モノ作りのPDCAが回り、素材・デザイン・軽さなどクオリティが大進化
パートナーシップのきっかけは2018年秋。スウェーデンに進出したユニクロのコンセプト「LifeWear(究極の普段着)」にスウェーデンオリンピック委員会のピーター・レイネボ元CEOが共感したことから始まる。「シンプルで上質で、機能性もあり、長く着られる。北欧のデザインに非常に通じるところがあり、スウェーデンオリンピック委員会の方々と価値感を共有できたことが大きかった」と、ユニフォーム&カスタマイズ部の小笠原一郎リーダー。
ヒートテックやエアリズムなどの高機能素材がある点や、お客さまの声を基に何度もアップデートしていくユニクロ流を貫き、「選手やコーチ、委員会などの声をしっかりと聞き、何度もプロトタイプを作って着用いただき、その声を修正に反映していく服作りのプロセスや姿勢が評価いただけたと思う」。
モーグル競技用ジャケットは3層構造素材を採用。高い透湿性で汗や水蒸気を逃しストレッチ性と柔らかさにより動きやすく、競技中も快適な着心地を実現 公式ウェアだけでなく、2021年にはスキー連盟、2023年にはカーリング協会とオフィシャルサプライヤー契約を締結し、カーリングとモーグルで競技用ウェアとしても採用されている。ミリ単位でのサイズの調整や、競技の動きをスムーズにする素材や肌触りの改良、採点競技での美的観点なども追求。2022年の冬季大会ではモーグル男子で金、カーリング男子が金、女子と混合ダブルスが銅メダルと好成績を収めた。とくに前足を伸ばす動きが重要になるカーリング向けのストレッチパンツは、そのフィット感や長さも絶妙で、「このパンツのおかげでメダルが取れた!」と大好評。選手たちからは、「五輪だけでなく、ワールドカップや世界選手権などでも着用したい」という声が高まり、契約、さらには今年11月には両者と契約を延長することが決まった。
「スウェーデンの選手たちにも気に入っていただけて、パフォーマンスの最大限の発揮に貢献できたのは、五輪向けに急造したのではなく、テニスの錦織圭選手やスノーボードの平野歩夢選手などグローバルブランドアンバサダーとのアスリート向け競技ウェア開発という礎があってこそ。完成度の高さや動きやすさ、軽さは他のスポーツブランドにも引けを取らないと自負している」
LifeWearの真価を発揮、コンセプトは「Grace. Strength. Unity. (優雅さ。強さ。団結。)」
競技中だけでなく、最高のパフォーマンスを発揮できるための普段着としてユニクロ製品を提供しているのも特徴だ。開会式や閉会式、競技のサポートだけでなく、LifeWearを通じてオリンピック、パラリンピックの期間中の生活を24時間サポートし、選手に快適な生活を送る役割を果たしたいと考えた。とくに2024年のパリ五輪時にはその街並みにも馴染むようにデザインを昇華。
今回のミラノ・コルティナ五輪では、「Grace. Strength. Unity. (優雅さ。強さ。団結。)」をコンセプトに、「複数の会場の寒暖差にも対応できる高機能性と快適さはもちろん、スウェーデンの文化にインスパイアされたシンプルで美しく洗練されたデザインのLifeWearで、選手たちのパフォーマンスと団結をサポートしたい」と小笠原リーダー。
一般販売する“コア商品”に比べて、オリンピックやパラリンピックの公式ウェアは早いタイミングで開発を始めるため、未来に向けた商品をより長い期間をかけて考えることができる。小ロットだからこそ新素材や新機能、新デザインやサステナブルな素材などにも果敢にチャレンジできる。「アスリートがベストなパフォーマンスを発揮できるウェアを作ることが第一義。それをユニクロが次世代のLifeWearとして未来の商品に生かしていく。この開発サイクルを循環させていくことがプロジェクトの大事な目的だ」。
セレモニーウェアも進化している。北京大会では極寒をしのぐために分厚く重量感があるものだったが、今回のミラノ・コルティナでは、「3層構造で高機能なブロックテックアウターの中に、ヒートテックインナーや、リサイクルダウンを使用した軽量のウルトラライトダウンなどをレイヤリング(重ね着)することで、高い機能性ながらもより軽くて動きやすく、湿気は逃がしながらしっかり防水し、状況や各人の好みに合った温度調節ができるようにしているのが特徴だ」。
これまでのブロックテックパーカをアップデートし3層構造の真ん中にDermizax®を挟むことで、透湿性によって汗・水蒸気を逃して、ストレッチ性もあり柔らかく動きやすく快適性の高いものに仕上がっている発売中の「スウェーデンアスリートコレクション」はスニーカーが逸品!新素材Dermizax®使用のパーカは12月15日に発売
スウェーデンアスリートコレクションは2025年10月から展開 今回のプロジェクトで採用した目玉新素材の一つが、Dermizax®(ダーミザクス)だ。戦略的パートナーシップ契約を結ぶ東レの開発素材で、主にアウトドアブランドやスキー・スノーボードウェアなどで使われているもの。今回は選手団の公式ウェア、そして、一般販売するスウェーデンアスリートコレクションのブロックテックパーカで初めて採用した。
