文=菊地高弘
守備で飯を食える選手になり得る逸材
野球のユニホームを着るために生まれてきたのではないか――。野球選手のなかにはそう思わせるような絵になる男がいる。中日からドラフト2位指名を受けた京田陽太(日本大)もそんなプレーヤーのひとりだ。
せっかく京田のプレーを見るなら、ぜひ試合前のシートノックから見たい。身長184センチ、体重80キロ。スラリと伸びた足は、まるでモデルのよう。しなやかな身のこなしに、三遊間深い位置からの一塁送球や中継プレーで見せる伸びやかなスローイング。プロでも、守備で飯が食える選手になる気配が漂う。
あるスカウトは京田をこう評していた。
「身体能力が高く、生まれ持ったものがあります。それとは別に野球に対する『意欲』を感じる。チームが勝つために泥臭くなれる。こういう選手はうまくなると思います」
ただし、その賞賛に付け加えるようにこうも話している。「ただ、もう少し打たないとね……」と。
京田の最大のウィークポイントは打撃だ。軸足にしっかりと体重を乗せてボールを呼び込む形はいいのだが、インパクトでの強さが感じられない。なまじ快足と献身的なチームプレー精神があるために、いわゆる「走り打ち」のような当てにいくスイングもたびたび見られた。
ただし、大学最後のシーズンとなる4年秋は東都大学リーグで.328と高打率を残しており、改善の跡が見えた。前出のスカウトも「守備・走塁であれだけの動きができる選手なのだから、プロで成長できるはず」と語っている。
当面のライバル・北條に追いつき追い越せ!
©共同通信 京田は中学までを石川県で過ごしたが、高校は青森山田高に野球留学している。入学早々に遊撃手のレギュラーポジションを獲得したものの、甲子園には出場できなかった。それは、光星学院(現・八戸学院光星)高という巨大な壁が立ちはだかっていたからだ。同学年には北條史也(阪神)、田村龍弘(ロッテ)という超高校級プレーヤーがおり、2011年夏から史上初の3季連続甲子園準優勝。京田は北條に対して、同じ遊撃手として力の差を感じていたという。
昨季、北條はプロ4年目にして122試合に出場、打率.273をマークして遊撃手のレギュラーに定着した。一方、京田は同じセ・リーグの中日にドラフト2位で入団。今後、ますます北條と比較されることになるだろう。
まずは守備と足でいかにアピールできるか。安定感と華のある守備はプロレベルでも十分通用するはずだし、ボテボテのゴロを内野安打に変える快足も武器になるはずだ。あとは、試合に出続けるなかで打撃に進境が見られれば、北條とも勝負できる遊撃手になれる。
そして、北條と対等に戦うその頃には、京田が日本を代表する遊撃手に上り詰めている可能性も十分あるだろう。
(著者プロフィール)
菊地高弘
1982年生まれ、東京都出身。雑誌『野球小僧』『野球太郎』編集部勤務を経てフリーランスに。野球部研究家「菊地選手」としても活動し、著書に『野球部あるある』シリーズ(集英社/既刊3巻)がある。