文=篠幸彦

男子は前回大会で渡部が初優勝。混戦が続くか、抜け出る選手が現れるか……

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楢崎智亜(ならさき・ともあ=20歳)
昨年、W杯総合優勝と世界選手権の2冠という快挙を達成した20歳のシンデレラボーイは、新シーズンを日本のエースとして迎えた。開幕戦のマイリンゲンでは予選敗退という不本意なスタートとなったが、第2戦・重慶、第3戦・南京では連続で2位となり表彰台に登った。確実に調子を上げてきている昨年王者が、八王子大会で今シーズン1勝目を刻むことができるのか。新エースがその真価を日本のファンに見せる。

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藤井快(ふじい・こころ=24歳)
昨年はW杯総合2位となり、楢崎と頂点を争った日本のもう一人のエース。今年初めのジャパンカップで2連覇を達成すると、開幕戦のマイリンゲンで早速シーズン1勝目をゲット。幸先の良いスタートを切ったが、第2戦・重慶で9位、第3戦・南京で11位と思うように結果がついてこなかった。ボルダーシーズンの折り返し地点となる八王子大会で表彰台を狙い、今年こそ総合優勝をつかみ取るためのきっかけにしたい。

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渡部桂太(わたべ・けいた=23歳)
前回の南京でW杯初優勝を成し遂げ、第3戦までのランキングで1位につける渡部。開幕戦・マイリンゲンで3位とW杯初の表彰台に登ると、続く第2戦・重慶でも4位と好調をキープ。そして南京で初優勝とキャリア最高の流れでここまで来ている。八王子大会でも表彰台を勝ち取れれば、昨年の楢崎がそうであったように、ノーマークのポジションから一気に総合優勝というケースもある。今最も勢いに乗る男がどんなクライミングを魅せるのか、その一手に注目が集まる。



チョン・ジョンウォン(韓国出身=21歳)
2015年にW杯総合優勝を達成し、昨年は総合4位と安定した力を発揮する韓国の若きエースクライマー。今シーズンは開幕戦で12位と出遅れたが、第2戦・重慶では決勝でただ一人全完登での優勝。第3戦・南京では表彰台は逃したものの、4位と確実にポイントを稼いだ。第3戦までのランキングで2位につけ、八王子大会で再び表彰台に登り、1位・渡部を捉えることができるのか。その背中を虎視眈々と狙う。


アレクセイ・ルブツォフ(ロシア出身=28歳)
20歳で世界選手権を優勝し、長くトップレベルのボルダーとして活躍するロシアのベテランクライマー。昨年は楢崎、藤井らと上位を争い、W杯総合3位とキャリアハイを記録した。
今シーズンは初戦のマイリンゲンで2位、第2戦の重慶で3位と好調な滑り出しを見せたが、南京では23位と振るわず予選敗退。八王子大会では南京での遅れを取り戻し、上位集団に食らいつきたい。ベテランがどんなクライミングを見せるのか注目だ。

上位2人が抜け出す中、日本女子2トップが八王子で食らいつく

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野口啓代(のぐち・あきよ=27歳)
4度のW杯総合優勝に輝く、日本が世界に誇るクライミング界の女王。しかし、その女王が今シーズンはやや苦戦を強いられている。第2戦・重慶では3位入賞を記録したが、開幕戦は21位で予選敗退、第3戦・南京では13位と野口らしからぬ波のある結果が続いた。ランキングでは6位につけるが、ポイントでは上位とやや差が開いてしまった。ただ、八王子で1勝できれば、総合上位を狙うチャンスはまだある。八王子の地で、女王が底力を見せてくれることを期待したい。

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野中生萌(のなか・みほ=19歳)
一昨年はW杯総合3位、昨年はW杯総合と世界選手権で2位となり、右肩上がりに力をつけている日本女子2トップの一角。今シーズンはいよいよ総合優勝を期待される野中は、初戦・マイリンゲンと第3戦・南京で3位入賞を果たし、現在ランキングも3位と上位を争っている。昨年は第2戦・加須大会で3位に入賞し、上位浮上のきっかけとなった。八王子大会でも地元の声援を力に総合優勝への足がかりをここでつかみたい。



ショウナ・コクシー(イギリス出身=24歳)
昨年、2位と圧倒的なポイント差で総合優勝を射止めたイギリス出身の現女王。今シーズンも開幕戦決勝で他の選手が1完登するのもやっとの中、一人全完登と異次元なパフォーマンスで制した。続く第2戦・重慶で2位、第3戦・南京で1位と女王たる所以(ゆえん)を見せつけている。2連覇へ向けてここまで順調なシーズンを送るコクシーは、八王子大会でもハイパフォーマンスを披露し、間違いなく会場を沸かせてくれる。


ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア出身=18歳)
女王コクシーの背中にピタリとつけるのが、スロベニア出身の新進気鋭の18歳、ヤンヤ・ガンブレットだ。昨年はリードで初の総合優勝を果たし、頭角を現した。今シーズンは開幕戦でファイナル進出と勢いに乗り、第2戦・重慶ではボルダーで初の1勝を手にした。南京でも2位につけるなど、女王コクシーにプレッシャーをかけている。八王子大会で再びコクシーを捉えることができるのか。進化を続ける18歳から目が離せない。


篠幸彦(しの・ゆきひこ)

東京都生まれ。スポーツジャーナリスト。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスへ。サッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』でFC町田ゼルビアの番記者を担当。『サッカーダイジェストテクニカル』にライター兼編集で携わる。著書に『弱小校のチカラを引き出す』『高校サッカーは頭脳が9割』(東邦出版)『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)がある。2017年よりスポーツクライミングの取材も行っている。