文=松原孝臣

過度の干渉が取材嫌い、メディア嫌いへとつながる

 2月の話になるが、U-18Jリーグ選抜対日本高校サッカー選抜が開催された際、U-18Jリーグ選抜のメンバーとして出場したFC東京U-18の久保建英が話題となった。プレーではなく、チームに合流した試合の前々日から試合当日(試合後のミックスゾーンを含め)まで、一切の取材を受けない旨、Jリーグから通達があったことに関してだ。

 15歳の久保は、2011年、名門バルセロナの下部組織の入団テストに合格。リーグ戦で得点王となるなど数々の活躍をしたが、バルセロナの18歳未満外国人選手を巡る違反で出場できなくなり帰国。FC東京の下部組織に入団した。

 取材対応をしないのは一時的なことで、その後のU-20日本代表候補トレーニングキャンプやJ3のFC東京U-23の試合後では取材に応じている。それでも、是非を巡って今も措置が話題になることがある。「過保護」とした記事も出たが、どう考えればよいのか。
 
 いったん久保から離れて考える。これはどの競技にもうかがえる傾向だが、若く将来が有望な選手が出てくると、大々的にクローズアップしがちな傾向があるのは否めない。
 
 ときに、残している成績以上の注目のされ方になることも少なくない。結果が出ても出なくても取り上げられる。それはまだしも、過度に選手本人や周囲に干渉するケースもなかったとは言えない。それがために、メディア嫌い、取材嫌いへとつながることもなくはなかった。
 
 一方で、U-18のカテゴリーに15歳で選ばれたことは、注目に値するし、これまでの足跡からしても、なおさら注目したくなる選手であるのは間違いない。その力量についても、サッカー界で高く評価されているのも事実だ。
 
 だから、どこで線引きをするかだ。そこには、15歳という年齢もかかわってくる。年数を重ねていけば、対応の仕方、接し方も身についていくが、まだ15歳である。
 
 今回の措置につながったのは、日頃のどこかで、過剰と感じる部分が当人あるいは周囲にあったからではなかったか。それが度を越えれば、選手当人の将来に悪影響を及ぼすこともありえる。

取材対応とトレーニングのメリハリが大事

©Getty Images

 もちろん、中学生の頃から脚光を浴び、取材陣が殺到する選手は他にもいた。

 五輪競技では、さまざまな競技で、早くから第一線で活躍する選手がいる。ノルディックスキー・ジャンプの高梨沙羅は中学1年生のときから日本代表として大会に出場し、中学2年生の頃からニュースでもしばしば取り上げられる存在だった。
 
 早い段階から活躍する選手の多い卓球でも、最近で言えば伊藤美誠、平野美宇のように、小中学生から注目される選手は少なくない。
 
 ここに挙げた選手たちは、記者会見でも囲み取材でも臆することなく話をしてきた。
 
 ただ、メリハリはきいていたように思う。ジャンプにしろ、卓球にしろ、長期合宿などでは、メディアやファンの目を意識せずに練習に打ち込める時間がある。
 
 久保はこれからも、さまざまなカテゴリーの日本代表に招集される機会があるだろう。活躍に応じてメディアと接する局面も増える。そこで自分の置かれた地位に応じて、接し方を身につけていけるのではないか。同時に、15歳であるのを念頭に、過度にならないことも、重要である。
 
 3月14日には、19~29日までドイツに遠征するU-20日本代表が発表され、久保建英も名を連ねた。その将来を楽しみにしたい。


松原孝臣

1967年、東京都生まれ。大学を卒業後、出版社勤務を経て『Sports Graphic Number』の編集に10年携わりフリーに。スポーツでは五輪競技を中心に取材活動を続け、夏季は2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオ、冬季は2002年ソルトレイクシティ、2006年トリノ、 2010年バンクーバー、2014年ソチと現地で取材にあたる。