文=池田敏明

5月のFIFA理事会で承認される見通し

 2017年1月10日、国際サッカー連盟(FIFA)は、2026年に開催されるワールドカップ以降、本大会の出場国枠を現行の32カ国から48カ国へと増やすことを正式決定した。また、3月30日には大陸別出場枠の案を発表。同案による各大陸からの出場国数は以下のとおりで、5月にバーレーンで行われるFIFA理事会で承認されれば正式決定となる。

ヨーロッパ:13→16
南米:4.5→6
北中米カリブ海:3.5→6
アフリカ:5→9
アジア:4.5→8
オセアニア:0.5→1
プレーオフ:2(欧州を除く5大陸の代表など6チームにより決定)

 日本代表が所属するアジアは、現状の4.5から8への大幅増となりそうだ。オーストラリアがオセアニアからアジアに移籍し、全体のレベルも向上する中、日本は現在、行われている18年ロシアW杯のアジア最終予選で苦戦を強いられている。この現状を考えると、アジア枠が大幅に拡大されれば朗報となるだろう。

 出場国枠を大幅に増やすという決定には、もちろん賛否両論がある。とりわけ欧州方面からは、批判の声が相次いでいるようだ。

W杯の出場国数の拡大は、同会長が掲げるビジョンの中心的なものだったが、反対する立場からは、大会規模の拡張はプレーの質を下げるだけでなく、特に欧州リーグに所属する選手たちの負担を増大させるとの声が上がっている。  現在のW杯モデルを「完璧な方式だ」と考える欧州クラブ協会(European Club Association、ECA)は声明で、「今回の決定は、多大な政治的重圧の下、競技的ではなくむしろ政治的理由に基づいてなされたと理解している。ECAとしては、悔やむべきものだと信じている」と反対する姿勢を繰り返し示した。
W杯の出場枠、26年から48か国に拡大 欧州からは批判の声 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

中国やウズベキスタン、タイなどが恩恵に預かるか

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 批判する理由の最たるものは、「W杯の質が低下する」というものだ。確かに26年大会は、一時的に大会の質が低下するだろう。アジアに加えて北中米カリブ海も3.5から6へと大幅に増える可能性があるため、アジアからは中国やウズベキスタン、タイ、UAE、北中米カリブ海からはパナマやジャマイカ、トリニダード・トバゴ、といったW杯出場経験に乏しい国、あるいは未経験の国が出場権を得る可能性が高い。

 だからと言って、これらの国がW杯に出場する道を閉ざしていては、競技自体のさらなる発展や普及は滞ってしまうのではないだろうか。W杯出場という目標の具体性が高まればこれらの国々も強化により一層の力を入れるだろうし、やがては優れた選手も輩出されるだろう。

 かくいう日本も、94年アメリカ大会の時にはアジアの枠が2つしかなかったために本大会出場を逃したが、98年フランス大会では3.5へと拡大したことの恩恵を受けて出場を果たし、以来アジア屈指の強豪の地位を確立、欧州で活躍する選手を続々と輩出してきた。26年大会の時点で初出場の国が、後に世界の強豪国へと変貌を遂げる可能性だってあるはずだ。

「大陸大会」へと変貌を遂げる可能性も

 48カ国もの人員を受け入れられる国はそれほど多くないため、開催国が限られるのではないか、という声もあるだろう。現在のW杯開催規定では、4万人収容のスタジアムが12カ所以上あり、準決勝は6万人以上、開幕戦と決勝戦は8万人以上を収容するスタジアムで開催することが基準となる。選手はもちろん、各国から集結するサポーターを受け入れるためのハード面、ホスピタリティの面の充実も必要になるため、今の日本でも開催は難しいかもしれない。

 現時点で開催能力がある国を挙げるとすれば、アメリカやメキシコ、イングランド、スペイン、ドイツなど、ごく一部の国に限られるだろう。そのため、将来的には複数国による共同開催が一般的なスタイルになるかもしれない。02年日韓大会という前例があるため、実現に向けて大きな障壁はないはずだし、もしかしたらスペイン、フランス、ドイツ、イタリアで開催する「ヨーロッパ大会」やエジプト、モロッコ、チュニジアで開催する「北アフリカ大会」といった「大陸大会」へと変貌を遂げるかもしれない。

 もちろん開催国枠や予選を免除されることによるチーム強化の側面への影響もあるはずだが、複数国での共催にすれば各国の負担は減るし、ブラジルやアメリカで開催する場合と移動距離もそれほど変わらないはずだ。

レギュレーションの変更でチームマネジメントも変わる

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 3チームずつ16組に分かれてグループステージを戦い、各組上位2位まで、合計32チームが決勝トーナメントを戦う、というレギュレーションも賛否両論ある。

 確かにグループの中で常に1チームが余ってしまうのは健全な状態ではないし、最終節を戦う2チームが、自分たちが決勝トーナメントに進出できるようにその試合の結果をコントロールすることも現実的には可能だ。しかし、常識で考えれば確実に勝ち上がるためには2連勝が必須となるため、真剣勝負が増えるのではないだろうか。

 ただ、出場するチームにとっては、現状のレギュレーションのように第2節終了時点で勝ち上がりが決まり、第3節でメンバーを大きく入れ替えて主力を温存する、という戦い方ができなくなるのが痛い。

 優勝するためにはグループステージの2試合、そして決勝トーナメントの5試合、すべてで真剣勝負を演じる必要がある。そう考えると、今後はチームマネジメントの方法も変わってくるだろう。主力と控えの差が大きいチーム、誰か一人の力に依存するチームではなく、実力差のない選手を23人揃え、全員をうまく使い分けながら戦えるチームが、48カ国のW杯を制することになるのではないだろうか。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。