文=日比野恭三

今後への期待感と悲観論

共同通信

 2016年9月22日、プロバスケットボール新リーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」が華々しく開幕した。

 長らく、NBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)と、そこから独立したbjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)の2リーグ並立体制となっていた日本男子プロバスケ界の統合がようやく実現。アルバルク東京と琉球ゴールデンキングスがあいまみえた開幕戦は、フジテレビ地上波とNHK-BS1の2局同時生中継も行われるなど、新リーグの船出には大きな注目が集まった。

 Bリーグの将来的発展については、期待感と悲観論がせめぎ合う。

 期待感の背景にあるのは、強力な援軍の存在だ。トップパートナー(メインスポンサー)に名乗り出たのはソフトバンク。4年間で計125億円といわれる大型契約で、資金面のみならず、スポーツの生中継が見放題のサービス「スポナビライブ」を活用して全試合をライブ配信するという手厚いサポートを約束している。

 一方で、日本においてバスケがメジャーなプロスポーツになれるかどうか、懐疑的な見方をする向きは少なくない。ゴールデンタイムに生中継された開幕戦の視聴率は、川淵三郎エグゼクティブアドバイザーの「2ケタはほしい。15%だな」という期待に満ちた発言とは裏腹に、5.3%(関東地区)どまり。「プロバスケを観戦する」という“文化”が日本ではまだまだ浸透していないことを浮き彫りにした。

 今後、プロスポーツとして足場を固めていくうえで必要なのはまさにその部分だろう。派手な会場演出や地上波放送、それに伴う膨大な報道によって、Bリーグの存在自体はかなり高い認知を得てスタートを切った。その認知度を維持しつつ、どのように“バスケ観戦文化”をつくりだしていくのか。会場でBリーグの試合を見た観客のなかからどれだけのリピーターを生みだしていけるかの勝負になる。

Jリーグという前例に倣えるか

共同通信

 トップカテゴリーの「B1」は、1シーズン全32節のうち第15節までを昨年内に消化した。そのうち第11節(12/2~12/6)までの観客動員数の推移をリーグは公表している。

 それによれば、1試合平均の入場者数は2,773人で、2015年度のホームクラブ主催試合の入場者数を基準値とした昨対比で+35%の伸びを示しているという。この数字だけを見れば統合による効果がポジティブな形で表れていると見ることもできるが、気がかりなのは節を追うごとにおおむね右肩下がりの傾向を示している点だ。

 第1節の平均入場者数は4,157人、それが第4節には2,347人にまでいっきに落ち込んだ。第5節から第9節にかけてはやや持ち直したものの、第10節には現時点で最低の2,156人と、集客に苦しんでいる状況が見て取れる。

 また開幕以来、メディアでの露出が激減しているのは誰もが体感しているところだろう。日々、大量の情報が消費される現代において、話題性を維持し、世間の注目を浴びる存在でい続けることは決して容易ではない。

 川淵氏の関与や華々しい開幕イベントなど、Bリーグは1993年に幕を開けたJリーグ草創期の姿と重なる点は多い。だが、Jリーグは10クラブからのスタートであり、三浦知良などのスター選手が人気を牽引していた。さらに日本代表の活躍によって、サッカー観戦は一つの文化として成熟した。現在はJ3を含めて53クラブにまで拡大したが、まずトップカテゴリーの地位を確立させ、その浸透度と歩調を合わせるかのように下(J2、J3)へと根を下ろす戦略をとったのがJリーグだった。

 一方のBリーグは出発時点で「B1」「B2」に各18チームの計36チームという大所帯。日本人初のNBAプレーヤー田臥勇太(写真)はいるものの、絶対的スター選手とまで持ち上げるのは無理がある。要は、チームであれ個人であれ、リーグ全体の価値を引っ張り上げられるパワーをもった象徴的な存在がいないのだ。

 バスケといえばNBAであり、いまだにマイケル・ジョーダンやデニス・ロッドマンらの時代で止まっている日本人は少なくない。そこに新風を吹き込み、「日本のプロバスケを見る」という文化をつくることができるのか。

 Bリーグが挑む壁は、とてつもなく高い。


日比野恭三

1981年、宮崎県生まれ。PR代理店勤務などを経て、2010年から6年間『Sports Graphic Number』編集部に所属。現在はフリーランスのライター・編集者として、野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを取材対象に活動中。