ライトフライ級、フライ級、そしてバンタム級でワールドチャンピオンのベルトを手にしたカシメロ。日本のファンの間で話題になるようになったのはバンタム級の王者時代で、当時同じ階級にいた井上と統一戦を行うことも決まっていた。しかしコロナ禍によりこれはキャンセルとなり、いまはスーパーバンタム級で再びモンスター挑戦を狙っているところだ。最新の世界ランキングでは井上が王座に君臨するWBO(世界ボクシング機構)の3位につけている。

 ここまでのプロ戦績は33勝22KO4敗。パワーを活かしたワイルドなボクシングで人気を博すカシメロは、リング外でもたびたび井上を挑発してきた。「俺こそがモンスター・ハンターだ」と言わんばかりに思ったことを口にしてきた。10月の試合では元IBF(国際ボクシング連盟)スーパーバンタム級チャンピオンの小國以載(角海老宝石)と対戦するのだが、試合に向けた意気込みでも小國を倒すと宣言したあとに「次は井上だ」とアピールすることを忘れない。

 先日井上のほうでも、スーパーバンタム級で戦いたい相手の1人としてカシメロの名前を挙げており、もし両者の対戦が決まれば盛り上がることは間違いない。

 相変わらずのモンスターぶりをリングで発揮する井上に挑みたいというだけでも感心してしまうが、敗北のリスクが限りなく高まる一方で約束される高額なファイトマネーはやはり大きな魅力なのだ。それがチャンピオンクラスならまず億はくだるまい。

カシメロを連れてきたプロモーター

 さて、そんなカシメロが日本のリングに立つのは今回が初めてである。カシメロを日本に連れてきたのがイベントを主催するトレジャーボクシング(TB)プロモーション。元WBO世界スーパーフェザー級チャンピオンの伊藤雅雪氏が代表を務めるプロモーションは、今年になってカシメロと正式な契約を結んでいるのだ。

 TBプロモーションは昨年12月の第1回以降、韓国とフィリピンで興行を打ってきた。カジノホテルと組んで興行を開催し、そこで日本のボクサーとアジアの強豪との対戦の機会をつくるという従来とは異なるモデルを手掛けている。カシメロも過去に2度出場し、赤穂亮(横浜光)とナミビア人選手に勝利した。

 10月の第4回イベントは、TBプロモーション初の国内開催である。そこに目玉としてカシメロを招いたというわけだ。「(カシメロの)最終目標が井上選手との対戦。そのために日本でアピールしたい」(伊藤代表)というから、カシメロのさらなる売り出しが目的になる。東京で日本人ボクサーと行われる試合でありながらも、あくまでAサイドはカシメロであるのはおもしろい。

試合の行方は

 実際、小國との一戦(スーパーバンタム級契約ノンタイトル10回戦)の勝敗予想はカシメロが優位である。35歳の小國は一度は世界王座に就いた実力者だが、近年はブランクがちであるのだから致し方ない(小國の最新の試合は昨年5月、OPBF東洋太平洋バンタム級王者の栗原慶太と4回負傷引き分け)。

 しかし予想は大方がカシメロでも、決して勝負が目に見えているというカードでもない。この一戦が興味深いマッチアップであるのは多くが認めるところである。ジャブと右ストレートを基調にした正統派ボクサーである小國と荒々しいパワフル・ファイターのカシメロでは、ボクシングスタイルにおいて対照の妙がある。さらに小國は現役随一の戦略家としても知られている。その知略がカシメロの野性といかにぶつかるか、という点も見どころだ。小國がカシメロの嫌がるボクシングでポイントを集め、アップセットを起こす可能性も否定できないのである。

 小國はブランクの間に圏外となった世界ランキングを取り戻すことがこの一戦の一番のモチベーション。勝てばカシメロのかわりに世界再挑戦のチャンスも出てくるからだ。かたやカシメロは井上のホームで豪快なパフォーマンスを見せつけ、モンスター挑戦へのアドバルーンを上げたい。カシメロ−小國戦はタイトルが賭けられない無冠戦だが、大いに注目すべき試合である。


VictorySportsNews編集部