そんなネガティブな雰囲気の中で、ドイツ男子代表が9月9日、日本と、その3日後にフランスと対戦する。このことについて、ハンジ・フリック監督は正直どんな心境なのだろうか。マッチメーキングが行われた時点では、大事なW杯初戦でまさかの敗北を喫した相手に勝利してトラウマを払拭し、来夏の欧州選手権(EURO)に向けて弾みをつける良い機会になると考えていたかもしれない。そしてフランスという強豪を相手に良い試合をしてファンたちの心を掴み、欧州選手権に向けたポジティブな雰囲気を作ろうと。しかし、まさか6月の代表ウィーク3試合でいずれも勝てずに、これだけのプレッシャーがある状況になっていることは想像していなかったのではないだろうか。ウクライナと3−3で引き分け、ポーランドに0−1、コロンビアに0−2で敗れた。(その前の3月の代表ウィークにはペルーに2−0で勝利した後、ベルギーに2−3で敗れた)

 ともかく、来年自国開催となる欧州選手権に向けて、チーム作りを進めなければならないフリック監督にとってこの日本戦は、進退問題に発展する可能性もある、大事な試合である。すでに各方面から、フリック監督のメンバー選考や采配を疑問視する声が出てきているのだ。

 例えばウニオン・ベルリンのオリバー・ルーナート・マネジャーは、今季CLに出場するウニオンからラニ・ケディラやロビン・クノッヘらを呼ばないのは、選手がパフォーマンスによって選ばれていないからだとメンバー選考に疑問を投げかけ、代表マネジャーらが「ココン(繭)の中にいる」、つまり自分たちの殻から出られていないと批判している。そしてドイツサッカー連盟の副会長でであるヨアヒム・ヴァツケ(ドルトムントのCEOでもある)もフランクフルター・アルゲマイネ新聞のインタビューで、「良いEUROにするポテンシャルはある。あとはやり方だ。辛抱強く戦えば、ホームなので多くのことが可能となる」と語り、フリック監督への圧力を高めている。「我々には例えば、抵抗力のある、徹底して貫徹力のある選手たちが足りない」と言うのだ。

 フリック監督は9月の日本戦とフランス戦を前に、「試すのは終わった。これからは勝利することが重要になる」と発言している。軸となる6〜8人の選手は決まっているとも。だから今回召集されるのは基本的に、来年の欧州選手権に連れて行くつもりの選手になりそうである。その大部分はバイエルンの選手たち。セルジュ・ニャブリ、ヨシュア・キミッヒ、レロイ・ザネ、ジャマル・ムシアラ、レオン・ゴレツカ。バイエルンでの出場時間が短くなっているトーマス・ミュラーは、もし呼ばれないとすれば、サプライズだろう。

 ライプツィヒの右サイドバック、ベンヤミン・ヘンリヒスと、左サイドバックのダビド・ラウムの調子も良いようである。特にラウムは6月の代表戦でのパフォーマンスが芳しくなかったため、フリック監督が次に呼ぶかどうか迷っていると言われてきた。

 カタールW杯にサプライズ招集され、長年ドイツ代表が抱えていたセンターフォワード問題を解決したニクラス・フュルクルクに移籍話が持ち上がった時に、ドイツ代表チームマネジャーのルディ・フェラーが、欧州選手権を前にビッグクラブへ行く場合には、「ブレーメンでのようにコンスタントに出場できるよう気をつけなければならない」と指南した。それだけ今、チームに欠かせない存在となっている。

 ゴールキーパーは、マニュエル・ノイアーが間に合わないため、テア・シュテーゲンがフランス戦と日本戦の両方、または日本戦だけケビン・トラップがプレーするかもしれない。

 守備陣は6月に良かったマリック・ティアウの他、再びニクラス・ジューレも呼ばれるだろう、守備的MFには今夏マンチェスター・シティからバルセロナへ移籍したイルカイ・ギュンドアンが健在。6月の代表ウィークからキャプテンマークを巻いている。

 サプライズがあるとすればウニオン・ベルリンのFWケビン・ベーレンスの招集だが、可能性は高くない。また、日本戦かフランス戦で、ドイツサッカーの希望の星である若手、ムシアラとヴィルツの二人が共に先発でプレーするようなことがあれば、それもサプライズだ。

 ちなみに、日本代表との親善試合が行われる前日の9月8日、カタールW杯でのドイツ代表に密着したアマゾン・プライム制作ドキュメンタリー『オール・オア・ナッシング、カタールでのドイツ代表』が初公開となる。最近公開されたトレーラーでは、いつもは穏やかなイメージのハンジ・フリック監督が険しい表情で両腕を振りながら、選手に向かって「このまま行ったら帰らなければならないんだぞ」と怒鳴っているシーン、練習場で口論するキミッヒとリュディガー、ロッカールームで呆然とする選手たち、そしてドイツに勝利した瞬間日本のベンチからピッチになだれ込む日本の選手とスタッフを捉えた映像も収められている。この公開スケジュールが果たして良いのかどうか……いろいろな意味で、今回のドイツ対日本には大きな注目が集まる。

 フリック監督は、ブンデスリーガ第2節が終わった後の木曜日、31日にメンバーを発表する予定になっている。


VictorySportsNews編集部