代表的なのはプロ野球選手の技術などを詳しく解説する古田敦也氏の「フルタの方程式」、落合博満氏の「落合博満のオレ流チャンネル」、上原浩治氏の「雑談魂」、宮本慎也氏の「解体慎書」など。古田氏や上原氏のチャンネルは100万人の登録者を誇り、豪華なゲストなどが出演するなどTV番組レベルでのコンテンツを提供している。
プロ野球OBのYouTubeで存在感を出しているものとしては毎日投稿をしている里崎智也氏の「里崎チャンネル」も人気だ。最近ではMLBの情報を定期的に発信する五十嵐亮太氏の「イガちゃんねる」や、和田毅氏の日常を発信する「和田毅ラボ」も後発ながら存在感を増している。最近では、福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手がYouTubeチャンネル「こんちゃんBASE」を開設するなど、現役選手も自らの発信拠点を作ってきている。
現役時代は球界の中心で戦ってきたレジェンドたちが、引退後は「語り手」として再びファンを魅了している。
OBチャンネル最大の武器は、やはり、本音トークである。球団フロントでもなければ、現役選手でもない。いわば完全フリーな立場だからこそ、忖度なしで語れる。テレビや中継のゲストでは、どうしても時間も言葉も制限される。しかしYouTubeなら、尺を気にせず、思考の過程ごと語れる。勝敗の裏側にある感情や葛藤が、そのまま言葉になる。
YouTubeは30代以上の世代にも広く浸透している。古田氏、落合氏、上原氏、里崎氏、宮本氏、五十嵐氏らが現役でバリバリ活躍していた時代をリアルに知るファンも多い。レジェンドが語る野球論、裏話、勝負哲学は、当時の記憶を呼び起こす懐かしさと、新しい発見を同時にもたらす。「あのプレー、そんな背景があったのか」「あの移籍、実は…」「あの当時の人間関係は・・・」。フロントとの関係、ベンチ裏、勝負心理。時に昔はとても言えなかった話も、今となっては“時効”となり、エピソードも飛び出す。
またテレビでは、ライト層にも届くよう内容を噛み砕く必要がある。一方、YouTubeでは視聴者の多くが野球ファン。知識を前提に話を進められる。だから話は自然と濃くなる。「なぜこの場面でこの球種だったのか」「なぜこの守備位置だったのか」「なぜ監督はあの采配を選んだのか」。その場面の裏側にある「思考」と「判断」が、より深い解説となって視聴者にぶっ刺さる。
地上波でのプロ野球中継が減り、プロ野球OBのセカンドキャリアである解説業の機会が減少する中で、新たな収益源がYouTubeにシフトしていくことは自然な流れだ。
また、大谷選手を中心としたテレビ報道においては五十嵐氏もコメンテーターとして活躍しているが、YouTubeにおいては、テレビでは紹介しきれない海外の選手の情報などMLBの情報をわかりやすく発信をしている。
OBチャンネルのもう1つの強みが、現役選手ゲストとの化学反応だ。現役選手の中には、メディアの前では技術論を多く語りたがらない人もいる。分析され、実戦に影響が出る可能性があるからだ。ただし、相手が球界に名を残したレジェンドとなると話は別。自然と赤裸々なトークになる。だからこそ、グラウンドでは見られない思考や素顔がにじみ出る。OBとの絡みで引き出される表情も、ファンにとっては、たまらない魅力だ。
現役時代はプレーで魅せたレジェンドたちが、引退後は「言葉」で球界を盛り上げている。勝敗だけでは語れない野球の奥深さを、今度は視聴者の目線で届けてくれる存在になった。喫茶店や居酒屋で隣に座って話を聞いているかのような距離感も、人気の理由だろう。
一方で過度な現役選手の批判や裏話、暴露話などは、再生回数は稼ぐ一方で、時代に合っていないという批判なども目立ち始めてきた。
NETFLIXによってWBCが地上波で見られなくなる中で、野球の楽しみ方も時代とともに変化しており、プロ野球OBも解説だけではない自らのメディアを活用する必要性が出てきた。
球界の大物OBによるYouTubeは、単なる懐古でも、ただの暴露話でもない。野球をもう一段、深く、面白く楽しませてくれる新しい場所となっている。
TVからYouTubeへ 自らのチャンネルをもつプロ野球OBが増える理由
プロ野球の大物OBたちによるYouTubeチャンネルが近年、ファンの心をがっちりとつかみ、確かな成功を収め、プロ野球やMLB関連のメディアの中心コンテンツとなってきている。
ファンの心をつかむプロ野球の大物OBたちによるYouTubeチャンネル