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　7月20日から始まる女子ワールドカップ・オーストラリア&ニュージーランド大会を前に、NHKがなでしこジャパンのグループリーグ3試合を放送することになりました。せっかく本大会に出場するのに国内で見られないという最悪の事態は避けることができてホッとしています。

　もっとも、なでしこジャパンは2011年ドイツ女子ワールドカップで優勝した後しばらくは勢いを保っていましたが、その後苦戦しています。

　2015年カナダ女子ワールドカップでは準優勝しましたが、2019年フランス女子ワールドカップではベスト16で散ってしまいました。また、五輪では2012年のロンドン五輪で準優勝したものの、2016年リオ五輪はアジア予選で敗退、2021年の東京五輪ではベスト8で敗れています。

　2011年までは女子ワールドカップで結果を残していなかったこともあり、日本はダークホースでした。ですがそこで高成績を上げたことで日本は研究されるようになりました。

　2011年は日本がフィジカルに勝る相手をパスワークと素早い判断で封じ込めましたが、強豪国が日本の特長を取り入れることによって、フィジカルの優れた相手がいいパスワークを見せるようになり、日本の優位性が崩れました。

　日本はそんな相手に対してもう一度優位に立つための方策を見つけなければいけません。ですがまだプラスアルファを加えた成果と成長を見せることができていないというのが現状です。

　その問題を解決するために、もっとも必要なのはWEリーグが成功することです。WEリーグが高いレベルを維持できれば、そこで選手たちがより切磋琢磨して自分たちを強くすることができる、というのはJリーグの後に日本代表が強くなっていたことで証明できていると思います。

　ただ、現状のWEリーグはどうか。決して認知度が高いとは言えません。観客動員数の伸びも苦労しています。2022-23シーズンのリーグ平均観客数は1401人でした。

　ここは女子FIFAランク1位のアメリカと大きく違うところでしょう。アメリカは女子サッカーの人気が高く、「ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ（NWSL）」は2022年、平均で7894人の観客を集め、一番人気のあるチームは1試合平均1万9105人という動員数を誇ります。アメリカ女子代表チームは男子代表よりも高成績を残しているというのも要因の一つでしょう。

　ただしそう考えると、日本もなでしこジャパンのほうが男子代表チームよりもいい成績を残しています。日本女子サッカーにも底力はあると考えていいでしょう。今回のなでしこジャパンがいい成績を出してくれることで、風向きを変えることができるかもしれないのです。

　今回の女子ワールドカップのメンバーに、2011年ドイツ大会のメンバーは熊谷紗希しか残っていません。それでも2022年コスタリカU-20女子ワールドカップや2023年シービリーブスカップで2位になるなど、若い選手も伸びてきています。ベテランと若手がうまくかみ合ってバランスが取れれば、チーム力が一気に変わることもあり得ます。

　去年のカタールワールドカップのように躍進する可能性もあると思います。ただ、一気にもう一度優勝するか、というと、それよりもどれだけ爪痕を残せるかということになるかもしれません。それでもここで成長を遂げた選手が2024年パリ五輪で花開くことでしょう。

　なでしこジャパンの選手たちは、自分たちの活躍がWEリーグ、引いては日本女子サッカーの未来に直結するという危機感を持っていると思います。その気持ちは持てる力をもうひと段階上に引き上げてくれるはずです。彼女たちの活躍に大いに期待します。

なでしこジャパンメンバー

GK
1　山下杏也加（1995.09.29）／INAC神戸レオネッサ
21　平尾知佳（1996.12.31）／アルビレックス新潟レディース
18　田中桃子（2000.03.17）／日テレ・東京ヴェルディベレーザ

