競技団体の動きと課題
白内障は目の水晶体が混濁し視力が低下していく病気。発症リスクを抑える点から、紫外線対策は1年を通して講じることが推奨されている。また、紫外線は地面や壁から反射するため、日傘を差すだけでは不十分で、直接的に目を保護するのが最も肝心といわれる。
強い紫外線を子どものころから浴び続けることへの懸念が横たわる中、競技団体に今年、一つの動きがあった。小中学生が所属している硬式野球の日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)。連盟によると、これまで医療目的でサングラスの着用を認めていたが、今年からは紫外線対策などを目的にして試合や練習での使用を解禁し、通達を出した。同連盟の惣田敏和会長は次のようにコメントした。「学生野球は、屋外球場での練習、試合が大半となり選手や指導者の目は長時間強い紫外線にさらされています。さらに、練習中や試合中は高速で飛んでくる硬式球の衝撃リスクもあります。未来を生きる子どもたちの大切な目を守れるよう、サングラスの着用を認めることになりました」。レンズやフレームの色には指定がある。製品はパートナー企業のもので連盟の認可が必要で、オークリーやミズノなど複数が認められている。小中学生年代が対象になっており、早期の対策という面で前進となった。
一つ上の年代、高校生を統括する日本高野連は既に着用を認めていた。夏の甲子園大会に象徴されるように、炎天下の試合がよく見受けられる。そんな環境にもかかわらず、サングラスをつける選手はまだ少数派。高野連の規則の一つに「サングラスを使用する可能性のある時は、試合前(メンバー交換時)に主催者・審判員に申し出て許可を得たものの使用を認めることとする」の文言がある。関係者によると、事前申請の煩雑さを指摘する声がある他、着用していると「格好つけやがって」と思われるのを避ける事情などがある。目の健康を考えると、サングラスをもっと身近なものとして捉える制度、雰囲気づくりが望まれる。
沖縄で効能実感
ゴルフも長時間、屋外で行うスポーツで、通常5時間前後で18ホールを回る。最近ではプロはもちろん、一般ゴルファーでもサングラスを着用している光景が増えたが、ジュニア世代への啓蒙という点で普及の胎動があった。10月12~14日に沖縄県恩納村のPGMゴルフリゾート沖縄で開催された宮里藍さんによるジュニアイベント「第5回宮里藍インビテーショナル Supported by SUNTORY」。競技には全国から女子中高生35人が出場した。宮里さんが現役時代から使っていることもあり、サングラスのオークリーが協賛として会場にブースを出展。大勢の選手たちに貸し出したりアドバイスを送ったりした。
このイベントを制したのは17歳の吉崎マーナ(沖縄カトリック高2年)。身長151センチと小柄ながら着実なスコアメークで、既にプロの試合に何度も出場した経験を持つ。吉崎は距離感がずれてしまうことを懸念して、もともとサングラスを使うタイプではなかったという。しかし今回は着用してラウンド。効能を次のように明かした。「私はけっこう目が弱くて、ラウンドが終わった後とかすごく目の奥が痛くなったり、頭も痛くなったりしていた。沖縄の日差しがすごくまぶしくて、サングラスをかけながらやらないと駄目だなと思った。すごく良かった」。しっかりと目を守り、制覇へとつなげた。
サングラス文化
ジュニア世代へのサングラスの普及が十分とはいえない背景には、イメージの問題もありそうだ。日本ではサングラスというと、目を保護する道具という以上に、ファッションのアイテムとして根付いている感がある。映画やドラマでアウトロー的な役の登場人物がよく着用していることに象徴されるように、威圧感を演出するものとしての意味合いも伝わってくる。
オークリーの土屋健スポーツマーケティングアドバイザーによると、米国などのスポーツシーンではジュニア世代からよくサングラスをつけているという。また、オーストラリアの一部地域では、サングラス着用を義務化したところもあるなど、目を守るアイテムとして浸透していることがうかがえる。
土屋氏はこう力説する。「以前、宮里藍さんに『サングラスをかけて目を守ることで、長くプレーを続けられた』と言ってもらえたことがある。日本でサングラスをかけるのは『格好つけている』とか思われがちで、印象が良くない面もある。ジュニアの選手たちはもちろん、親御さん、指導者の方々も含めて、そういった日本の〝サングラス文化〟を変えていきたい」。社会全体に広がっている意識を払拭していくのは一朝一夕にはいかないかもしれないが、視力は人生の充実度と深く関わっている。地道な活動がいつか実を結ぶことを期待せずにはいられない。