日本に縁のあるスウェーデン代表選手たちも登場 スウェーデン代表の五輪へのモチベーション動画が見応えあり

 取り上げられた選手は、卓球のトルルス・モーレゴード選手、ビーチバレーボールのダーヴィッド・オーマン選手とヨナタン・ヘルヴィグ選手のペア、セーリングのアントン・ダールベリ選手とロビサ・カールソン選手のペアで、それぞれ1分に満たない動画で、自身が得た経験、競技に対する思いをシンプルに紹介する内容となっている。いずれも過去のオリンピックや世界選手権で金・銀メダルを獲得している選手たちだけに、必見だ。

日本のTリーグでも3シーズンに渡ってプレーしたスウェーデン卓球界期待の若手

 22歳のトルルス・モーレゴード選手は、パリ五輪では個人戦と団体戦のメンバーに選ばれた。10代の頃から代表入りし、2021年の世界卓球選手権では銀メダルの実績を持つ。スウェーデン卓球界の期待の若手であるモーレゴード選手だが、動画内では、幼い頃の困難を乗り越えてトップアスリートに上り詰めていったことを明かしている。

トルルス・モーレゴード選手

「僕は、生まれつき膝の骨の病気を持っていて、大手術を2度受けなければならなかった。その度に9カ月間、練習から遠ざかっていた。でも今、僕はここにいる。卓球を始めたとき、友人や家族と練習しているとき、スポーツに夢中になっているとき。そのすべてのささやかな瞬間は、大きな大会でメダルを獲るためにあったのではない。オリンピックで勝ちたいのと同じくらい、どんな大会でも勝ちたい。この精神は、僕の心の中にずっと残り続けると思う。その気持ちがなくなった時が、卓球をやめる時だと思う」

 逆境を乗り越えたモーレゴード選手の言葉には芯の強さが宿っている。

 初の五輪に臨むモーレゴード選手だが、実は日本になじみのある選手だ。プロ卓球リーグ・Tリーグのチーム「T.T彩たま」に2019年から3シーズン在籍していたこともあって、日本でもファンが多い。また、今年3月には能登半島地震のチャリティーオークションでサイン入りラケットを提供するなど、今も日本のことを気に掛けてくれている。パリ五輪では1回戦はベルギーの選手相手に勝利し、好調なスタートを切った。今後、日本の選手たちと対戦する可能性が十分あり得るが、モーレゴード選手の活躍も楽しみだ。

「スウェーデン・ジャンプセット」で一気に世界トップに上り詰めた20代前半ペア

 ビーチバレーボールのダーヴィッド・オーマン選手とヨナタン・ヘルヴィグ選手のペアは、金メダル候補の一角。二人ともまだ22歳と若いが既に、ヨーロッパ選手権を2022年と2023年に連覇、2023年の世界選手権では銀メダル、そして2024年4月には世界ランキング1位になるなど、今まさに勢いのある2人。彼らが武器にしているのが「スウェーデン・ジャンプセット(Swedish Jump Set)」と呼ばれているプレーだ。

ダーヴィッド・オーマン選手、ヨナタン・ヘルヴィグ選手(ビーチバレーボール)

 「スウェーデン・ジャンプセット」は相手を幻惑するプレーだ。レシーブしたボールをネット際に上げて、スパイクも打てる様なトスにする。それをもう1人の味方選手が助走や腕を振るなどスパイクの動作をして跳ぶ。これが相手選手を食いつかせるための餌となる。スパイクを打ってくると思った相手選手がブロックジャンプをしてきたのを見計らうと、空中でスパイクを止めてトスに切り替えるのだ。そして、レシーブした味方選手が走り込んできてジャンプし、ボールをスパイクして砂のコートに叩き込む。2人の選手共にハイレベルな能力が求められる、革新的な攻撃コンビネーションなのだ。

