「現実はそんなに甘くない」最年少ディレクターの苦悩

ーVol.2まででは、dip BATTLESに加入された後のお話についてお聞きいたしました。今回は今季とこれからのdip BATTLESについておうかがいできればと思います。

KENSEI:今季から、最年少のディレクター兼選手という形になったんですが、開幕から三連敗といきなり挫折というか。なかなかうまくいかないというか、現実はそんなに甘くないなと思っています。

ーどういう部分がうまくいっていないと感じていますか?

KENSEI:今年のシーズンスローガンでもある「新時代をつくる」ということを体現しようというのがテーマでやってきて。ただ、自分たちの等身大から背伸びしすぎても、それはそれで見透かされてしまうだろうなと思ったので、自分の中で等身大を作品に落とし込もうとしてきたんですが、そこがあんまりうまくいっていないポイントですね。

自分の中では等身大と思うものでも、チームのメンバーからする等身大とはまた違うのかなと思っていて。そのメンバーの等身大を吸い上げて、作品に落とし込むという部分が全然できていないなと今は思っています。

ーディレクターという役割についてはどうですか?

KENSEI:dip BATTLESは、メンバーそれぞれのダンスジャンルがバラバラで、個性が強いチームなんですよね。あと、若いメンバーも多いということもあって、まとめあげていくのがやっぱり大変で。個性が強いチームゆえに、爆発力みたいな部分はあると思うので、その良さをいかせるような作品を作っていければ良いなと思っています。

ー今年からディレクターも兼任する形になりましたが、そこについてはどうですか?

KENSEI:ダンサーとしての自分と、ディレクターとしての自分を両立させるのはなかなか難しいなと感じています。自分がパフォーマンスをしないほうが見える部分もあるんじゃないかなとは思っていて。やっぱり自分がパフォーマンスをしていると、自分のことを見てしまいますし、メンバーの生のパフォーマンスを見れないという部分もあって。そして何より、ダンスに関しては準備期間にやることはいくらでもでてくるので、他のメンバーのことまで気が回らない部分はあると思っています。

ーなかなか難しいテーマですね。

KENSEI:ROUND6のときに、結果を待っている間、体が不安で硬直してしまったんですよね。これまでは、会場のお客さんに向けて手を振ったりとか、他のダンサー同様に振る舞っていたんですけど、ディレクターという立場にかわって、結果もでていない状況っていう中で初めての感覚を味わいました。自分の中ではうまくパフォーマンスできた、と思っているんですけど、それでも結果が出なかったらどうしようっていう不安に襲われましたね。

ー後半戦に向けて、今の現状をどう打開しようと考えていますか?

KENSEI:一番は「ショー」として勝てるものを作らないといけない、っていうことですね。これまでは、ダンスや音楽にフォーカスした作品を作ってきたんですけど、後半戦ではよりエンタメ的な要素にフォーカスしていきます。。どうしても、ダンスの細かい技術だったりは、あれだけ広い会場となると、お客様やジャッジの方に楽しんでもらいにくい部分があると思っていて。作品のインパクトだったり、尖らせ方みたいな部分を突き詰めていければなと。とはいえ、インパクトだけでスカスカになってしまわないように、パフォーマンスもしっかり作り込んでいきます。

 昨シーズン、ROUND12で、ステージを半円状に囲んでペットボトルをまわして、キャップ側が向いた人が即興でソロでダンスをするっていうパフォーマンスをやったんですけど、そのROUNDをスイープで勝つことができて。いろんな人にそのパフォーマンスを楽しんでもらえたんですが、きっかけはスタジオ内の遊びだったんですよね。そういうお客さんにも楽しんでもらえるような遊び心を仕込んでいければなと思っています。

後半戦、まだまだ巻き返せるチャンスはある

ーdip BATTLES、ひいてはDリーグを、どういう人たちに見てほしいという考えてらっしゃいますか?