「ユニクロの秋冬の機能性素材の中でも透湿・防風・防水性に優れている。3層なのにとても軽くて薄くて柔らかいのに暖かい。選手にも満足いただける非常にいい素材を多くのお客様に着用いただけるよう、価格を抑えました。」と小笠原氏。12月15日発売で、価格は1万4900円。スポーツブランドやゴルフブランドではDermizax®を使用したアイテムは3万~15万円台で販売されることが多い。ユニクロがフリースやジーンズなどで行ってきた価格革命的なコア商品に成長することも予想される。
コレクションは日本では81店舗とオンラインで販売中。ニットフリースジャケット、ウルトラストレッチアクティブジャケット、同パンツ、ニットアクティブスニーカー、ファンクショナルバックパック、コンビネーションパフテックジャケットの6型を展開している。好調な売れ行きで、アッパーがニットで軽くて通気性が良く、スタビライザー付きで安定性とフィット感が優れたスニーカーは隠れた逸品と言える。“ニット見え”するフリースジャケットや、ミドルインナーにもアウターにも使えて、ゴルフなどでも活躍しそうなパフテックジャケット、スウェーデンチームからも好評だった容量36リットルのバックパックもヒットしている。12月15日にはDermizax®を使用してアップデートしたブロックテックパーカが登場するので注目したい。
サステナビリティ先進国とGHG削減やサステナ素材比率アップに挑戦
スウェーデン代表との協業は、「服づくりとサステナビリティの両立を目指す商品開発の先進的な挑戦」でもある。「2030年度までに全使用素材の約50%をリサイクル素材などの低環境負荷素材に切り替える目標に向けて、先駆的な役割を果たすものでもある。技術開発と環境配慮の両面から今後の製品づくりに広くつながる重要なステップだ」。
今大会向けウェアでは、従来素材比で温室効果ガス排出量(GHG)を約24%削減。4年前の北京大会時に比べて7ポイント改善した。リサイクルポリエステル、リサイクルダウンなどGHGの低い素材の割合は9ポイント増え全体の約42%に。公式ウェア201アイテムの約9割、185アイテムで採用した。
ユニクロとして初めて、東レと組んだ戦略的機能性素材「パフテック」にリサイクルポリエステル繊維を使用。品質や機能性など技術的に難易度が高い中、1年以上の施策を経て中綿の50%をバージン素材から代替。選手提供のジャケット、ダウンコート、ベストの3アイテムと、市販のスウェーデンアスリートコレクションで実現した。また、ダウンコートの残りの50%にはリサイクルダウンを使用している。
二次元コードを初導入、透明性と循環を推進、選手着用品を次世代へ継承も構想中
サプライチェーンの透明性を高める新しい情報発信のパイロットケースとして、一部の公式ウェアには商品ラベルと別に二次元コードを初めて導入した。選手がスマートフォンで二次元コードを読み取ると、素材情報や製品原産地にアクセスできる。さらには、再利用方法も提示して、服のリサイクルへの参画を促す。大会後も長く服を着ていただけるように、スウェーデン旗艦店にあるRE.UNIQLO STUDIOでリペアできる旨や、着なくなった場合には店に持っていただき循環させていきたいという旨を選手たちにメッセージで伝えていく。近い将来、次世代のアスリートやユースに受け継いで使用してもらえるようになれば、サステナビリティと心や志をつなぐ良い取り組みになるだろう」。
次世代育成の活動も拡大、来年2~3月にモーグルやカーリングの国際大会をサポート
スウェーデンのモーグル代表チーム(左)とTeam Edin(右 / カーリング) スキー連盟やカーリング協会とのパートナーシップでは次世代育成活動も広がりを見せている。次世代育成活動「ユニクロドリームプロジェクト」では2月末に富山で行われるFISフリースタイルスキーW杯に初協賛し、地元の小中学生向けに交流イベントやモーグル教室を開催予定。3月の軽井沢国際カーリング大会でも3回目となるスポンサーとなり、スウェーデン代表チームとの国際交流の場も設ける。「子どもたちに競技の魅力やスポーツの楽しさ、感動を伝える活動を通じて、未来のアスリートが世界に羽ばたくきっかけを作るとともに、競技の裾野を広げる取り組みを強化していきたい」。
国際オリンピック委員会(IOC)によると、前回の北京冬季五輪では世界20億人以上がテレビとデジタルプラットフォームで視聴したとのこと。デジタル環境の整備もあり、2026年のミラノ五輪にはさらなる注目が集まることが予想される。ユニクロの究極の普段着LifeWearとともに大会に臨むスウェーデン代表の活躍が期待されるとともに、Made For Allの理念の下にトップアスリートの知見やユニクロのモノ作りの進化が凝縮されたアスリートコレクションの現物も手にとってその出来栄えを確認しておきたいところだ。