「ユースオリンピックで、スウェーデン・ジャンプセットを初めてやったとき、他のコーチやチームはみんな、これはただのショーだ、うまくいくわけがない、と言っていた。最初のうち、安全策を取ることはいくらでもできた。厳しい試合の時は、二段攻撃ではなく、普通のセットをやるとかね。でも、僕たち2人は信じていた。そういう大事な場面でも、チームとして、こだわってプレーをするべきだと。負ける時は、リスクを恐れて負けるのではなく、自分たちの戦い方を貫いて負けたい。これが僕らの勝ち方なんだ」(動画内の2人のコメント)

 オーマン選手とヘルヴィグ選手のペアは当時としては画期的であったスウェーデン・ジャンプセットをユース世代から駆使して勝っていった。例え周囲から反対されようとも。貫き通した結果、今や世界トップまでたどり着いた。

2人を指導するのは日本で指導経験のある名伯楽

 この2人も間接的に日本と関係がある。彼らの指導者がアンディッシュ・クリスティアンソン氏。日本のバレーボール、国内リーグのファンなら聞き覚えがあるだろう。2013年から2019年まで、豊田合成トレフェルサ(現ウルフドッグス名古屋)を監督や総監督として指導し、チーム史上初の優勝に導いている。スウェーデンのバレーボール界の名伯楽ともいえる存在で、2018年からオーマン選手とヘルヴィグ選手のペアに関わっている。パリ五輪で金メダルの可能性の高い2人が、もし金メダルを取ることがあれば、もしかしたらクリスティアンソン氏の喜ぶ姿が映像に映るかもしれない。予選ラウンド初戦はオーストラリアに勝利し、次戦は30日のカタール戦に臨む。

尽きないモチベーション。東京五輪銀メダリストは、新ペアで再び五輪に挑む

 同じくメダルが期待されているのが、セーリングのアントン・ダールベリ選手とロビサ・カールソン選手。ダールベリ選手は前回の東京五輪で男子470級で銀メダルを獲得している。今回はカールソン選手と組んで混合470級でメダルを目指す。カールソン選手は前回の東京大会では女子470級に出場し14位だった。2人は東京五輪後にペアを結成するとすぐに結果を出した。2021年は世界選手権優勝、2022年、2023年はヨーロッパ選手権を連覇と、パリ五輪でも有力なメダル候補だ。

アントン・ダールベリ選手、ロビサ・カールソン選手(セーリング)

 ダールベリ選手は2008年の北京五輪から連続出場し続けてパリ五輪で5回目、38歳での挑戦となる。もう引退してもおかしくない年齢にも関わらず、現役アスリートとして挑戦するのか。カールソン選手と一緒に語るセーリングへの思いから、モチベーションの一端が垣間見える。

「セーリングを始めたばかりの頃は、嵐に対する恐怖心があった。でも、風が強い時が好きだった。波の上をより速く進むことができるから。恐怖もあるけど、魅力もある。自分の限界を押し広げ、新たな限界に挑戦することができる。いつ大会に出られるかなんて、考えたこともなかった。それ以上に、セーリングが大好きなんだ。できる限りのベストを尽くすよ。自然とのゲームは、本当に魅力的だ。海の上で頭をつかい、風や波を読み、あれこれ試してみる。私たちは、その喜びに突き動かされている。それは決して終わることのない旅だ」

 ユニクロは、2019年1月からスウェーデンのオリンピック・パラリンピックチームのメインパートナー兼オフィシャル・クロージング・パートナーとして、スウェーデン代表選手団に公式ウェアの提供を行っている。動画内でさりげなく映るアスリートたちの着用ウェアは、いずれもユニクロが今回提供しているもの。

 厳しい道のりを乗り越えたどり着いたパリの舞台。彼らのアツい思いが込められた、短いながらも力強い動画となっている。

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動画はこちら(ユニクロ公式YouTubeチャンネル):

Truls Möregårdh / 卓球スウェーデン代表David Åhman, Jonatan Hellvig / ビーチバレーボールスウェーデン代表Anton Dahlberg, Lovisa Karlsson / セーリングスウェーデン代表

大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。