セルティック日本人選手に加えレジェンドOB中村俊輔氏

 前田大然、古橋亨梧など日本人選手が多く在籍するスコットランドのセルティックは、横浜と大阪で2試合をこなした。横浜F・マリノスとの試合前日となる7月18日に、アディダス・ジャパンが無料のadiClub会員20組40人を招待する形で、日産スタジアムの青空の下、セルティック日本人選手たちが登壇したトークショーを実施した。

 さらに、このトークショーには、前田、古橋、旗手、岩田、小林といったセルティック所属の日本人5選手に加え、セルティックのレジェンドである元日本代表・中村俊輔氏も参加して話題を呼んだ。最後はセルティックの日本人選手たちと記念撮影ができる特典もあったが、スケジュールの都合により前田選手は撮影を前に会場を後にすると、前田選手のユニフォームを着て参加していたファン数人が残念そうな表情を浮かべていた。ただ、これだけの日本人選手が一堂に会し、中村氏が久々に日産スタジアムに登場するという、豪勢で貴重なイベントとなった。

日本の伝統文化の和太鼓体験でファンと交流したPSG

 今回の来日ツアーで、良くも悪くも注目度が高かったのがPSG。一番の目玉だったはずのフランス代表のエース、キリアン・エムバペが、契約問題によりツアー直前に来日メンバーから外れた。同じくツアーの目玉選手の1人だったブラジル代表のネイマール(後にサウジアラビアのアル・ヒラルに移籍)は、コンディション不良を理由に日本での3試合はいずれも出場せず、観客を失望させた。

 とはいえ、PSGもファンイベントを実施し、そこではネイマールらPSG選手たちとの交流を行うなど、ファンを楽しませていた。7月24日には、スイスホテル南海大阪でアコーの会員クラブ向けの限定イベントが行われ、ブラジル代表のマルキーニョス、スペイン代表のマルコ・アセンシオら6選⼿が登場し、参加者やインフルエンサーたちと一緒に和太鼓を叩いて楽しんだり、卓球をしたりするなど、交流を行った。

太鼓を叩くロイヤリティメンバーとPSGの選手たち

 また、大阪中之島美術館や東京の表参道では期間限定のポップアップストアが設置され、大阪の「PSGハウス」のオープン初日にはネイマールらが来店していた。

 PSGの来日ツアー3試合全てを観戦したという埼玉県在住の30代男性に話を伺うと、「デビッド・ベッカムがいた頃(2013年)からのPSGファンで、今回は有給休暇を取って大阪での試合を観に来ました。(大阪での2試合の合間は何を?)PSGハウスに行って買い物するつもりです」と話していた。この様に、遠方からの試合観戦者にとっては丁度良い訪問先の一つになっていたようだ。

OBが1人でトークでつないだインテル・ミラノ

 PSGと同じく、大阪と東京で試合を行ったインテル・ミラノは、大阪梅田にある「サッカーショップKAMO」の店内に、インテル・ミラノ向けファンルームを期間限定で設置し、7月25日にトークイベントを開催している。このイベントには、クラブのOBで2006年W杯優勝メンバーでもある元イタリア代表のマルコ・マテラッツィ氏が登場した。このイベントには、アルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスらもゲストで来るはずが、登場時間になっても会場に現れず、彼らが来るまでの1時間以上もの間、マテラッツィ氏がトークで繋いだという伝説を残した。結局、1時間15分後にマルティネスらインテルの選手たちが到着し、インテル・ミラノのファンたちにとってはたまらない時間となった。

エプロン姿のハーランドまで登場したマンチェスター・シティ

 昨シーズンのCL王者であるマンチェスター・シティは、今回の来日ツアーにおいてはSNSを駆使しながら上手く発信していたように映った。ファンクラブ向けイベントが中心ではあるが、7月21日に目黒でのランチイベントに出席したブラジル代表GKエデルソン、イングランド代表FWフィル・フォーデンら3選手が、ファンからの質疑タイムを楽しんでいた。また、カラオケ館本館(渋谷)ではマンチェスター・シティ来日に合わせてチームカラーにカラーリングした特設ルームが作られ、そこに集まったシティサポーターたちの前にベルナルド・シウバらがサプライズ登場すると、会場は大盛り上がりとなった。

 そして最も面白かったのが、キッチンカーイベント。23歳ながら今や世界トップクラスの点取り屋であるノルウェー代表アーリング・ハーランドなど3選手が、東京タワーの真下にあるイベントスペースでキッチンカーの店員として登場した。エプロン姿のハーランドが特製メニューを自ら盛り付けてファンに手渡しするなど、世界的人気選手たちの登場に、ファンはもちろん、偶然その場に居合わせた人々までもが驚きの表情を浮かべていた。これは、マンチェスター・シティのパートナーシップ企業(スポンサー企業)である中国の電機メーカー「Midea(美的集団)」によるファンクラブ向け交流イベントの一つだったが、エプロン姿のハーランドという貴重な姿が東京から世界に発信された。

 また、ジョリオン・レスコット氏やショーン・ライト=フィリップス氏といったクラブOBも、ツアー期間中、各種イベントに登場するなど、当時を知るシティファンたちを喜ばせていた。

レジェンドOBがファン交流サッカー大会に登場したバイエルン

 バイエルン・ミュンヘンもファンクラブ向けイベントを行っているが、なかでも興味深かったのが、ファンクラブ向けのサッカーイベントだ。バイエルン・ミュンヘンのOBで、2000年前後に活躍したジオバネ・エウベル氏、2000年代と2010年代の計9シーズンに渡って活躍したクラウディオ・ピサーロ氏が参加し、ファンと一緒になってボールを蹴った。このイベントには、日本のファンクラブだけでなく、中国のバイエルン・ミュンヘンのサポータークラブにも声がかけられていたようで、日本での観戦と合わせて当該イベントにも参加していた。

 このイベントに参加していた中国人男性は「エウベルとピサーロと蹴れるなんてなかなか無い機会で楽しかった。参加して良かった」と話していた。

 バイエルンは他にも、アディダス主催のトークイベントや、渋谷の期間限定ポップアップストアでのトークイベントを行うなど、選手とファンが積極的な交流を見せた。

 バイエルン・ミュンヘンとインテル・ミラノの2チームは、ゲーム大手のコナミデジタルエンタテインメントが主催のサッカーゲーム「eFootball」のイベントに、7月27日と7月30日にそれぞれ選手が登場し、ゲームを楽しむ様子が見られた。

 それぞれ、来日中の限られたスケジュールの中で、日本のファンに向けた交流イベントが考えられていた。

より良いファンとの交流イベントとは

 今夏の来日ツアーにおいては、ファンクラブ向けイベントやパートナー企業主催のクローズドなイベントが大半だった中で、実際に選手と交流しているファンの人数も絞られてしまっていたのは少し残念だった。警備面での問題もあってのことだろうが、それなりにオープンな場でのイベント開催は、マンチェスター・シティのキッチンカーイベントくらいだったのではないか(こちらもファンクラブ向けイベントではあるが…)。そして、公開練習はどのクラブも有料イベントとして開催されていた。各チームの日本人ファン、あるいは世界のスーパースター選手たちをひと目見ようと会場に駆けつけたサッカーファンたちにとって、交流できるハードルが高くなりすぎている印象を受けた。

 選手が滞在するホテルを知ったファンがホテル前で出待ちをし、選手たちのバス移動を狙ってサインや写真撮影を試みる姿を目にした時、果たしてファン・サポーターにとってどういったファン交流がベストなのかと考えさせられる来日ツアーでもあった。


大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。