日本代表はもうワールドカップ出場を目標にしているのではありません。本大会でどこまで勝ち進むことができるか。そこが一番大切です。ですから、このアジア予選もワールドカップで躍進することに結びつけるよう戦うことが大事でしょう。

 そう考えると、今回22人(発表時点)の海外組を呼んだのも理由が分かります。

 初戦のミャンマーは、2021年5月28日に対戦したときに日本は10-0で勝利しました。FIFAランクを比べても、日本の18位に対してミャンマーは158位。チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグのあとにリーグ戦まで戦った選手を日本まで呼び寄せて戦う相手ではないかもしれません。

 森保監督はJリーグ中心、海外組中心という2チームを作って戦うことも検討したと明らかにしていました。ですがなぜそれを止めて今回のメンバーにしたのかという理由を、「同じ経験を共有しながら前進していくことで、よりチームの結束力は強まる、高まる」「どんな試合にも成果と課題は必ずあります。そこを共有しながらチームの積み上げをしていく」と語っていました。確かにそのとおりだと思います。

 ただし、単に経験を共有するだけに試合をするのはもったいないでしょう。現時点で日本が抱えている課題をどう解決するかも考えなければいけません。

 日本が苦手にしているのは「引いた相手をどう崩すか」という戦い方です。実際、じっくりと待ち構えてカウンターを狙ってくる相手に勝つのは簡単なことではありません。

 2022年カタールワールドカップを思い出してみれば明らかです。あのとき、ドイツやスペインを相手に、日本は引いてしっかりと守備を固め、逆襲速攻から勝利を収めました。ドイツやスペインですら、守備的に戦う日本を崩せなかったのです。

 逆に、日本は自陣を固めたコスタリカとの試合では0-1で敗戦を喫しました。ヨーロッパの強豪チームに勝つことができても、ディフェンスに重きを置いたチームには負けてしまったのです。

 前回のワールドカップアジア最終予選でも、日本は初戦でオマーンに手こずり、88分のイサム・アブダラ・アルサビの一発に沈んでしまいました。これこそ日本が引いて守る相手と戦ったときの典型的な試合のパターンで、それをどう克服していくかということが今回の命題として浮上してくると思います。

 引いた相手を崩していくのは、個人で突破できる選手がいることが大切です。そしてそういうプレーが出来る選手が日本は増えました。伊東純也、三笘薫、久保建英、堂安律など、前を向けますし、相手を2人、3人と引きつけてくれるので、相手を剥がすだけではなくて守備網に穴を作ってくれます。

 またセットプレーも大切になるでしょう。個で突破すればペナルティエリア付近で相手のファウルを誘うことができます。そうすればFKから相手ゴールをこじ開けることができる可能性が出てきます。もちろんペナルティエリアに侵入できればPK獲得も狙えます。

 そして日本はカタールワールドカップのころに比べて、その「個」がより成長しました。これまでよりもはるかに相手を攻略しやすくなっていると思います。

 ただし、そうは言っても日本がより攻撃的にシフトし始めたのは今年に入ってから。第二次森保ジャパンはドイツやトルコ、カナダなどに勝っていますが、まだまだコンビネーションは練らなければなりません。また、セットプレーもこれから構築するところでしょう。それぞれこの2次予選で少しでも前進してくれればいいと思います。

 森保監督はメンバー発表記者会見で「(10月に対戦した)チュニジアは、非常に守備組織がしっかりしていて、そこからボールを奪って速攻という部分では、今回戦う2チーム、アジアで戦うという部分においては(似ていた)」「非常にレベルの高いチュニジアというチームと戦わせていただいて、相手の守備網をこじ開けていくということは、10月の親善試合でも経験させていただいた」と語っていました。

 今回もたぶん相手は守備を重視した戦いを仕掛けてくるでしょう。予選ですから、何よりもまずちゃんと勝点を獲得することが重要です。理想を言えば早い時間に先制点を挙げ、相手が出てこざるを得なくなったところで追加点を狙う展開に持ち込む、という展開になってほしいものです。

 そして勝点3を獲得した上で、日本が苦手とする相手をどう崩すのかしっかり経験値を積み重ね、課題を克服していってほしいと思います。


【2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップ アジア2次予選日程】
2023年11月16日(木)日本vsミャンマー
2023年11月21日(火)シリアvs日本
2024年 3月21日(木)日本vs朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)
2024年 3月26日(火)朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)vs日本
2024年 6月 6日(木)ミャンマーvs日本
2024年 6月11日(火)日本vsシリア

前園真聖

前園真聖

鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピック本大会では、チームのキャプテンとしてブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献。その後日本だけでなくブラジル、韓国などの海外クラブでもプレーし、2005年に現役引退。現在は、サッカー解説などメディアに出演しながらも、サッカースクールや講演を中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさや経験を伝えるための活動をしている。