「今年の夏も全国で厳しい猛暑が続いています。そのような中でもゴルフを楽しんでおられる方がたくさんおられることは、当協会としても大変嬉しく思っておりますが、同時に熱中症等の発症リスクが高まり、体調に異変をきたす方が多いのも事実です。そこで、ゴルファーの皆さんに真夏のプレーにおける対策や注意点を、当協会の医科学委員会とも相談し、下記の通りまとめてみました」

 JGAがまとめた真夏のプレーにおける対策や注意点は以下のとおりである。

<プレー前>
・前夜の睡眠不足は大敵、十分な睡眠時間を摂るように心がけてください。
・朝食は必ず摂ってください。
・プレー日前から少しずつ体を暑さに慣らしておくことが大切です。

<準備するアイテム例>
・水・経口補水液やスポーツドリンク・塩分補給のための飴や梅干しを用意してください。
・WBGT(暑さ指数)を参考に、氷嚢や冷却パック・スプレー等を準備してください。

<プレー中>
・帽子の着用と日傘を利用してください(日傘は非常に効果があります)。
・ゴルフ場のドレスコードで認められているのであれば、短パン(男性)、スカート・キュロット(女性)の着用、またプレー中にシャツを外に出すことで体温の上昇が抑えられると考えられます。プレーするゴルフ場に確認の上、実践してください。
・極力乗用カートでのプレーを選択しましょう。歩いてプレーする場合には、なるべく木陰などの日陰を歩くようしましょう。
・こまめな水分補給(3ホールまでの目安として約250cc、ハーフで約750cc)を行ってください。
・コース売店には立ち寄り休憩、少し長い休憩が必要なら後続組をパスさせましょう。
・ハーフ終了後は1時間程度休憩し、その間に着替え、冷水シャワーを浴びて体を冷やすと効果的です。
・同伴競技者やキャディの体調をお互いに観察するようにしてください。
・体調に少しでも異変を感じたら途中でプレーを止める勇気をもってください。

<プレー後>
・シャワーや入浴後などで体を冷やし、着替えをして体を休めてから帰りましょう。
・プレー後に体調が優れない場合は、すぐに医療機関で受診してください。


 JGAがこれほど細かく真夏のプレーにおける注意喚起を行ったのは、7月10日に加盟団体である関東ゴルフ連盟の主催競技で、出場選手がプレー中に熱中症で倒れて命を落としたからだ。

 この痛ましい事故を関東ゴルフ連盟は「7月月例競技 事故報告」という見出しでホームページの「お知らせ」欄に掲載。その文面が「関東ゴルフ連盟7月開催の月例競技において不幸にも1名の方がお亡くなりになりました。関東ゴルフ連盟と致しましては、謹んでお悔やみ申し上げますと共に、今まで以上の危機管理に努めて参ります」という無機質な内容だったため、「再発防止に向けた具体策が何一つ示されていない」と批判を集めた。

 その批判がおそらく関係者の耳に届いたため、JGAは医科学委員会と相談し、真夏のプレーにおける対策や注意点をまとめたのだと思われる。

 JGAが指摘するとおり、今年の夏はゴルフを楽しむには厳しい猛暑が続いている。熱中症対策をしないと体調に異変をきたし、命を落とす危険性もあることはしっかりと認識しておいたほうがいい。

 万全の熱中症対策を施しているはずのプロゴルファーでさえ、体調不良を訴えてプレーを断念せざるを得ない状況に陥っている。

 7月27~30日に開催された女子プロゴルフトーナメント「楽天スーパーレディース」(兵庫県・東急グランドオークゴルフクラブ)では、河本結が大会2日目の6ホール終了後に熱中症と見られる症状で途中棄権した。

 植竹希望も雷雲接近による競技中断でクラブハウスに戻った際、熱中症で意識がなくなり、担架で医務室に運ばれた。幸いにも意識が戻って医師のチェックを受け、プレーを再開することができたが、初日5アンダー4位タイ発進と好調の選手が翌日に大きく体調を崩すのだから過信は禁物だ。

 プロゴルファーは日ごろからゴルフの練習を積み重ね、4日間72ホールの戦いを毎週続けるための準備をしているアスリート。その選手たちが熱中症になるのだから、アマチュアゴルファーは相当気をつけなければならない。

 「楽天スーパーレディース」ではギャラリーの熱中症対策として氷嚢用の氷と飲料用の氷を無料配布し、「氷嚢用袋と水筒を是非ご持参ください」と呼びかけていた。氷の無料配布は通常営業のゴルフ場でも当たり前のサービスになっている。氷嚢用袋と水筒はラウンドに携行する必須アイテムと言えるだろう。

 アマチュアゴルファーの最大のメリットは、途中でプレーを止めても誰にも迷惑がかからないことだ。むしろ体調が悪いのに無理をするほうが同伴者に迷惑がかかる可能性が高い。ゴルフは多くの人にとってレジャースポーツである。命を危険にさらしてまで行うことではない。くれぐれも自分の体調と相談しながら、ゴルフが楽しいと思える範囲でラウンドを満喫してほしい。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。