サーフィンを趣味とする花井氏は、以前から海洋ごみ問題に心を痛めており、長らくビーチクリーン活動に従事してきたと言う。そうした活動の中「海のごみの多くが、街からやってくる」ことに気がついた花井氏は「街のごみがなくならないと海のごみもなくならない」という思いを込めて、本大会のためのアートワークを描き下ろしたと語る。

 2023年4月22日(土)の早朝からスタートした『スポGOMI×UNIQLO×花井祐介』にはあらかじめ抽選で選ばれた65名がエントリー。小さな子供を連れた家族チームを中心に、老若男女幅広い層が「ごみ拾いはスポーツだ!」のかけ声のもと、原宿周辺のごみ拾いに取り組んだ(中には遠く群馬県から参加したという花井祐介ファンのチームも)。拾われたごみは種類と重量によってポイント付けされ、最も多くのポイントを獲得したチームが優勝となる。

 もちろん花井氏も自らのチームで競技に参加。ビーチクリーンで培った経験からフットワーク軽くごみを見つけ、収集していったものの、歩道ブロックの隙間に挟まったポイ捨てたばこや、ビルの間に投げ込まれたペットボトルなど、ビーチのごみとは異なる都会のごみに苦戦。終盤で都会ならではの、ごみスポットを発見し、巻き返しを図ったものの時すでに遅く、上位入賞は果たせなかった。

 優勝の栄冠を掴んだのは、約45分の競技時間で2.91kgのごみを回収し、787.5ポイントを獲得した「スポGOMI」初参加のチーム。優勝チームには賞品として花井氏の手がけたアートワークの貴重な原画が贈られ、会場に多く詰めかけた花井氏のファンからは「すごい!」「うらやましい!!」と羨望の声が上がった。ちなみに今大会で回収されたゴミの総重量は32.66kg。これだけのごみが、いずれ海洋ごみとなって海に流れ出ることを阻止できたということになる。また、多くの参加者が「スポGOMI」の体験に楽しさを見いだし、ごみのポイ捨てについて考えるきっかけとなったと口を揃えていたことも、大きな成果と言えるだろう。

 大会終了後、花井氏はこの取り組みの成果を次のように語ってくれた。

「普段からビーチクリーンには取り組んでいるのですが、今回、街中のごみ拾いということで、とても新鮮な気持ちで参加できました。日本の街並みはとてもきれいなので、あまりごみがないんじゃないかと思いきや、実際にやってみると結構な量のごみがありましたね。これが全部海に流れ来るかと思うと恐ろしくもあります。『スポGOMI』は、今回初挑戦だったのですが、使命感でやらされるよりもずっと楽しかったです。プラスチックはとても便利で私たちの暮らしに欠かせないものではあるのですが、こうした取り組みを通じて、ポイ捨てしなくなったり、使う量を減らしたりといった意識が広まっていくことに期待しています。それにしても上位の皆さんはすごかったですね。チーム花井も頑張ったのですが、ぜんぜん力及びませんでした(笑)」

 なお、『スポGOMI×UNIQLO×花井祐介』では、「スポGOMI」競技の後、参加者がそれぞれ回収された海洋ごみをアートピースとして、花井氏描き下ろしアートワークに貼り付けるというワークショップも実施。描かれたごみ袋の中にたくさんのごみが収納されたことで“完成”した作品はユニクロ原宿店の花井祐介UTコレクション特設コーナーに展示されている。

「今回の参加者向けTシャツと、UTコレクションのTシャツは僕がわがままを言ってリサイクルポリエステルで作ってもらいました。わざわざこの企画のために新しく作ってくれたということで本当に感謝しています。ユニクロのような大企業が動くと、世の中が大きく変わります。ぜひこれからも環境問題に向けて、たくさんのアクションを起こしていってほしいですね。期待しています」(花井氏)

花井祐介氏

山下達也