FP
4　熊谷紗希（1990.10.17）／ASローマ
8　猶本　光（1994.03.03 ）／三菱重工浦和レッズレディース
11　田中美南（1994.04.28 ）／INAC神戸レオネッサ
5　三宅史織（1995.10.13 ）／INAC神戸レオネッサ
2　清水梨紗（1996.06.15 ）／ウェストハム・ユナイテッド
17　清家貴子（1996.08.08 ）／三菱重工浦和レッズレディース
19　守屋都弥（1996.08.22 ）／INAC神戸レオネッサ
14　長谷川唯（1997.01.29 ）／マンチェスター・シティ
6　杉田妃和（1997.01.31 ）／ポートランド・ソーンズFC
16　林穂之香（1998.05.19 ）／ウェストハム・ユナイテッド
3　南　萌華（1998.12.07 ）／ASローマ
10　長野風花（1999.03.09 ）／リバプールFC
22　千葉玲海菜（1999.04.30）／ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
9　植木理子（1999.07.30 ）／日テレ・東京ヴェルディベレーザ
7　宮澤ひなた（1999.11.28）／マイナビ仙台レディース
12　高橋はな（2000.02.19 ）／三菱重工浦和レッズレディース
13　遠藤　純（2000.05.24 ）／エンジェル・シティFC
23　石川璃音（2003.07.04 ）／三菱重工浦和レッズレディース
15　藤野あおば（2004.01.27）／日テレ・東京ヴェルディベレーザ
20　浜野まいか（2004.05.09）／ハンマルビーIF

なでしこジャパン試合日程（日本時間）

7月22日　16:00〜　ザンビア戦
7月26日　14:00〜　コスタリカ戦
7月31日　16:00〜　スペイン戦

◇1位通過の場合
　8月05日　17:00〜　A組（ニュージーランド・ノルウェー・フィリピン・スイス）2位
◇2位通過の場合
　8月05日　14:00〜　A組（ニュージーランド・ノルウェー・フィリピン・スイス）1位

◇準々決勝
　8月11日　10:00〜または16:30〜
◇準決勝
　8月15日　17:00〜
◇3位決定戦
　8月19日　17:00〜
◇決勝
　8月20日　19:00〜

なでしこジャパン記録

・女子ワールドカップ
1991年中国大会　グループリーグ
1995年スウェーデン大会　ベスト8
1999年アメリカ大会　グループリーグ
2003年アメリカ大会　グループリーグ
2007年中国大会　グループリーグ
2011年ドイツ大会　優勝
2015年カナダ大会　準優勝
2019年フランス大会　ベスト16

・アルガルベカップ
2011年　3位
2012年　2位
2013年　5位
2014年　2位
2015年　9位
2016年　参加せず
2017年　6位
2018年　6位
2019年　参加せず
2020年　参加せず
2021年　中止
2022年　参加せず
2023年　中止

・シービリーブスカップ
2019年　3位
2020年　4位
2021年　参加せず
2022年　参加せず
2023年　2位

・五輪
1996年アトランタ大会　グループリーグ
2000年シドニー大会　予選敗退
2004年アテネ大会　ベスト8
2008年北京大会　4位
2012年ロンドン大会　2位
2016年リオデジャネイロ大会　予選敗退
2021年東京大会　ベスト8

・U-20女子ワールドカップ
2008年チリ大会　ベスト8
2010年ドイツ大会　グループリーグ
2012年日本大会　3位
2014年カナダ大会　予選敗退
2016年パプアニューギニア大会　3位
2018年フランス大会　優勝
2020年　中止
2022年コスタリカ大会　2位

・U-17女子ワールドカップ
2008年ニュージーランド大会　ベスト8
2010年リニダード・トバゴ大会　2位
2012年アゼルバイジャン大会　ベスト8
2014年コスタリカ大会　優勝
2016年ヨルダン大会　2位
2018年ウルグアイ大会　ベスト8
2020年　中止
2022年インド大会　ベスト8

前園真聖 プロフィール
鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピック本大会では、チームのキャプテンとしてブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献。その後日本だけでなくブラジル、韓国などの海外クラブでもプレーし、２００５年に現役引退。現在は、サッカー解説などメディアに出演しながらも、サッカースクールや講演を中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさや経験を伝えるための活動をしている。



【2023/7/19訂正】記事初出時、なでしこジャパンの試合日程の情報において誤りがございました。お詫びして訂正いたします。