KENSEI:ダンスの経験がある方だけにとどまらず、いろんな方に見ていただきたいなと思っています。ダンスって、もちろん勝ち負けはあるんですけど、他のスポーツにない部分として、アート的な側面というか、芸術性っていう部分があると思うんですよね。勝っても負けても、その作品を通して楽しんでもらえるというか。負けたチームの作品がすごく心に刺さる人もいると思いますし。そういう部分が魅力だなと思っています。

あとは、高校時代の部分でも話しましたけど、今の社会って、みんな目の前のことだったり、マイナスの部分だったりにとらわれてしまいがちだとおもうんですよね。そんな中で、ダンスっていう自分のやりたいことを表現するっていうものが、この社会に必要だと思うんですよね。非日常ですし、すごくポジティブなことですし。もっといろんな人の目に届くといいなと思っています。

ーdip BATTLESの中で、特に注目してほしい選手をあげるとすればどなたでしょうか

KENSEI:UMIとMARINですかね。自分と同じ初年度から入ってて、新メンバーが多い今季のチームにおいて、お互い頑張ろうっていう存在ですね。特にUMIに関しては、Dリーグ以外で所属しているチームも、若くて勢いがあってっていう部分で、注目していただければなと。

ー他のチームで、絶対に負けたくないという選手はいたりしますか?

KENSEI:Karim、AITO、Taraですかね。元々dip BATTLESにいたメンバーだからですね。(笑)そのメンバーたちに、「dip BATTLESに残っていればよかった」と思ってもらえるようなパフォーマンスを披露したいなと思っています。

ーインタビューのVol.1で、「他者からどう評価されるか」という部分にとらわれてしまって、「自分が何を表現したいのか」という部分をあまり考えられていなかった、というお話がありましたが、今はご自身の中でどういう風に捉えられていますか?

KENSEI:今は自分の中で、その二つの考えをうまく切り分けられているのかなと。もちろんDリーグにおいては、他の方にどういうものが評価されるのかっていうことを考えることは重要だとは思います。ただ、どこまでいっても他の人がどう考えるかっていうのはわからない部分もあるので、他の人からどう見えるかっていう部分は意識しつつも、自分がどういったものを表現したいかっていうのを、出すようにしていますね。

ー最後に、今季苦しい開幕になってしまっていますが、後半戦に向けての意気込みや目標について教えてください。

KENSEI:後半戦、強豪チームとの対戦が控えている状況なんですよね。とはいえ、このまま結果を出さないままシーズンを終えるわけにはいかないので、結果ももちろん追い求めないといけないですし、各ROUNDを経験するごとに学びも得ないといけないと思っています。前半戦はダンスや音楽起点での作品作りというトライをしていたんですが、後半戦は先程もお話したように、よりエンタメ要素の強い「ショー」にチャレンジしてみようかなと。パフォーマンス自体ももちろんそうですが、この強豪チームに対して、このチャレンジがどれくらい通用するのかっていう部分も含めて、皆様にお楽しみいただきたいですね。

ダンスで全国優勝を果たした後に、バレーでも全国優勝!? Dリーグ最年少ディレクターKENSEI Vol.1


KEISEI プロフィール
6歳からダンスをはじめ、dance studio sugarhillに通いながらP→★から教えを受ける。7歳になったころからダンスバトルに出場し「avex セブン&アイ ダンスコンテスト」で全国優勝するなど、全国的なダンスシーンで活躍中のPOPPINGを得意とするダンサー。2021年から「dip BATTLES」の選手として活動。選手としてMVD(22-23シーズンROUND2)やベストスキル賞(昨シーズン)を獲得するなど、輝かしい成績を残し、23-24 SEASONからD.LEAGUE 史上最年少となる21歳という若さで、ディレクター兼選手に就任し、チームを牽引する、今シーズン注目のダンサーである。


dip BATTLES
ディップ株式会社が運営し、2021-22シーズンからD.LEAGUEに参戦しているプロダンスチーム。「新時代をつくる」をシーズンスローガンに掲げ、2022-23シーズンにMVD2回、ベストスキル賞を受賞したKENSEIがDリーグ史上最年少ディレクターとしてチームを牽引する。


山田浩平

東京大学在学中にスポーツメディアを立ち上げ、株式会社VICTORY代表取締役に就任。 様々な事業会社で、スポーツを中心としたエンタメ領域の新規事業の立ち上げやサービスのリブランディングなどに従事。